あらすじ
ベストセラー「のぼうの城」作者の話題作!
時は一五五六年。勢力図を拡大し続ける西国の両雄、戸沢家と児玉家は、正面から対峙。両家を支えるそれぞれの陣営の武功者、「功名あさり」こと林半衛門、「功名餓鬼」こと花房喜兵衛は終わりなき戦いを続けていた。そんななか、左構えの鉄砲で絶人の才を発揮する11才の少年・雑賀小太郎の存在が「最終兵器」として急浮上する。小太郎は、狙撃集団として名を馳せていた雑賀衆のなかでも群を抜くスナイパーであったが、イノセントな優しい心根の持ち主であり、幼少の頃より両親を失い、祖父・要蔵と山中でひっそりとした暮らしを営んでいた。物語は、あることを契機に思わぬ方向へと転じていくが--。
(底本 2011年9月発売作品)
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
戦国時代の初期頃、まだ織田信長などが火縄銃の戦術を前面に戦い始める前の頃。そこに生きていた小太郎という天才的な火縄銃の使い手がいた。ただ、祖父はその技術を決して表に出させず、ある意味惚けた馬鹿な子どものように育てていた。火縄銃を使わなければ心優しい純粋な少年であるその生き方を祖父は小太郎に息させたいと育てていたのだ。そのため小太郎は左利きで特殊な左利き用の火縄銃でなければその実力を出すことが出来ないように祖父はその本当の腕を出せないように育てていた。
戦国の中この少年の腕を見抜いた武将半右衛門は城下の火縄銃大会に参加させることを少年と約束し、その大会でその腕を認めさせる。そして、戦が始まり半右衛門の陣営は城に籠城する作戦を立てるが壊滅的な状況になり、小太郎を騙して連れ帰り、戦でその火縄銃の腕を発揮させ戦に勝つことを城主から命令され半右衛門は城を抜け出し小太郎の祖父を殺し、祖父を殺したのは相手陣営の武将たちだと嘘をつき相手方の武将をことごとく火縄銃で撃ち殺し、半右衛門の陣営に勝利をもたらす。
半右衛門はそもそも嘘をつくことがなくそういう教育を受けて育ってきた武将で、その嘘をついて小太郎を利用したことで自分を責めふぬけの武将へと様変わりしてしまう。
小太郎を騙したことを苦にして豪快な武将としての資質も失い小太郎の運命が狂い始めた時もそれを守ることが出来なくなる。小太郎はその火縄銃の腕を恐れられ味方の側からも恐れられ殺しておくことが最善の策だととらわれの身となる。この事により半右衛門は小太郎を守ることを元の武将としての資質を取り戻し、小太郎に嘘をついて相手方を殺させたことや自分が祖父を殺害したことも小太郎に伝え自分の味方の陣営ではなく相手方の信じられる武将に小太郎を差し出し預ける。
小太郎のこの左利きの火縄銃の技術がなければきっとこんな殺戮をする事も無かったし、純粋なままの少年として育ったはずだが、戦国の戦の中に組み込まれたらそれは恐ろしい火縄銃の使い手となってしまう。それは本来の少年が望んだ生き方では無いと言うことを半右衛門も分かっておりその人生を狂わせたことを悔いていた。そしてまたそれぞれの兵を率いて戦が始まる。
全てを話し小太郎の怒りを自分に向けた半右衛門はその戦で小太郎の怒りを自分に受けようとして相手方の武将に託し、その後は元の暮らしに戻れるようにと小太郎を預ける時に頼んでいた。それが分かる武将でもあった。
最後の戦いが始まり半右衛門は小太郎に向かって馬を走らせる。
Posted by ブクログ
和田竜である。
普段、時代物はしゃばげとか、千両役者捕物帖とかで、イクサとかない平和な世界のモノを読んでいるので、実は、あんまり戦国ものとかは読んでいなかった中、のぼうの城が面白かったので、これも読んでみた。
雑賀衆の生き残り小太郎、村ではお味噌扱いであるが、鉄砲を持たせたらぴか一。
その腕をかわれ、イクサに行くことになる小太郎。
彼はただ普通の人の暮らしがしたいだけだったが…。
実はそんなに小太郎が活躍することはなく、大筋では林半衛門と花房喜兵衛の戦い。
このふたりが非常に善き武人で好印象。
他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
2018.11.20
1556年戦国時代、戸沢家と児玉家の戦い。
両家を支えるそれぞれのエース戸沢家 林半衛門、児玉家 花房喜兵衛は終わりなき戦いを続けていた。
そんななか、左構えの鉄砲で絶人の才を発揮する11才の少年・雑賀小太郎の存在が「最終兵器」として急浮上する。
小太郎は、狙撃集団として名を馳せていた雑賀衆のなかでも群を抜くスナイパーであったが、イノセントな優しい心根の持ち主であり、幼少の頃より両親を失い、祖父・要蔵と山中でひっそりとした暮らしを営んでいた。
半衛門、喜兵衛はともに豪快で明るく、男勝りな武将。
半衛門は戸沢家を救うため、小太郎の腕を借りるべく小太郎を動かす理由をつるく。
小太郎の唯一の家族である祖父を殺害、この犯人は児玉家であると小太郎の復讐心を利用する。
半衛門は小さなときより何をしても褒められてきたが、「卑怯なことだけはするな」と教育されてきた。
これが彼の血と肉となり、この思考によって豪快で裏表のない気持ちの良い人柄を形成していた。
筆者はこの時代の武将はみなこのような一面を持ち、勝てば喜び、負けるもしくは心動かされることがあれば惜しげも泣く人々だったという。
感情を隠さぬ、多少動物的な人間であったのだろうか。
その半衛門が嘘をついた。これにより半衛門は塞ぎがちになり以前の明解さを失う。
最後は半衛門は戸沢家が小太郎にぬれぎぬをきせ死刑を命じたことに謀反を起こし
小太郎には真実を伝え、小太郎の左腕によって戦死する。
おかしいことはおかしい、卑怯なことはだめだ、
当たりまえのことが大人になると多くは自己保身のために難しくなる。
ただそこで勇気を出して声をだすことで人はついてくることもある。
もちろん自分だけ犬死するケースもあるだろう。