あらすじ
小説好きの五人兄妹が順々に書きついでいく物語のなかに、五人の性格の違いを浮き彫りにするという立体的で野心的な構成をもった「ろまん燈籠」。太平洋戦争突入の日の高揚と虚無感が交錯した心情を、夫とそれを眺める妻との画面から定着させた「新郎」「十二月八日」。日本全体が滅亡に向かってつき進んでいるなかで、曇りない目で文学と生活と戦時下の庶民の姿を見つめた16編。(解説・奥野健男)
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Posted by ブクログ
「ろまん灯籠」が読みたかった。
個人的に、小説の中で登場人物たちがそれぞれ物語を書く、それぞれの人物に合わせてちゃんと内容に人柄が表れるよう仕上げてある、というところがおもしろかった。
太宰治もこれを書くのはおもしろかったんじゃないかな。
Posted by ブクログ
太宰治作品が読みたくなって読んだ。
ろまん燈籠は兄弟5人が物語を連作することを中心とする家族の話だ。
兄弟5人全員の性格が異なるため、それぞれの書く話には個性があり、それを書き分ける太宰の文筆能力には恐れ入った。
兄弟5人の中では、次男が書く物語が最も気に入った。次男が物語に新たな展開を生んでいると思った。
しかし、どの兄弟も他の家族から作品が批判されており、最も評価されたのは陰の功労者であった母であった。
兄弟の物語を読んだ祖母からは、「若者は陰の功労者の存在を蔑ろにするから良くない」と言われていた。
私も陰の功労者に目が届かないため、そういった人達に目を配れるようになりたい。
あと、『みみずく通信』も良いなと思った。
太宰が学生からの相談を受けて、それに対して返答するのだが、その返答は太宰ならではだと思った。
決して、明るいことを太宰は言わない。
しかし、それでも若者を勇気づける言葉を投げかけている。
私も相談事に対して、明るいことは言えない。
だからこそ、太宰のような言葉を言えるようになりたいと思ったのだ。
Posted by ブクログ
ろまん燈籠
5人の兄弟が物語を連作する話。5人の性格の描写が細かく、それぞれの作風がわかりやすく出ているのも面白い。末弟の物語は拙く、いろんな物語のつぎはぎだった。長女の物語は小説を自作しているだけあって文才が1番あり、女性ならではのラプンツェルの心理描写が見事だったように思う。次男の文章は口伝だったため、途中愛とは何かと熱弁し脱線していたが、物語の展開を大きく変え、続きが気になるようなストーリーに仕上げていた。次女の物語は、彼女の普段読んでいる本が影響を与えたのか、言い回しが独特で、長女が作り上げたラプンツェルの批判がメインであった。最後の長男は真面目な性格が故に、せっかくの物語の展開を台無しにし、最後は道徳の教えで終わらせてしまっていた。最後の酔った祖父の感想も的を得ていて痛快だった。太宰治は「人間失格」と「斜陽」しか読んだことがなかったので、暗い作風のイメージだったが、今回の短編小説はそのような部分が見られなかった。
みみずく通信
太宰治が女性に当てた手紙のような内容だった。彼が新潟で講演をしに行った時のことを手紙で書いている。ただ、やはり太宰治が書いたものだと思う内容だった。夕日を見て、「血のようにブルブル震えている」などと表現するのはさすがだと思ったし、生徒とのやり取りもどこか皮肉めいている。短い文章だったが太宰治という人物を少し垣間見ることが出来た。
服装について
太宰治は和服のイメージがあったが、長身と服装の無頓着がゆえの和服だったことがわかった。服装にまつわる自身の体験について書かれていたが、そこから太宰治は人に気を使う性格で周りをよく見ている人だということが読み取れた。繊細で神経質なんだろう。人間失格で自殺を試みるのも納得したように思う。
令嬢アユ
友人が恋した令嬢はどういう境遇の人だったんだろう。最後に太宰が意味深なことを言っているが私には理解できなかった。娼婦だったんだろうか。よくわからない。伊豆の描写が素敵で旅行に出かけたくなった
誰
太宰は自分が悪魔と呼ばれたことにショックを受けて、悪魔とは何かサタンとは何か冷静に分析していた。冷静に分析し自分は違うと思っても、周りの人からお前は悪魔だと言われ続けさらにショックを受けたようだ。なんかクスッと笑える話だった。