あらすじ
犯罪が厳罰化された世界の犯罪とは?
厳罰化が進み「人ひとりを殺したら死刑」という厳しいルールが定着した世界で、殺人者はなにを考えるのか。究極の思考実験ミステリ。
解説=福井健太
単行本 2022年7月 文藝春秋刊
文庫版 2025年10月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
「人を一人殺したら即死刑」が常識となった日本で起こる数々の事件を想定した短編集。冤罪や過失致死的な行動など、予想される自体を貫井徳郎氏が味付けすることでいい感じの小説に仕上ってた。最初の短編がグロすぎてびっくりしたけど。短編集だけど時間があれば全部一気読みしたかった。
Posted by ブクログ
貫井徳郎著『紙の梟 ハーシュソサエティ』は、現代社会が抱える「正義」と「制裁」の境界線を、冷ややかでありながらも深い人間愛をもって照らし出す一冊である。
「殺人を犯した者は即死刑」という徹底したルールのもとに築かれた架空の社会。その世界を貫井は、倫理や制度の問題としてではなく、“人が他者を裁く”という根源的な問いとして描き出す。物語は短編形式で展開しつつ、どの章にも通底するのは、善悪を単純に切り分けられない人間の複雑な情念だ。
冷徹な設定でありながら、作中に流れるのは静かな慈しみの気配である。登場人物たちは罪に向き合いながらも、自らの心の奥底にある「赦し」や「理解」へと手を伸ばそうとする。その姿が、鋭利な社会批評の中に確かな温もりをもたらしている。とりわけ表題作「ハーシュソサエティ」は、制度の正しさよりも人間の弱さに焦点を当て、その弱さこそが希望であるかのように物語を締めくくる。
全体を通じて、貫井の筆致は精緻で重厚だ。論理と感情、冷静な観察と人間への信頼がせめぎ合い、読後には静かな余韻が残る。世界の残酷さを描きながらも、人間の尊厳を信じる——その矛盾の狭間にこそ、彼の文学が息づいている。
『紙の梟 ハーシュソサエティ』は、ただの社会派ミステリーではない。理性と情の両輪で「生きる意味」を問い直す、現代の寓話である。
Posted by ブクログ
2025/11/30 8
直前に岩窟の王を読んでいた為、1つめが響いた。
人をひとり殺したら死刑、という法律になった日本で裁判員裁判の導入で冤罪が無くなったかに思えたが実は犯罪者が野放しになっていただけだった、そんな話。私はこれが一番好み。
Posted by ブクログ
人ひとりを殺したら死刑になる世界の連作短編
この本を手に取ったのは、最近SNSで蔓延している私刑について、それがどうというわけではないけど、それが行き着く先の一つとしてこんな世界もあるかもなとか思ったから。
あと、ずっとエンタメ100%の小説ばかり読んでいたのでたまにはエンタメの中に社会的メッセージありそうな作品を読みたくなったから。
勝手にメッセージ性の強い作品である思っていたけど、実際そんなことはなくて、ただ人を殺したら死刑になる世界線の事件の話。
無論そのルールの弱点(殺さなくても両腕切り落として眼球くり抜いて舌切られたら殺してるのと同じじゃない?とか、過失で殺しちゃったらどうなのとか、冤罪で死刑執行したらどうするのかとか、更生の余地あるが判断せず死刑にしていいのかとか。)みたいなことはうっすら伝えてくるけど、結論は出さずみんな考えてねみたいなスタンスで終わる。
紙の梟というタイトルの回収はどうなるんだろうとワクワクしていたけど個人的にはあんまりだった。
ラストの終わり方もめっちゃ好みというわけではなかった。ただ、なんだかんだ続きは気になってスラスラ読めたし面白かった。