【感想・ネタバレ】教室内(スクール)カーストのレビュー

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Posted by ブクログ

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「スクールカースト」と呼ばれる、同学年の児童生徒の間で共有されている「地位の差」について、インタビューとアンケートで実態を明らかにしている。
あとがきの謝辞を読むと、著者が東京大学大学院教育学研究科に提出した修論がベースになっていると分かるが、本編を読んでいても論文っぽさをあちこちに感じる。インタビューは必要箇所を書き起こした上で、その回答の意味するところを一字一句誤りなく引用しながら解説していく辺りとか、すごく論文っぽい。でもそのおかげで、理解はスムーズに進む。とても分かりやすい。

スクールカーストにまつわる発見がいくつかあった。

「『スクールカースト』で下位に置かれている生徒が、『クラスメイトに馬鹿にされている』と感じる傾向が見て取れます。一方で、全体的に見ると、男女ともに中位の生徒が馬鹿にされていない傾向があるだけで、上位の生徒もある程度『馬鹿にされている』傾向がある」(p110)

「もともとハルキらが所属する『イケてないグループ』のメンバーが、みんなを盛り上げるようなエンターテイナー的な素質や能力を持ち合わせていないわけではない」(p128)

「彼女は上位のグループに入ったことで、『〈1軍〉の義務として』権利を使わなければならず、そのことに重責を感じていたということです。
 先に示したとおり、彼女は、上位のグループに所属するということは『与えられる権利の数』が多くなることだと解釈しています。その権利は、与えられているだけで使わなくてもいいのではなく、権利があるからには使わなければならないのだと彼女は考えています。
 そしてそれは、『〈1軍〉の義務として』権利を使わなければ何も進まないのであって、クラスの方向性や雰囲気を決めていくために、そうした権利を使うことは、彼女にとっては重責であったようです」(p137)

「たとえば吉田先生は、『スクールカースト』の下位に位置づけられる生徒は『100%将来使えない』と考えています。なぜならば、吉田先生は、勤務校の中で今年の就職の結果が芳しくないのは、『スクールカースト』の下位に位置づけられるような『気の弱いオタク』の生徒であり、企業はそのような人材は求めていないと考えているからです。
 一方、たとえば就職の採用結果が芳しくなかったとしても、吉田先生が『強い系』と呼ぶような『スクールカースト』の上位に位置づけられる生徒のことは、それほど心配はしていません。というのも、彼らは『生き方』が『うま』く、『ゴマすり』などもでき、人間関係をうまく構築していけるため、たとえ仕事を辞めたとしても、『そんなに心配ではない』と吉田先生は考えているからです」(p246-247)

「松本先生も、『スクールカースト』による『地位の差』を、『なきゃいけない』ものだと考えています。松本先生も、『スクールカースト』は、『コミュニケーション能力』により成り立っていると考えており」(p261)

「一方、小林先生は、加藤先生や松本先生と違い、『スクールカースト』による『地位の差』を、『リーダー性』によるものだと考えています。『リーダー性』は、良い意味で利用している生徒も、悪い意味で利用している生徒もいますが、小林先生はそうした『リーダー性』を持つ生徒は、『才能』や『資質』がある児童だとみなしており、努力で得ることの難しい潜在的な能力だと解釈しています」(p261)

「生徒と教師は、ほぼ同じ状況を見て、生徒間の『地位の差』、すなわち本書でいうところの『スクールカースト』を把握していますが、その解釈にズレが生じているということです。
 生徒が『権利の多さ』を軸とする、『権力』構造として『スクールカースト』を解釈しているのに対し、教師は『能力の高さ』を軸とする、『能力』のヒエラルキーだと解釈しています」(p273)

高校時代を思い出しながら読んだ。振り返れば、自分はスクールカーストでいえば中位から下位の人間だったと思う。上位にはかなり苦手意識のある人もいて、怒りを覚えたこともあった。敵意を見せることはなかったけど。
また自分の学校の場合、学園祭や体育祭などはスクールカーストがあいまいになりやすい時期だったように思う。自分も上位の人から一定の評価を受けたりするタイミングでもあり、そんな時は素直にうれしかった。
一方で、スクールカーストに関係なく自由にフラットな人間関係を構築する人もいた。いまでも親しく付き合っているのは、そんな人だったりもする。

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2023年07月26日

Posted by ブクログ

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教室内(スクール)カースト (光文社新書) 新書 – 2012/12/14

同年齢の学校内のクラスという中でも対等な関係というものはない
2016年6月3日

鈴木翔 による 著作
1984年秋田県生まれ。
群馬大学教育学部卒業。
東京大学大学院教育学研究科博士課程に進学。
現在 web で見ると秋田大学で助教をしているようだ
本書は鈴木氏の学術論文を一般向けにわかるように改めて加筆再構成した本である

率直に言って学生、大学院生などの一部の人間しか読めないようなものよりも広く世の中一般に訴えかけるべき内容の学術論文も数多くあると思われる。
本書はそのうちの一つであると思える。

結局同世代の人間を集めた学校内のクラスという中でも対等な関係というものはないのだ。
対等な島宇宙が存在するのではないとする指摘は重要だ。
宮台真司氏(制服少女たちの選択 講談社 1994年)への反論と言える。

これまでにも学生生活でグループ分けに人間を分類したような話は多く語られてきた辛酸なめ子氏による女子の国はいつも戦争によると自分の合ったグループに入って生活しようと提唱している
それ自体が間違いではない。
しかしそのグループ間に上下関係があること。
権力などが違いがある。
また一番下の受け皿層に所属する生徒達にとってはあまり気分よく過ごせる環境ではない。

個人的に小中高時代を振り返ってみてもクラス内の力関係が平等ではなかったと思う。
ただ一番上の層の子達が周りに配慮できるなどがあれば状況は大きく異なる。
小学校時代はガキ大将と仲良くしていた為、グループ間で阻害されることもなく過ごせた。
高校時代もあるにはあったものの大学受験に向けて必死になり、あまりそこまでグループ間うんぬんどころではなかった記憶がある。
受験勉強の影響もこのクラス内でのカーストに多大な影響を与えているのではないか。
もっとこの辺はつめてもらいたい。

スクールカーストの順位が対して変わらないという本書内の指摘については噂や情報が学年間で共有されていることに加え、本人の能力、性格、資質も影響するからだろう。
教師側がカースト構造を能力によって出来ていると見る考えはある程度正しいと思える。

鈴木翔氏の研究はまだはじまったばかりと言える。
本書内でも認めているように
研究対象事例が少ない。
特に教師側への取材は不十分に感じた。

いじめにせよ、それをうむ土壌たるスクールカーストにせよ固定されたクラス制度があるが故の問題である。
だからゼロにするのは難しいだろう。
しかしある程度の緩和策をうっておくべきではないだろうか。
教師側も本書からグループ間の力関係など複雑に絡まる生徒たちへの配慮をしつつ共同作業、グループ学習をさせてやって欲しいと思えた。

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2022年01月04日

Posted by ブクログ

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む??? むむむ???
衝撃。
まじでこんなこと起こってるの??

私が鈍感に生きてきすぎた?!
いやいや。
このレベルで展開それていれば、さすがに誰でも気づくよね。
こんなんありえへんゎ...。

しかも、大学生になって、思いだしながら語っているインタビュイーが、悪気ナッシングでこの価値観を語っているのも衝撃以外の何物でもなく。
いじめじゃないですよー、とか明るく言うけど、第三者が聞くと、もはやいじめにしか見えない内容も...
うーん。
全国てどれくらい、こんな状況なんすかね...。

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2020年04月24日

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