あらすじ
江戸時代、国内最大の叢書『群書類従』の編纂に生涯を懸けた、全盲の学者・塙保己一。盲人とは思えぬ前代未聞の偉業の傍らに常にあったのは、目明き――妻、学者仲間、門弟らとの、すれ違いだった。 “天才・塙保己一”の目に映っていたのは、絶望か希望か、それとも――。「あのお方は、我々には見えぬものまで見えているのさ」
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Posted by ブクログ
視覚障害がありながら学者として大著を成し、障害者の地位向上に尽力した塙保己一
。この本はそんな保己一の人生を辿る評伝、ではない。保己一の見ている世界と周りの人が見ている保己一の姿のずれに焦点を当てて、様々な登場人物の視点で場面が展開していく。
手を触れれば相手の体調が分かり、格子を開ける音で相手の機嫌が分かる保己一だが、相手の心は測り損ねる。書物のように理屈ではない。家族や使用人、友人などの善意も悪意も、献身も裏切りも、読み違えたり気付かなかったり。
相手も、保己一の見えている世界が分からずそれぞれに思い描く。盲も目明きも同じく扱われることを願う保己一だが、皆の称賛には「盲なのに」何かが見えているなどと英雄視される。
親友の太田南畝は言う「目明きと目暗ではどうしてもわかり合えぬところはあるものです。それをどうにか繋ごうと、いちいち追いかけていてはきりがない」。それはある意味真理だろう。保己一は、目明きも目暗も度外視したそのまんまの自分を見てほしいと願っていた。分かり合わなくては、と意識することで、見えなくなることもあるのかもしれない。