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江戸時代、国内最大の叢書『群書類従』の編纂に生涯を懸けた、全盲の学者・塙保己一。盲人とは思えぬ前代未聞の偉業の傍らに常にあったのは、目明き――妻、学者仲間、門弟らとの、すれ違いだった。 “天才・塙保己一”の目に映っていたのは、絶望か希望か、それとも――。「あのお方は、我々には見えぬものまで見えているのさ」
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Posted by ブクログ
凄いものを読んだ。フィクションだと思い込んで読み始めた。実在の人だったとは。 途中、語り手が代わり、違った視点から見ることになる。悪意があると思った人の心情が分かったりする。結局みんな、お優しい。幼なじみも最後はお優しい。 考えたのは、障害を得るということ。見世物小屋に立ったり、検校に入門したり、...続きを読むお福さまになったり生きる道はあるけれど。カタワだからといって人として劣っているわけではない。障害者にも、明るい人、僻みっぽい人、大胆な人、ビビリ、思いやりのある人、いろいろいる。白そこひなど今では手術で治っちまう。昔は障害でも今は違う。 保己一は目暗だけれども偉くなった。目明でも偉くなったろう。なら、障害は成功することに関係あったろうか。見えていたらもっと何かを成し遂げたのだろうか。 多分。一度聞いて覚えちゃうなんて、アスペルガーだったんだろうな。そして、空気が読めない。だから素直だよね。 ホキイチ凄いよ。
群書類従の塙保己一の一代記。ちょうど検校について大河ドラマ「べらぼう」で学んだところだったので、わかりやすかった。そして面白かった!!さすが第39回山本周五郎賞! 最後、目あきでもわかる血の匂いがわからなかったのは、作者の意地悪か、保己一が目あき以上に鼻が効かなくなっていたのか。あと一回出た臓腑は筋...続きを読む弛緩剤使わないと腹腔内には戻らないです。とは言っておきたい。 辰之助は飛蚊症のような状態からだんだん見えないところが増えて行った。母は嘆き悲しみ、隣村の医師のところに処方してもらいに通うが、一向に良くならずに悪くなっていく。 目が見えなくなってから8年。辰之助は15歳になっていた。その間に母のきよはなくなった。江戸に行き、太平記を語る職につきたいと希望している。父親は一緒にいると見えているのか?と聞きたくなる時がある。 辰之助は千弥と名を替えている。あんまを生業としている。雨富検校の一座に入り、貸した金の取り立てなどもしている。あんまも鍼も三味も上手くないので、金の取り立てを任される。 学問をしたいと検校に訴えたら、按摩おわりに客が本を読み聞かせてくれるようになった。先輩たちには反感を持たれている。一度身を投げたが助かった。名前を保木野一と替える あれからまた経って、塙保己一と名を改めている。大田南畝と懇意にしている。目あきの女房お丁を貰ったが、三ヶ月前から手を繋いでもらえない。簪をプレゼントしたがこんなものは要らないと言われてしまう。お丁さんは保己一の弟子の葉次郎と密通していたが、それは保己一に相手にされていないと思ったからだった。 お丁はおとせを産んで出て行った。おたせを後添えにもらう。群書類従を編纂している。家と蔵が燃えた。版木がだいぶ燃えた。おとせは金十郎と結婚するが離縁。寅は死に、妾が熊太郎と次郎を産む。
保己一の盲人としての苦しみや学者としての矜持、保己一の家族や門弟らの崇拝や劣等感等、複雑な感情が描かれます。他人を信じられなくなり血の繋がった家族だけを信じる保己一の姿が痛々しく感じられました。目が見えていても見えていなくても他者を理解するのは難しく、結局見たいものを見たいようにしか見ないのかなと思...続きを読むいました。
盲目の国文学者、塙保己一を題に取った時代小説。 久しぶりに、星5をつけたくなるにも関わらず、「面白かった」という感想を述べづらい、それでは言葉が軽すぎる…そんな印象の本だった。 目明きと盲。 保己一は、ずっと目明きの人と同列に扱われたくて、見てもらいたくて、ただその一心で生き抜いた。 そして自分...続きを読むが好きな学問に専心すればする程に周囲は感心してくれる。 これで己の道を立てていくしかない。 この話には、見える者/見えない者の対比とともに、嘘/まこと、善意/悪意、理想/現実……数々の対比が登場し、時にそれが人の心を傷つけ、時にそれが人の心を明るく照らしていく。 保己一は、学問に、文字として記録される世界に、真実を求めた。それこそが目明きの人たちと通ずる手段だと信じた。 彼が成した業績は間違いなく偉業であり、後世に語り継がれている。 しかし、奇しくも本作の中では、文字や言葉では"真実を言い表せない"と思い知らされることが、あまりにもたくさん描かれる。 目が見えるから事物を正しく見ることができるのか、目が見えないと事物を正しく見ることはできないのか。 嘘だからそれは悪なのか、まことだからそれは善なのか。 そもそも何がまことなのか。 自分が見ている相手の姿は真の姿なのか。見たいと思った姿をただ投影しているだけではないか。 目が見えていても、いなくても、他人のことを正しく見ることなど出来るのだろうか。 そして、仮に出来なかったとして、それは悪なのか。 最後はとんでもないすれ違いで物語を閉じる。 …しかし、希望を持って。 えもいわれぬ重さをみぞおちにずしりと残す作品だった。
塙保己一。江戸時代の全盲の天才国学者の彼は、数多の古典を分類し、合冊した叢書『群書類従』を刊行したことで知られています……とこれは日本史の教科書(とか用語集)にはこんな感じで書かれていて、正直、私もお名前を知っているだけでした。本書はそんな全盲の学者の半生を綴った作品になっています。 幼い頃に失...続きを読む明を経験し、それでも学問の道を志し、周囲から評価されていき、『群書類従』の刊行にいたるまでの成功のプロセスを描いた作品……と表現しても決して間違いではないのですが、たぶん〈そういう話〉をイメージして読みはじめたひとほど、作中から受ける印象は異なってくるのではないか、と思います。評価されればされるほど深まっていく周囲との溝、疑心暗鬼、嫉妬劣等感、折り合いの付かなくなる己の感情。安易に流されてしまいそうに感覚に鋭利な刃を突きつけてくるような作品でした。特に後半、保己一の感情が噴き出す場面は強烈に胸に迫ってきました。 傑作です。
今の時代には使わないような言葉づかいに、(その時代を生きてはいませんが)保己一が生きた江戸時代の空気感がイキイキと伝わってきた。 目が見えないゆえに、周りから支えられたり、目が見えないゆえに、裏切られたり…。それでも壮大なことを成し遂げた保己一の人生は本当に見事。 目が見えない人の世界は、わたしが漠...続きを読む然と想像してるのとは全く違う世界なのだとも思った。
★5 江戸時代に盲人ながら群書類従を編纂した国学者の評伝、晴眼者との関係を描く #見えるか保己一 ■あらすじ 全盲の国学者である塙保己一の物語。両親や友人に愛されながらも、幼年期に失明した彼の人生を描く。どんな本でも一度聞けば覚えてしまう記憶力で、国学史をまとめた『群書類従』を編纂していく。保己一...続きを読むは普段から近くにいる妻、友人、弟子たちとどんな関係だったのだろうか、そしてそれぞれの胸中は… ■きっと読みたくなるレビュー ★5 洗練された文章、物語に引き込んでくるプロット、心に訴えかけてくる人物描写、もうかなり凄い。びびった 蝉谷めぐ実先生のご活躍ぶりは色々拝見してまして、『万両役者の扇』で山田風太郎賞を受賞されてます。さらに本作も山本周五郎賞候補にもなってるようですし、そう遠くない未来に直木賞を受賞しても全然おかしくない。また本作は映像化されても本質的な面白さを伝えるのは難しいんじゃないかなーと思ってまして、できれば文字を目で追って楽しむのをおすすめしたい作品です。 本作は塙保己一を描いた伝記小説。江戸時代に盲目ながらも全600冊以上の国学史『群書類従』として編纂。後に国学の研究教育機関である和学講談所をした設立した人物。なんとなく名前は聞いたことがありましたが、何をどうした人物かは存じ上げず。はー、読書ってのは勉強になりますよね。 とんでもなく優秀な人物なのは想像に難くないんだけど、以下の有名な川柳が全てを物語る。健常者の弟子たちが、全盲の保己一に学んでいる様子を皮肉った川柳です。 「番町で 目明き盲に 道をきき」 本作はそんな保己一の幼年期から総検校(盲人の最高役職)まで出世するまでを描いていく。若い頃は学問を志すも受け入れられない、あん摩師になるよう強いられるも不器用といわれ落ちこぼれ。しかしその後一時的に学問を許され、保己一の類稀なる能力を発揮、出世の道が開かれていく… という筋立てです。 この物語は彼の努力っぷりが滔々と語られる――というわけではなく、メインは盲人である保己一と晴眼者である彼の周囲にいるひとたちとの関係性を描いていくのです。 保己一は目が見える妻、友人、弟子たちのことを、どう思い、どのように扱っているのか。一方、健常者たちは保己一を尊敬しながらも、嘘をついたり、都合の良く扱ったりもする。だからこそ保己一は、どのような行動をとることになるのか… 不安で切ない心の深い部分まで描写していくのです。 このあたりは章のタイトルの読み方が2種類あるんです。 第1章:むしの子(虫/霧視) 第2章:えんていの水(淵底/園庭) など これも、見えている側、見えていない側の両面から表現されてるってことだと思いました。 読み味が深く高品質な伝記、評伝小説ですね、お時間をとってゆっくりと味わってほしい作品でした。 ■ぜっさん推しポイント 最終章である第6章:眩くて眩む(まばゆくてくらむ)が印象的でしたね~。これまで学問にまっすぐ生きてきて、周囲にも優しく力強く関係性を築いてきた保己一が、幼馴染と出会う。これまでの語られてきたエピソードを想うと、そこで交わされる会話に心が揺さぶられるんすよ。 現代で天才といわれる人物というと、たとえば将棋の藤井聡太さんでしょうか。常人には理解できないレベルで生きているひとたちも、ただその時その時を必至に生きているだけのような気がしますね。
すごい小説と出会ってしまった。 読み終えても、すぐには言葉にならないくらい。でもとりあえずメモしておこう。 まず驚かされるのが、盲目の人そのものの描写、文章の表現だ。この文体、表現力。目が見える自分には理解できないような感覚を覚える。入りから衝撃的。 盲人にとって、「見える」とは、「見えざる」とは...続きを読む、どういうことなのか、常人に見えているはずのものが、見えていないのはもちんのこと、他の人に見えないものが「見えて」いたりするのも盲人なのだ。 そして、「真実」か「嘘」なのか、どう見えるのか。そしてそれが、人によって様々に捉えられ、人生をも変えていく。 塙保己一の生き方や業績を辿るという筋立ての小説ではないが、それを知ることも有意義だと思うし、知れば驚きの偉業を目の当たりにする。 だがこの小説では、次々と現れる、または過去に登場した人物たちに見えているもの、見えなかったものに注目していなければならない。 それぞれの人物たちは、善人も悪人も、その生き様が、テーマに沿って計算され、描かれている。そして、意外な方向へと人生を進めていく。 あちこちに細やかな伏線が張り巡らされており、一概に物語のあらすじさえ語れない。ところどころに表れる言葉も考えなければ前に進めない。舞台から消えるものもいれば、最後まで居続けて仰天させる者もいる。 読み手の自分にも、通り一遍のものの見方など通用しないと、次々に覆してくる。それが心地よく、また衝撃的だった。
大作を読み終えた充実感が心地よく拡がる作品だった。 偉人、塙保己一の生涯の一端を、こうして小説で知ることになろうとは。 裏切りに遭いながら、そして盲目なこともあり不信のどん底に突き落とされながらも、学を一心に求め、そして極めた生き様に頭が下がる。 天才には天才の苦悩があるのだろうが、その周囲の人間も...続きを読むまた大いに苦労があるのだろう。 それにしてもあのような結末は想定していなかったので、得した気持ちになってしまった。
盲の孤独いかほどか。想像を絶するほど大きな目明きとの隔たりに悩み、葛藤して生きた塙保己一の生涯の物語。埼玉県の偉人として渋沢栄一、荻野吟子と並んでその名前と盲であること、群書類従だけは知っていた。 見えない者だけが見えているものという、一見魔法のような、救いのような言葉は逆に保己一を苦しめた。飛び...続きを読む抜けて学があり、愛すべき家族があり、社会的に認められた人である。だが、どこまでいっても盲である。必ずどこかで支援が必要であり、その方法や程度も難しい。それを間違えると生活に支障をきたしたり、プライドを傷つけてしまったりする。ときには見える者の企みに翻弄され、騙され、見えない者からはその能力を妬まれる。見えない故の懐疑心や無力感、そして孤独。逆に、見えないから保っていられた憧れや愛もあった。彼の認識していることと事実は違ったかもしれないが、保己一にとっては紛れもない真実であった。ラストシーンには胸を打たれた。最後保己一は気づいていたのかな。 本書の参考文献にもある「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読んだことがある。その内容のほとんどを忘れてしまっているのだが、目の見えない人は目の見える人が思うよりも空間を把握している、という旨のことが書いてあったことはとても興味深かったため覚えている。 「できるorできない」と能力で捉えてしまうと、どうしてもできるを優、できないを劣と取ってしまいがちである。それだと、極端な考えになってしまうし、いつまで経っても本当の意味でインクルーシブな社会を作ることはできない。能力ではなく、感性や特徴として捉えることで初めて、一切の下心や憐れみ抜きで対等に関わることができるはずだ。視覚障害に関して言えば、見えない人にしか見ることのできない世界は面白いと思う。あとは、現代病であるスマホ依存症にはならないのだろうかとか。もしそうであるならスマホに対する最強の耐性を持つ数少ない貴重な意見の持ち主なのではないかとか。こういった興味や関心は、人を揶揄するようなものでは全くないし、単純な興味として共有し、議論されるべきだと思う。 これはあくまでも健常者である私個人の意見である。そんなの綺麗事だと言われればそれまでで、実際見えない人の意見はどうかわからない。ただ、同じ人間として興味があることを伝えたい。これは恋愛で人を好きになることや、共通の趣味を持った人と友人になりたいと思うことと何か違うだろうか。
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