あらすじ
江戸時代、国内最大の叢書『群書類従』の編纂に生涯を懸けた、全盲の学者・塙保己一。盲人とは思えぬ前代未聞の偉業の傍らに常にあったのは、目明き――妻、学者仲間、門弟らとの、すれ違いだった。 “天才・塙保己一”の目に映っていたのは、絶望か希望か、それとも――。「あのお方は、我々には見えぬものまで見えているのさ」
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Posted by ブクログ
塙保己一という実在した学者のお話
「盲だから」の意味が始めと終わりで変わった
見えないから分からないこと
見えるから分からないこと
同じ言葉を話しているのに「見えるか」の1点が違うだけで捻じ曲がって伝わり
傷つけあい助け合う人々の切なさと温かさを感じた
Posted by ブクログ
文が素晴らしい。特に動作の描写が秀逸で、講談でも聞いているようにリズミカルで、頭の中で動画が再生される。
目が見えぬ人には音や匂いや感触がどれだけ多くを物語るのか、なるほど、なるほどと頷くばかり。
人情味あり、うっちゃりあり、のプロットも文句なし。
Posted by ブクログ
直木賞候補作ということだけであらすじもよく見ないまま手に取りました。
時代小説はほとんど読んだことがないので、読めるか不安でしたが、現代に通ずるものを感じる場面も多く、楽しんで読むことができました。
独特の文体で、前半は先が気になるもののあまり進まずやきもきしましたが、後半は慣れて来たのもあり一気読みでした。
本書を読みながら、視点が変わると真実は全く違うものになるという体験ができました。
メッセージ性が込められた作品だと感じます。掴みきれていないメッセージもあると思いますが、考えさせられる作品でした。
目が見える見えないに関わらず、人は見たいものを見たいようにしか見ていないものなのだなぁと感じました。
ただ、それは悪いことばかりではなく、時には都合よく見たり見なかったりすることは、人を救うのかもと思ったり。
とても面白かったです。
Posted by ブクログ
盲の天才、塙保己一と、彼を取り巻く周りの人々の人生が描かれる。
見えないからこそ誤解し、人の温かみを強く感じ、絶望し、感動する保己一の心の揺らぎから目が離せない。
周囲の人間から見た保己一の逸話も、描写豊かで引きこまれた。
Posted by ブクログ
実在の江戸時代の全盲国学者の塙保己一。差別や偏見、学問への希求と、見える周囲と見えない保己一との齟齬をこれでもかと突きつけられる。章ごとに現実の捉え方がこうも異なることに愕然とさせられる。ただ、見えるから見えない事、見えないから視える事というのもあるのかと…保己一の能力を妬み、嫉み、恐れることからそれぞれの行動が生まれるが、それでも根本にあるのは絶対的な敬いで、輝明の最期が切ない。
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小説の醍醐味の1つは、全く自分と違う人生を想像させて、それを垣間見させてくれる事だと思う。塙保己一という人が盲人で、「群書類従」という書物を編纂した、という知識しか無かったが、目が見えないということも自分の側に引き寄せて体感させてくれるような小説だった。
江戸の当道座や、その役割や雰囲気なども、想像が着くような丁寧な描き方だった。
見える者と見えない者、身投げや不義密通、家族の絆すらも、正しい見方などありはしない(どのようにも受け取れる)という「見え方」「感じ方」の差を、伏線のように織り込んでいく構成も見事だった。必ず何かが対になっているように思える。ドキドキしながら、何回もどんでん返しを喰らった。
最後も…光も闇もある終わり方。
何が対になっていたのか(複数考えられる)自分では気づかない物が、まだあるかもしれない。
しばらく余韻に浸っていそうです。
Posted by ブクログ
見えてないのに見えているようだ!
いや、やっぱり何にも見えてないじゃないか!
サクセスストーリーのよう見えるが、盲人と晴眼者、それぞれの葛藤は常に物語に渦巻く。
「盲人なのに凄い!」ではダメなのだ。盲人という前提を覆した上で凄くなければ。
ただ、もしそのように評価されたとしても、もしも盲人でなければ、そのように評価されるまでの能力は得ていたのだろうか?
それぞれの心理描写と、心の移ろいが素晴らしいと感じました。
盲を騙すのなんて簡単かもしれない。だけども、美しい嘘もあるんだね〜。
Posted by ブクログ
ハンディキャップを乗り越えて偉業を成した人の話、なんて生易しい物語じゃなかった。
いい話かと思えば、そのB面からの視点で裏切られる。見えているものばかりが真実ではない。しかしその真実が必ずしも不快ではなかったりもする。虚の中にも真実が見えたり。勘違いでもいいからそのままにしておいた方が良いものもある。その人に関わる噂・伝説も然り。真実よりも人がそれをどう見たいかで広まっていく。今のネット社会にも通じる虚/実、噂・伝聞。
おたせの「言葉を必要としない繋がり」「目に見えぬものこそ、言葉にできぬものこそ素晴らしい」という台詞、何もかもに名前を付けなくてもいい。上手く言葉にできない関係もある。
心眼なんてのも最後には笑い飛ばす。盲だからこそ目明きに見えないものが見える、なんて美談にもさせない。本当に「見えている」とは何なのか。人は何を「見ているのか」。完璧な人間は出てこない。だからこそ完璧でない人間賛歌。人間面白い。とにかく各エピソードに唸るばかり。
Posted by ブクログ
晴眼者と盲の環境の違いと当時の時代背景と文化の理解と、いろいろと解釈が難しく読むのに時間がかかった。目次表記もひらがなと思いきや、当て字で二通り。なんだか腑に落ちない表現は一人称だけで捉えられていたせいだったと、最終章で見せられたものに驚いた。構成が凄い。
人間は自然と自分が上に立ちたがる。他人にどう見えているのかはそれぞれの性格や環境、価値観によって異なり、他人の解釈はわからない。
見るという情報の広さゆえ、捉えきれない見落とし。見えているはずなのに見えていないものもある。
一読ではたぶん理解しきれていないので、落ち着いて再読したいと思う。
Posted by ブクログ
江戸時代の全盲の国学者・塙保己一の生涯を描いた時代小説です。幼少期に病気で失明しますが、誰かに音読してもらった書物の内容を一字一句覚えるという優れた記憶力の持ち主で、好きな学問を志し全盲ゆえの周囲の嘲りにあいながらも苦難の末に、『群書類従』(ぐんしょるいじゅう)という日本の古い書物や記録を集めた国内最大級の文献集を編纂した人物です。
ただこの小説は、その偉業を称えるということがテーマではありません。
全盲の保己一は、「肉眼を持ち合わさずとも、心眼を以てすれば悟りの心を開くことができる」という信念のもと、何とか目が見える人たちと好きな学問で肩を並べたい、同じ土俵に立ちたいと努力を重ねます。しかしそこには保己一からすると、目が見えないことで、自分では望んでいないのに、自分に周囲が気を遣っているとか、周囲が自分を憐んで(あわれんで)いるという思いや、自然と自分が周囲にそうさせてしまっているのではないかという、やるせない思いに苛まれ(さいなまれ)ます。
「自分はただ目が見えないだけのこと」という感情と、目が見えないことによる周囲の対応に、葛藤する保己一の心情が分かりやすく描かれています。
そのようなこともあって、目が見えない保己一と目が見える周囲の人たちとの認識や感情にもズレが生じて、それが災いして不本意な溝が生じたり、保己一自身孤独を感じる場面もありました。
しかし、目が見えないことで、音や匂い・手で触った感覚などが研ぎ澄まされて、例えば相手の息づかいひとつからでも、目が見える人以上に周囲の状況や相手の感情をとらえる状況描写・心理描写は、作者の筆力を感じさせるとても素晴らしいものでした、そのため、目が見えない世界を経験したことのない我々読者が、保己一の感情を感覚的にも認識することができました。
そこまで思い込まなくてもいいのに、と保己一に言ってあげたくなるのは、目が見える者の傲慢であり、そうやって保己一は身を守り生きてきたんだな、とあらためて思いました。
目が見えるから大事なものを見落としたり、目が見えないから本質を見極めたりすることがあって、『見えるか保己一』という叫びは、目が見えないことに慣れてしまい慢心する保己一の自分自身への叱咤であり、目が見えることで大事なものを見落としてはいないか?ものごとの本質をしっかり見極めているか?という、作者から我々への警鐘のようにも思いました。
私としては「直木賞」受賞を確信していただけに、今回受賞に及ばなかったのは心から残念でした。
2023年上期に受賞の「木挽町のあだ討ち」永井紗耶子さんもそうですが、最近の女性作家の時代小説は凄い!
Posted by ブクログ
もうこれ優勝。
最高に素晴らしい作品です。
さすが、山本周五郎賞。直木賞も確実と思っていたけど、、、
埼玉県の偉人である塙保己一のお話。
偉人の話と言っても伝記のようなものでは全くなく、彼の人となり、心の内を感じられる作品。
盲の彼には何が見えていたのか、本当に見えていなかったのか。
晴眼者には彼がどのように見えたのか。
晴眼者は彼の見えないものが見えているのか。
SNSなどの言葉や映像・画像で容易に見えた気持ち、わかった感覚に陥ってしまっている現代社会だからこそ、この作品の美しさが輝くと感じている。
ぜひ多くの方に読んで欲しい大好きな作品。
Posted by ブクログ
偉人の苦労話&サクセスストーリーにとどまらず、周囲の人間から見た美談ではない話を軸にして描いているのがすごい。
最初に「見えるか」が文中に登場したときは、いろんな意味で鳥肌が立った。
保己一の盲人としての苦しみや学者としての矜持、保己一の家族や門弟らの崇拝や劣等感等、複雑な感情が描かれます。他人を信じられなくなり血の繋がった家族だけを信じる保己一の姿が痛々しく感じられました。目が見えていても見えていなくても他者を理解するのは難しく、結局見たいものを見たいようにしか見ないのかなと思いました。
Posted by ブクログ
見える者と見えない者は、結局最後まで分かり合えないのかもしれない。保己一の目に映る世界と、周りの人々が本当に抱えていた思いは、ずっとすれ違ったまま。保己一視点の解釈と、実はそうではない晴眼者の真実が交互に描かれる構成が巧みで、読んでいて何度も苦しくなった。弱者のはずの盲人に嫉妬すら言えない周囲との断絶を通して見えてくる、頭が切れて強欲で傲慢な保己一の人物像に驚いた。
Posted by ブクログ
江戸時代の全盲の国学者・塙保己一、類稀なる記憶力で、学者として輝かしい経歴を築いていく。(オーディブル)
我が埼玉県の三大偉人の一人という認識しかなく、その生涯についてはほとんど知らなかったため、彼の生涯や思いを感じることができて、とても良かったです。
また、初読の作者でしたが、感覚的な比喩表現が多く使われ、この作品にはあえてそのような表現を多用したかのように感じました。
今回は、オーディブルで聞いたので、よりその効果があったようでした。
さらに、ミステリー的な要素も盛り込まれ、最後まで目(耳)が離せませんでした。
全盲という障害に対する当時の考え方や支援制度などについても、歴史の授業では学ぶことができない視点だったので、自分の歴史観を深めることができました。
全盲故のすれ違いに翻弄されながらも、優れた能力を生かして己の道を進んでいく保己一の生き方に、今まで偉人という認識しかなった彼が、私の中で生きた一人の人間として落とし込まれた気がしました。
自分自身と自分の生き方をしっかりと見ていきたいと思う今日この頃です。
Posted by ブクログ
いろんな人の視点で書いてある。そして、一見、繋がりがなさそうな話が最後に繋がっていくのは面白い。
文体にあまり馴染めず途中で読むのを断念しそうだったけど最後まで読んでよかった。
盲人の学者、保己一の周りの尊敬と嫉妬といろんな感情、見えるということとは何か、障害とはなんなのか、考えるポイントもあるし、エンタメとしても面白い。
実在する人がベースになっているのも興味深い
Posted by ブクログ
盲目だから、いろんなことを察知できる
盲目だからといってサポートしてもらわなくてもいい
盲目だから?何か人より劣ったり優れたりすることがあるかな
人を疑ったり信じたり、何をもってかは難しいなぁと感じた
Posted by ブクログ
視覚障害がありながら学者として大著を成し、障害者の地位向上に尽力した塙保己一
。この本はそんな保己一の人生を辿る評伝、ではない。保己一の見ている世界と周りの人が見ている保己一の姿のずれに焦点を当てて、様々な登場人物の視点で場面が展開していく。
手を触れれば相手の体調が分かり、格子を開ける音で相手の機嫌が分かる保己一だが、相手の心は測り損ねる。書物のように理屈ではない。家族や使用人、友人などの善意も悪意も、献身も裏切りも、読み違えたり気付かなかったり。
相手も、保己一の見えている世界が分からずそれぞれに思い描く。盲も目明きも同じく扱われることを願う保己一だが、皆の称賛には「盲なのに」何かが見えているなどと英雄視される。
親友の太田南畝は言う「目明きと目暗ではどうしてもわかり合えぬところはあるものです。それをどうにか繋ごうと、いちいち追いかけていてはきりがない」。それはある意味真理だろう。保己一は、目明きも目暗も度外視したそのまんまの自分を見てほしいと願っていた。分かり合わなくては、と意識することで、見えなくなることもあるのかもしれない。
Posted by ブクログ
この本を読むまで、塙保己一という人を恥ずかしながら知らなかった。江戸時代の全盲の国学者。生涯にわたって6万冊もの本を集め、それを全て暗記していただなんて凄すぎる。
でも、この本を読んでいる間はその凄さをあまり感じなかった。保己一は敏感でもあり、鈍感でもある。見えているようで、見えていない。どこか掴みどころがなく、聖人っぽさのない人間味がいいなと思った。
Posted by ブクログ
目が見えなくても学問はできる
例えどんなに目がハンデとなろうとも好きであればできる。
保己一は人にたくさん囲まれているが、どこか目が見えないにも関わらず常人よりも学問に秀でている点をすごいと言う人や目が見えてないことに救われているような人が多い中、
目が見えてなかろうが哀れみもせず、欠けているのにできるのはすごいのだと言うこともなく、ただ学問に対しての勝ち負けを競い合うことができた友達はかけがえのないものであったろう。
見えるか保己一のついとなる見るなよ保己一を言ったのは彼だけだった。
見えていようが見えてなかろうが誰も見たいものしか見えちゃいない、と本当にその通りだなと思った
Posted by ブクログ
江戸時代の全盲の国学者、塙保己一の幼少期から老齢期において関わった人達との繋がりやすれ違い、障がいの有り無しの人生観を詰め込んだ歴史小説
読み込んでしまった…!
人生の厳しい部分も突きつけられるけど直接的な訴えが心に響いた
朝ドラにありそう
Posted by ブクログ
直木賞候補の中で唯一タイトルを知らず、
気になって手に取りました。
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第39回山本周五郎賞
受賞作
全盲の天才学者・塙保己一。
前代未聞の偉業の傍らに常にあったのは、
目明きーー妻、学者仲間、弟子らとの
すれ違いだった。
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なぜか途中読むのしんどくなって、
スピード落ちつつ読み進めました。
保己一目線と、
各話で登場する主要人物たちの目線だと
同じ出来事でも
感じてることも考えてることも違いすぎて。
それに愕然とするというか、
どんなに思っていてもすれ違ってしまう。
最後の最後まで「保己一は本当にわかってないのか?」と思わずにはいられず、
最後の最後まで掴みきれませんでした。
Posted by ブクログ
『群書類従』を編纂した塙保己一と彼を取り巻く人たちを描く。
「盲」だからと、「目明き」から大目に見られたり/大目に見られているとやっかまれたり、「目明き」に負けぬようがんばったり、家族だからこそ「嘘をつかない」という矜持を持ち続けることのしんどさ・皮肉、「見えているようだ」と言われたり、「見えるか」と言われたりの葛藤。
最後に「見るなよ」と言った幼馴染「輝ちゃん」の存在が、保己一と対になって物語を動かしていたんだな。
そして、結局人は自分の見たいものを「見たいように見ているだけなのだということ。目が見えていようがいまいが。
各章のタイトルが漢字でダブルミーニングを表している。
Posted by ブクログ
優しい話でもあるし、残酷でもある
途中このまま終わったらどうしようかと思ったけど、後半からラストが特に面白かった
面白いと軽く言葉にしていいのかわからないけど、読んでよかった
幼少期からどんな風にして塙保己一になったのか
視力を失った彼が見えていたものはなんだったのか
人はいつだって自分と周りには隔たりがあって、自分を客観的に見ることは難しい
愛された人であると思う
同時にその存在が周囲によって形作られていくような怖さも感じた
Posted by ブクログ
江戸時代に実在した全盲の国学者、塙保己一の物語(読むまで知らなかったけど)。しょっぱな幼少期に失明するまでの母親とのシーンはその愛情ゆえの濃さが会話に溢れて、正直読み進めるか迷うレベルだった。このペースで行かれたら、重油にまとわりつかれ続けるみたいで読んでらんないレベルと感じるほどだったが、程なくスンと落ち着くタイミングがきて、その後は一気読みだった。基本的には盲(あえて作中の言い方を踏襲させてもらう)の主人公(天才)と周囲の“盲ゆえ”ד目明きゆえ”のすれ違いが生む愛憎が相手を変えて描かれている。盲が“制度的には”優遇されていた江戸時代、盲ゆえのやっかみや、盲ゆえに天才と言えど周囲の真意に気付けないなど、目が見えないと言うことが生み出すズレをそれぞれの“視点”から執拗に描いている。正直途中状況把握がしづらい場面が何度かあり、話がブツ切れに感じることもあったし、ラストはなんとも唐突にすぎると感じたが、とにかくパワーに押されて読み切ったという感じ。好き嫌いは分かれそうだけど、パワーはある。
Posted by ブクログ
日本史で「塙保 己一」と思い込み、タレントのはなわが出て初めて苗字が塙だと気づいた人。
大きな事件が起こるわけでもないし、塙の偉人ぶりを示す内容でなく、8割がた面白く進む
ただ最後の章で激しいドラマ展開されて心を打ちました
Posted by ブクログ
2026年上半期、第175回直木賞の候補作とのことで読んでみました。
だいぶ前に読み終えていたのですが、なかなか考えがまとまらず、感想を書けなかった……。
個人的には、この小説に直木賞をあげたかったですね。
非常に残念です。
目の見えない主人公の描き方に、斬新さを感じました。
目の見えない人の気持ちになり切って描くのではなく、目の見える人間から見た「目の見えない人」を描くことで、主人公の凄さを浮かび上がらせる。
やはり、目の見える人が目の見えない人をいくら取材しても、想像することはできても、完全に理解するところまでは至らないと思うのです。
だったら、複数の人間の目を通して、塙保己一の凄さを描こう。
作者が実際にそう考えたのかは分かりませんが、私はそのように受け取りました。
視点を変え、それを小説として表現したところが素晴らしいと思います。
しかも、この作品は塙保己一という人物の恐ろしさや凄さを描きながら、そこから人間の思い込みや、記憶が変換されていくことの危うさにまで踏み込んでいる。
この小説を読んだとき、痺れました。
そして、この一文。
「目明きも盲も一緒さ。どちらであっても何一つ見えちゃいねえのさ」
物語のすべてを、この本質へと落とし込んでいくストーリー展開。
感動しました。
時代物はあまり得意ではないのですが、感情の動きを中心に物語が展開していく小説は、ジャンルに関係なく楽しめるのだと思います。
感想を書いていたら、あのときの感動が再びよみがえってきました……。
Posted by ブクログ
『群書類従』も塙保己一も
ただ名前だけは知っていたけれど
その偉業を知ったのは、これがはじめて!
この物語の保己一は
当時多くの盲人が職とした
鍼の技術が上手くならない人だった。
そのかわり、人の声や身動きの音
雰囲気から感じ取る力や
書物の内容を覚える力がすごかった。
貪欲な知識欲を埋めるのに
目の見えない彼は「耳」に頼らざるを得ず
そうするとどうしたって
他者の介在を必要としなくてはならない。
でも、対人関係はうまくないんだよなぁ。
2番目の奥さんが、唯一といっていいほど
保己一の特性をわかってたような気がする。
国文学の研究でもしないかぎり
今後も実際に『群書類従』を手に取ることは
ないと思うのですが(^◇^;)
後世の人間にとっては
よくやってくれた!って感謝しかないね。
Posted by ブクログ
塙保己一という人物にフォーカスし、その人生を見事に具現化した手腕は大した物だと思いました。ただ心に残る印象的なシーンは乏しかったように感じました。
Posted by ブクログ
群書類従を編纂した塙保己一の生涯を追いながら盲と目明きの視点で「見える」を描く。
うーん。ストーリーは面白いものであったと思うものの、独特の文体がどうも私には合わず。意図のわからない説明が最後の方で何を言わんとしてたか分かる、という構成が各章にあり、最終章がそれら全部をつなげるテーマになるような感じと思いましたが、各章それぞれずっと「それで、なんなの?」と思いながら読むことになり、そんなにストーリーに引き込まれませんでした。
そういう構成なのもあり、この章では娘の話、この章では妻の話、この章では、とそれぞれのエピソードはその時点ではさほどつながったものでもなく、あとから「ああ、あれが」となるのですが、一気読みできればそれもいいが、細切れに読んでいると「で、なに?」「前章のあれはなんだったわけ?」という感じで…
最終章の見せ場はすごいものがありましたが、とはいえ唐突すぎるようにも感じ、また「所詮は見えない」にしたってこれまでの保己一とあまりにも違う単なる盲の保己一との落差にちょっと戸惑ったりもしまして。
ただ、読み終えて思い返してみると、全般に置いて保己一のことをぜんぜん聖人としては描いていないところに気付かされます。読んでる間もずっとうっすら「なんか、盲なのに頑張っててすごいな視点で読もうとしても、頑固だったり図々しかったり勘違いして凹んでみたり我が強かったり、ちょっとやなやつだなあ」なんて思っていました。おそらくそれは意図的なもので、読者(=目明き)に対して、「どうだ、お前らも盲のことなんぞ何も見えちゃいないんだ、盲なのに立派なもんだと思い込んでいやがる」という輝明の感覚を追体験させたのではないかな、といったことを思いました。合ってるかは知らないけど。