あらすじ
江戸時代、国内最大の叢書『群書類従』の編纂に生涯を懸けた、全盲の学者・塙保己一。盲人とは思えぬ前代未聞の偉業の傍らに常にあったのは、目明き――妻、学者仲間、門弟らとの、すれ違いだった。 “天才・塙保己一”の目に映っていたのは、絶望か希望か、それとも――。「あのお方は、我々には見えぬものまで見えているのさ」
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
すごい小説と出会ってしまった。
読み終えても、すぐには言葉にならないくらい。でもとりあえずメモしておこう。
まず驚かされるのが、盲目の人そのものの描写、文章の表現だ。この文体、表現力。目が見える自分には理解できないような感覚を覚える。入りから衝撃的。
盲人にとって、「見える」とは、「見えざる」とは、どういうことなのか、常人に見えているはずのものが、見えていないのはもちんのこと、他の人に見えないものが「見えて」いたりするのも盲人なのだ。
そして、「真実」か「嘘」なのか、どう見えるのか。そしてそれが、人によって様々に捉えられ、人生をも変えていく。
塙保己一の生き方や業績を辿るという筋立ての小説ではないが、それを知ることも有意義だと思うし、知れば驚きの偉業を目の当たりにする。
だがこの小説では、次々と現れる、または過去に登場した人物たちに見えているもの、見えなかったものに注目していなければならない。
それぞれの人物たちは、善人も悪人も、その生き様が、テーマに沿って計算され、描かれている。そして、意外な方向へと人生を進めていく。
あちこちに細やかな伏線が張り巡らされており、一概に物語のあらすじさえ語れない。ところどころに表れる言葉も考えなければ前に進めない。舞台から消えるもののいれば、最後まで居続けて仰天させる者もいる。
読み手の自分にも、通り一遍のものの見方など通用しないと、次々に覆してくる。それが心地よく、また衝撃的だった。
Posted by ブクログ
大作を読み終えた充実感が心地よく拡がる作品だった。
偉人、塙保己一の生涯の一端を、こうして小説で知ることになろうとは。
裏切りに遭いながら、そして盲目なこともあり不信のどん底に突き落とされながらも、学を一心に求め、そして極めた生き様に頭が下がる。
天才には天才の苦悩があるのだろうが、その周囲の人間もまた大いに苦労があるのだろう。
それにしてもあのような結末は想定していなかったので、得した気持ちになってしまった。
Posted by ブクログ
力作。
山本周五郎賞、受賞すると思う。
最近感じてることとゴールが一致してた。30歳も違うのに、著者はすごい。
最初の20頁で惹き込まれてしまい、延滞してちゃいけないから、買おうと思ったのに、買いに行く時間も惜しくて読み切った。
Posted by ブクログ
塙保己一という偉人を寡聞にして知らなかったので江戸時代にこんな人が居たんだなぁ、ヘレン・ケラーも尊敬する人?この人が居なければいまの昔話はなかったかもしれない……なんて見たら読むしかない。
しかも発売日にオーディブルでも配信されていた。著者の蝉谷さんの希望らしい。保己一同様話を聞いていくことを体験することになるんだからとオーディブルで聞いた。
物語は等身大というか、保己一の一生に関わった人達からの視点も描いていて、仕事に人間関係に四苦八苦している様子が可笑しい悲しい。
最後の保己一とてるあきのやり取りに感動した。保己一はずっと自分であん摩は下手くそだと言っていたのに、それは学問をしたくてわざと下手にしていると勘違いし、そうあって欲しいという願望の押し付けだったことがわかるし、あまつさえ手前勝手な願望で感動していたり、自分の子供にさえ急に飛びついて来られるのに心底驚いていたり。
彼が後世に残した偉業を小説内ではほとんど書いてなくて、読み終わってから少し調べただけでめっちゃびっくりするくらいすごいことをしていたって分かる。
Posted by ブクログ
史実を時系列でなぞる事よりも、普遍的な人間の在りように主眼が置かれているので、佇まいは歴史小説というよりも時代小説の方が近く、塙保己一でなくとも物語が成立し得るのではないかという部分は多少気になりましたが、見えるもの見えないもの、視たいもの視たくないもの、人が目や意識を通して他者との間に作り上げるそれら歪な像の存在を全盲者と晴眼者の隔てなく描いているという点に於いて、本当に誠実な小説だと思いました。
Posted by ブクログ
穏やかな話なので綺麗に終わるかと思いきや!最後の最後でそんな伏線の回収ありっ?!ととても驚かされた
やっぱり目の見えない人には共感しづらく、途中で閉じようかとも思ったけど、結果的に我慢して最後まで読んだ甲斐があった
江戸時代の社会福祉に対する理解の深さにも驚いた!日本人って本当に素晴らしいし、今の私達も身につまされる
あのヘレン・ケラーが保己一を尊敬していたらしいけどどこでどうやってその偉業が耳に届いたのか気になる
実在の人物のはずなのに、ちょっと調べたらすごい人だってわかるのに、今まで知らなかったのがちょっとショックです
この本をきっかけにもっと注目されてほしい