あらすじ
江戸時代、国内最大の叢書『群書類従』の編纂に生涯を懸けた、全盲の学者・塙保己一。盲人とは思えぬ前代未聞の偉業の傍らに常にあったのは、目明き――妻、学者仲間、門弟らとの、すれ違いだった。 “天才・塙保己一”の目に映っていたのは、絶望か希望か、それとも――。「あのお方は、我々には見えぬものまで見えているのさ」
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Posted by ブクログ
時代小説と言われあまり読んだことの無いジャンルだなぁと思いつつ読んでみたけれど、読みやすかったです!
面白かったな〜
今まさに叫ばれている「差別と区別のちがい」「平等とは」を痛いほど思い知らされた。
序盤のお母さんとの関係では私も子どもがいるので、自分の子どもに「絶対によくなるから」「治るから」と言って必死になりそうと苦しくなる。見えなくても貴方は貴方よ、と安心させてあげられるか…と思うと、保己一のお母さんの気持ち良くわかるし、でも保己一のお母さんは立派だと尊敬する気持ちもめちゃくちゃあります。お父さんのことは保己一からはあまり語られない。でもお父さんも、保己一を凄く支えた一人だった。お父さんとの関係があるおかげで保己一も他の目の見えぬ人たちと違う道に行けたように思う。最後の方であの時の商人と会えたのは胸が熱くなった。
中盤で目の見えぬ人たちと仲間になるも浮いてしまう、同じ目の見えぬ人たちとはいえ一人ひとり違う人間、合う合わないはあるんだよと思う。ラベリングといったところか。保己一自身も他の人とは違う!目が見える人たちと同等だ!と苦しむわけだけれど、だからと言ってやはり同じ境遇で分かることもある。のちにまた出てきたときの有一のこととかも良くわかるな〜と思ってしまう。
見てる視点が違うだけでこうも違ってくるのだなと驚き。それが顕著になったのは、やはりお丁とのこと。絶対に仕えてる奴と不倫してるだろと思ったら案の定だったけれど、女の方からしたらそう感じることもあるのだなぁとその心の機微に一喜一憂してしまう。それから娘の方も成長がある。新しい奥さまの考え方も凄い偉いし、妾の気持ちも分かる。熊太郎を跡継ぎにさせなかったことも、家を出てからちゃんと幸せに暮らしているというんだから最初から次男と比べるようなやり方や伝え方じゃなく「お前はお前のやりたいことをやっていいんだよ」の精神で接していたからこそ捻くれずに育ったんじゃないかなぁと思ってしまう。保己一がやりたいことを好き勝手やってるんだから、それを見たら分かってしまうだけなのかもだけど(笑)
金十郎さんとはどうなったのかな〜、最後まで弟子として一緒にいるし元旦那という立場は変わってなかったけれど、よりを戻してても良かったのになぁ〜!違う人と結婚しちゃったのかな〜!と史実を調べたくなります。
そして終盤の、てるちゃんとの会話。
泣きました。てるちゃん。タイトル回収なんかもうアツい。
納得の面白さでした。
乱文失礼しました
Posted by ブクログ
⭐️5+
江戸時代の偉人 塙保己一の生涯
幼くして失明し、武蔵の国から江戸に出て、学問で身を立てた保己一
盲の世界で既存の階段を登りつつ、誰も歩んだことのない道を開く
江戸時代の世相や風俗が沢山描かれていて興味深かった
人は何を見て何が見えないのか
示唆に富む作品でした
Posted by ブクログ
もともとはダヴィンチ・プラチナ本から。その後、書評での賛辞も複数見たし、否が応でも期待が高まっていたもの。奇しくも直木賞発表のタイミングで読むことになり、『これはもう、本作が取っちゃうでしょ』と確信的に思ったけど、なんと、受賞ならずでした…。さておき、それで本作の素晴らしさが減じる訳もなく、前に読んだ著者の作品より格段にリーダビリティも高く、これからのご活躍にも期待が持てようというもの。見えない保己一と周りの温度差も、視点人物の変更で適宜描かれていくんだけど、その濃淡の書き分けがまた秀逸で、同情一辺倒に陥りがちなところを、そうしていないのもお見事。凄い作品だな。
Posted by ブクログ
直木賞受賞は逃しましたが、今回の直木賞ノミネート作品群の中でわたしの最推し、ほんとうにおもしろかった。言葉にある熱の温度を確かめながら読み進めてしまう、言葉に熱のある作品はそうない、本当に素晴らしい
盲だからこその感覚の表現が心地よい。文体も美しゅう。
しかし彼の人生に美しさはほとんどなく、第4章 版木・半疑(この言葉遊び的章題も美しいが)なんてずっと揺さぶられる。
目明きも盲も正しく見えるものなんてこの世に何一つありゃしねえ。どちらであっても何一つ見えちゃいねえのさ。
Posted by ブクログ
かなり面白かったです。二回読んで二度楽しめました。私のハイライトは、保己一が「たしかに美しいな」と静かに言ったところ。とせ子、金十郎、保己一はみんな同じものについて言っていない、三人はズレているはずなのに、うまいこと収斂して収まる。収めるためにそれぞれ変化していく過程があり、それが丁寧に書かれていて本当に面白かった。だからこそもう一度読み返しました。お丁と葉次郎と保己一のトリオもめちゃめちゃよかった。こちらも絶妙に三者すれ違うんだけど、かんざしが最高にかっこいい。最後まで「違うこと」を扱っているのだけど、こんなに巧みに美しく物語に落とし込む著者すごいです。
追記:
直木賞受賞ならずとのことで驚いております。巧み過ぎた?綺麗にまとまり過ぎたのでしょうか…。物語の世界はこんなにも豊かなんですね。読者にとっては幸せなことです。
Posted by ブクログ
著者の作品を読むのは『化け物心中』『おんなの女房』に続いて3作目だが、本作はこれら過去作を大きく上回る、掛け値なしの傑作だ。
江戸時代に実在した全盲の国学者・塙保己一を主人公に据えた作品で、目が見えないことで視覚以外の感覚が研ぎ澄まされて天才への階段を登っていった、といった分かりやすいサクセスストーリーを前面に押し出さなかった点にまず好感を持った。そのうえで「見えない」ことによって引き起こされる周囲の人間との軋轢・勘違い・ズレがとても面白く、不謹慎ながら第三章以降では何度も笑ってしまった。
主人公を聖人化せず、俗人的な部分にフォーカスを当てたうえで、普通の人間としての主人公の魅力を存分に味わうことができた点も素晴らしいし、ミステリの仕掛けのように各章の核となる出来事を表裏それぞれの視点で描いているあたりも、物語に深みと奥行きをもたらしていて良かったと思う。
文章について、過去作は読みごたえはあったものの、読み解くために必要な想像力が自分のキャパ以上に要求されている感じがしていて、実は少し苦手意識を持っていたのだけど、本作に関してはどういうわけか非常に読みやすくなっていて驚いた。
単なる作品との相性なのか、慣れただけなのかもしれないけど、失礼ながら『化け物心中』を最初読んだ時は、ニッチな読者は付くかもだけどメジャー級になるのは難しいかな、と考えていたので、短期間でまさかここまでリーダビリティの高い作品を書くようになるとは思わなかった。蝉谷さん、過小評価しちゃってごめんなさい。これからも付いていくので許して!
Posted by ブクログ
盲目でありながら苦労して、学問で身を立てた人の成功譚…という単純なものではなく。
見えないけれど察せる心眼があるばかりに必要以上に崇められたり、でも結局は見えないから機微が感じられなくて自分の価値観だけで人を苦しめたり。
特別扱いはされたくないけど、認めてほしい。
いろんな葛藤が渦巻いていて、結局は見えようが見えまいが、人を察するのは不可能に近いという。
良かれと思うことが、他方にとっては騙されたと感じたり、迷惑だったり。いつの世もそうですよね。
聖人からたまーに漏れ出る本音が、よかった!
そして、「見えない」を使ってたまに純真無垢な感じになるところが、若干あざとくて面白い。
初読の作家さんだったのですが、読ませますね⭐︎
面白かったです!
この本も、少し寝かせて再度したい深い本でした。
Posted by ブクログ
こういう時に書ける言葉を持っていない。
\わぁぁぁぁぁー!!/感震
と、Clickしたら音声でそのまま、
聴こえるならば少しは伝わるだろうか?
◇◇◇◇◇◇
【タイトル】見えるか保己一
【 著者 】蝉谷めぐ実
【 出版社 】角川書店
◇◇◇◇◇◇
読み終わって、精神消耗が激しかった。
どっと、疲れたというか、走りきった後のもう無理。って倒れ込む感覚と爽快感。
言葉を選ばず言うなら、
『すげぇーーーっ!!』
と、鳥肌たち、心臓というか胸のあたりというかが痺れる感じで満たされる。
◇◇◇◇◇◇
一人の人の人生を
同じ強度で歩んできた。
痛みも、
当人から見えぬ裏の歪みも、
一緒くたにくらって。
それでも、
その生き様が静かに熱くて、
目の前が真っ赤に染まった。
◇◇◇◇◇◇
記したい言葉、
話したい部分はあるけれど、
まだ読んでない方も多いだろうから、
今は口を秘しておこうと思う。
◇◇◇◇◇◇
これは、保己一の人生だから。
最初から最後まで読み通して、
同じように生きて、
感じてほしい。
それだけ重たくて厚い必読すべき『人間』の物語です。
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辰之助の目が悪いのなんて、や次郎の背が低いのと茂吉の手先がぶきっちょうなのと、なんも変わりゃあしねえのさ
蚕の糞ほど小さくて、悪意ともいえぬほどの何か
目が見えぬのは足が遅いのと同じこと
私はあなたのそばに少しでも近づきたくなってしまった
この世には言葉に一つも必要としない繋がりというものがあるのでございます
この世にあるものはすべて目に見えぬものこそ、言葉にできぬものこそ素晴らしいのございます
風が吹き続けてその先にある、己が繋いだ未来が、見えるか保己一
正しく見えるものなんてこの世に何一つありゃしねえんだよ!
目明きも盲も一緒さ。どちらであっても何一つ見えちゃいねぇのさ
だけどときには好きに見させてやってくれ。それで救われる者だっている。
Posted by ブクログ
この手の話って、聖人君子のように描かれがちだけど、そうでない場面もしっかりあるのがよい。前半は保己一の語り、中盤はとせ子。ラストは輝ちゃん。
保己一は学者としては素晴らしいけど、私生活では周りの女の人を一切幸せにしないタイプよね。お丁の愛憎がほんとに痛々しくって。とせ子は、その後どうなったんだろうか、とか。イヨもそう。
金十郎は…なんだかんだで信を得たのかね。
Posted by ブクログ
偉人伝のような、歴史ミステリーのようなお話でした。各章のタイトルに2つ意味がある(橋と箸みたいに)のも、見える見えないの2面性という意味なのかなーと思った
Posted by ブクログ
秀逸!見えることと見えないことの行ったり来たりをぐるぐるめぐる螺旋に放り込まれたかのよう。全体を貫く独特な調子、一概に心地よいとも言えないんだけどなんだか心を掴まれて離れがたい。蔦重のドラマにもあった検校周りの制度や粋な江戸文化、洗練された学問などの時代背景も丁寧に描かれる。最終章、圧巻!見えていたもの、見えてなかったもの、人生の終盤に明らかになるもの、隠し通すもの、もうミステリーと言ってもいいぐらいにスリリングで全てがひっくり返るほどの衝撃で、でもそれを収束させるラストがまたあたたかくて。盲と目明き、心にしろ目にしろどちらも本当のところは見えてない。それなら人は何を信じて生きていけばいいのか。幼馴染が悔し紛れにヤケクソで放った一言がずっと保己一を支えたように、信じたいものを信じる自分自身を信じて生きていけばいいのだ。障害を乗り越えて大きな功績を残した盲の賢人と彼をめぐる周囲の人たちとの葛藤や絆…といった聞こえのいいありきたりな物語にとどまらずに、見えない者と見える者、見えない物と見える物をこれでもかと描き尽くした力作、これはもう受賞だろう…
Posted by ブクログ
凄いものを読んだ。フィクションだと思い込んで読み始めた。実在の人だったとは。
途中、語り手が代わり、違った視点から見ることになる。悪意があると思った人の心情が分かったりする。結局みんな、お優しい。幼なじみも最後はお優しい。
考えたのは、障害を得るということ。見世物小屋に立ったり、検校に入門したり、お福さまになったり生きる道はあるけれど。カタワだからといって人として劣っているわけではない。障害者にも、明るい人、僻みっぽい人、大胆な人、ビビリ、思いやりのある人、いろいろいる。白そこひなど今では手術で治っちまう。昔は障害でも今は違う。
保己一は目暗だけれども偉くなった。目明でも偉くなったろう。なら、障害は成功することに関係あったろうか。見えていたらもっと何かを成し遂げたのだろうか。
多分。一度聞いて覚えちゃうなんて、アスペルガーだったんだろうな。そして、空気が読めない。だから素直だよね。
ホキイチ凄いよ。
Posted by ブクログ
最初の数ページで保己一のお母さんを思い涙が止まらず、その後も何度かぐすぐすしながら読み進め、最後の章は嗚咽しながら泣き崩れたい衝動にかられた。
一番刺さったのは「今更見えてたまるかよ!」の台詞。
保己一を始め全盲の人達は「目が見えたら色んなことがわかるだろう」と考え、晴眼者は「全盲の人は見えないからこそ私たちには見えない何かがわかるのだろう」と考える。
でも心は誰にも見えないんですよね、目が見えようが見えまいが。
勝手に期待して勝手に裏切られたような気になったりするのも人間あるあるだし。
そこが目の見える人と見えない人の話になることで、こんなにもこんがらがってしまうものなんだなあ、上手いなあ〜と思って読みました。
保己一が名を残したのは、血の滲むような努力と学問に対する熱意があったからなんでしょう。
全盲だったからでも、聖人だったからでもない。
架空の人物輝ちゃんがなかなかのスパイス(というには刺激が強いが)になっていて全体に深みを加えてくれていて、読み応えありました。
直木賞獲ってほしい。
Posted by ブクログ
群書類従の塙保己一の一代記。ちょうど検校について大河ドラマ「べらぼう」で学んだところだったので、わかりやすかった。そして面白かった!!さすが第39回山本周五郎賞!
最後、目あきでもわかる血の匂いがわからなかったのは、作者の意地悪か、保己一が目あき以上に鼻が効かなくなっていたのか。あと一回出た臓腑は筋弛緩剤使わないと腹腔内には戻らないです。とは言っておきたい。
辰之助は飛蚊症のような状態からだんだん見えないところが増えて行った。母は嘆き悲しみ、隣村の医師のところに処方してもらいに通うが、一向に良くならずに悪くなっていく。
目が見えなくなってから8年。辰之助は15歳になっていた。その間に母のきよはなくなった。江戸に行き、太平記を語る職につきたいと希望している。父親は一緒にいると見えているのか?と聞きたくなる時がある。
辰之助は千弥と名を替えている。あんまを生業としている。雨富検校の一座に入り、貸した金の取り立てなどもしている。あんまも鍼も三味も上手くないので、金の取り立てを任される。
学問をしたいと検校に訴えたら、按摩おわりに客が本を読み聞かせてくれるようになった。先輩たちには反感を持たれている。一度身を投げたが助かった。名前を保木野一と替える
あれからまた経って、塙保己一と名を改めている。大田南畝と懇意にしている。目あきの女房お丁を貰ったが、三ヶ月前から手を繋いでもらえない。簪をプレゼントしたがこんなものは要らないと言われてしまう。お丁さんは保己一の弟子の葉次郎と密通していたが、それは保己一に相手にされていないと思ったからだった。
お丁はおとせを産んで出て行った。おたせを後添えにもらう。群書類従を編纂している。家と蔵が燃えた。版木がだいぶ燃えた。おとせは金十郎と結婚するが離縁。寅は死に、妾が熊太郎と次郎を産む。
保己一の盲人としての苦しみや学者としての矜持、保己一の家族や門弟らの崇拝や劣等感等、複雑な感情が描かれます。他人を信じられなくなり血の繋がった家族だけを信じる保己一の姿が痛々しく感じられました。目が見えていても見えていなくても他者を理解するのは難しく、結局見たいものを見たいようにしか見ないのかなと思いました。
Posted by ブクログ
塙保己一という偉人を寡聞にして知らなかったので江戸時代にこんな人が居たんだなぁ、ヘレン・ケラーも尊敬する人?この人が居なければいまの昔話はなかったかもしれない……なんて見たら読むしかない。
しかも発売日にオーディブルでも配信されていた。著者の蝉谷さんがどうしてもと希望されたと記事で読みました。なるほど確かに!保己一同様話を聞くことを体験することになるんだからとオーディブルで聞きました。
人の話を聞き想像して、実際にはただの言葉なのにそれが人に見え、風景に見え、感情にも見える。この小説はほんとうに強い。
物語は等身大というか、保己一の一生に関わった人達からの視点も描いていて、仕事に人間関係に四苦八苦している様子が可笑しい悲しい。
最後の保己一とてるあきのやり取りに感動した。
保己一はずっとあん摩は下手くそだと言っていたのに、学問をしたくてわざと下手にしていると勘違いされ、そうあって欲しいという願望の押し付けでしかなかった。
あまつさえ手前勝手な願望で感動していたり、自分の子供にさえ急に飛びついて来られるのに心底驚いていたり。
彼が後世に残した偉業を小説内ではほとんど書いてなくて、読み終わってから少し調べただけでめっちゃびっくりするくらいすごいことをしていたって分かる。
Posted by ブクログ
見えない保己一のその「見えなさ」にフォーカスして物語を作る、その真正面からの描きように感動した。
評価が高いのも頷ける。
独特の語り口も新鮮だった。
最後の輝明との対決は、評価を分けるところなのではないかな?
わかりやすさという点ではこの結末は良かったのかもしれない。一気に謎が解けて、尚且つ、見えないことへの答えも出される。
腑に落ちてスッキリはしたのだけど、最後で謎解きしてしまう小説にしたのは、勿体無い気もするんだよね。
そいう意味では、朝倉かすみの「けんぐぁい」の方が、好みでした。
Posted by ブクログ
発売当初から話題になって、山本周五郎賞も受賞して、ずっと読みたかった1冊。
塙保己一という実在の人物をもとに、見えるとは何か、見えないとは何かを生涯をかけて考えさせられる。
正しく見えるものなんてこの世に何一つとしてない、だから目明きも盲も一緒で、どちらであっても何一つ見えちゃいない⋯ラストの幼なじみ、輝明の台詞。
時々「見える」人物の視点で描かれるも、特に前半は基本的に保己一の視点。つまり、周りの景色や人物描写もわからないまま、読者は読み進めることになる。その代わり、音や匂いの描写は頻繁に出てきて、保己一の世界を少しだけ体感できる。
見えないから、素直に情報を信じたこともあった。保己一視点から晴眼者視点に移って、もう一度同じシーンを繰り返すと、保己一が好意的に捉えていたことでも、相手には強い悪意があったことも。やがて、保己一も気づく事もあるが、あえて見えていないのだから傷つけないようにと嘘をついているケースもあって、いたたまれない。
ラストを含め、時折見せる人間臭さが、保己一をより魅力的にみせる。盲だからって、聖人君子のようではないんだぞ、と。
Posted by ブクログ
見えてほしいと願う親、盲なのに勘が悪いという兄弟子たち、見えないことへの考えの違いに胸が締め付けられた。
幼い頃を一緒に過ごして、家族や兄弟子ほど近くにいない幼なじみが、一番見えないことにこだわってないと思った。
Posted by ブクログ
読んでて、ふと、本のことを考えてしまいました。本って映像も音もない、頭の中で作り上げたストーリー。目が見えない、ってもしかしてそういうこと? 単なる盲目のハンデを背負った人が頑張ったという話ではなく、その周りの人の心の裏表、見える時と見えない時、見たい表と見ない裏、複雑。一筋縄ではない。冒頭から繋がって、でも裏表絡んで逆で、そして撚れてて。内容濃。
Posted by ブクログ
類稀な記憶力で、全盲でありながら国内有数の国学者となった塙保己一
見えていないはずなのに、何もかも見えているようだと賞賛、尊敬を集める
その輝かしい経歴の裏には、周囲の人たちとのすれ違いがあった
妻と一番弟子は駆け落ちし、学者仲間からも疎まれ、弟子を信頼することができなかった
最後は圧巻だった
塙保己一は、幼馴染に自分の本心を曝け出す
盲は見えないのだ、心眼なんかあるわけないのだと
それが真理なんだろう
Posted by ブクログ
「正しく見えるものなんてこの世に何一つとありゃしねえんだよ!」
ほんとにそうなのかもね。今、見えてる世界が本当なのか嘘なのか。
こんなにも人は分かり合えないものなのだろうか。言葉を尽くしても態度に表してみても見えないから伝わらないのか。こんなにもすれ違っているのはとても不憫に思える。知らぬが仏とは言うけれどお互いの真意が伝わらずに幸せな記憶のままでいられた方がいいのか。両方の言い分を知ってしまった読者としてはなんともやりきれない気分だ。
結局、人は孤独でひとりよがりで生きていくしかないのか。ちょっと寂しくなってしまった。
Posted by ブクログ
塙保己一という人物が実在した、この話が史実に基づくというのがただただ驚愕。
盲人だからこそ感じることができることもあれば、盲人だから晴眼者には簡単にわかることもわからない。必要以上に疑心暗鬼になったり、全く気付かぬままでやりすごせたり、要らぬ苦労や知らぬが仏、たくさんのすれ違いを神視点で俯瞰し読み進めていくと、やりきれない気持ちが募っていく。
他人のことも物事も、人間見たいようにしか見ない。誰でもそうであるように、それに苦しめられていた保己一自身もそうだった。
保己一は天才だが、決して超人ではなく、盲目に苦しめられ、助けられ、振り回されていた。
晴眼者に対し、他人に対し、深い隔たりと孤独を抱えていたが、それを救ってきたのもまた、他人を見たいようにしか見ないという人間の性を保己一も持っており、自分の見たい"輝ちゃん"が保己一を照らし続けていてくれたおかげだった。
Posted by ブクログ
第39回山本周五郎賞
日本の歴史・文化に関する膨大な文献集(群書類従)を編纂した全盲の国学者、塙保己一(はなわほきいち)の話。
類稀なる記憶力と情報処理能力があれば全盲でもこんな偉業を成し遂げられるのかと感心した。
小説ではそんなに好感がもてるキャラクターではないけど、たくさんの人が協力してくれて、慕われていたんだろうな。
歴史小説だけど時代は関係なく、全盲と見える人との間で起こるすれ違い、気遣い、困難などが読み取れた。
Posted by ブクログ
若くして盲目になった主人だが、秀でた記憶力を活かし江戸で学問を志す。
目明き、めしい双方で、見える/見えないことでどういったことが起きたかなどの人間模様が書かれる。
目が見えないことでどのようなことを感じ取れるようになるのかの描写が全般的に好み。
目が見えていようがいまいが、人間関係に至ってはそんなに見えない(変わらん)という話で締められている。
本書で興味が出て塙保己一という人物の実績を検索してみたが、これは怪物だった。
現代ならともかく、当時だったらどうやってそこまでの地位に上り詰められたのか想像もつかない。
当時だったらたぶんめくらと呼ばれていたと思うだが、残念ながら現代基準ではNGなので多分使われていなかったはず?
それなら目明きもまずい気もしないでもないが、そんな話をしてしまうとせっかくの物語が進まないななどと思った。
Posted by ブクログ
盲の孤独いかほどか。想像を絶するほど大きな目明きとの隔たりに悩み、葛藤して生きた塙保己一の生涯の物語。埼玉県の偉人として渋沢栄一、荻野吟子と並んで、その名前と盲であること、群書類従だけは知っていた。
見えない者だけが見えているものという、一見魔法のような、救いのような言葉は逆に保己一を苦しめた。飛び抜けて学があり、愛すべき家族があり、社会的に認められた人である。だが、どこまでいっても盲である。必ずどこかで支援が必要であり、その方法や程度も難しい。それを間違えると生活に支障をきたしたり、プライドを傷つけてしまったりする。ときには見える者の企みに翻弄され、騙され、見えない者からはその能力を妬まれる。見えない故の懐疑心や無力感、そして孤独。逆に、見えないから保っていられた憧れや愛もあった。彼の認識していることと事実は違ったかもしれないが、保己一にとっては紛れもない真実であった。ラストシーンには胸を打たれた。最後保己一は気づいていたのかな。
本書の参考文献にもある「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読んだことがある。その内容のほとんどを忘れてしまっているのだが、目の見えない人は目の見える人が思うよりも空間を把握している、という旨のことが書いてあったことはとても興味深かったため覚えている。
「できるorできない」と能力で捉えてしまうと、どうしてもできるを優、できないを劣と取ってしまいがちである。それだと、極端な考えになってしまうし、いつまで経っても本当の意味でインクルーシブな社会を作ることはできない。能力ではなく、感性や特徴として捉えることで初めて、一切の下心や憐れみ抜きで対等に関わることができるはずだ。視覚障害に関して言えば、見えない人にしか見ることのできない世界は面白いと思う。あとは、現代病であるスマホ依存症にはならないのだろうかとか。もしそうであるならスマホに対する最強の耐性を持つ数少ない貴重な意見の持ち主なのではないかとか。こういった興味や関心は、人を揶揄するようなものでは全くないし、単純な興味として共有し、議論されるべきだと思う。
これはあくまでも健常者である私個人の意見である。そんなの綺麗事だと言われればそれまでで、実際見えない人の意見はどうかわからない。ただ、同じ人間として興味があることを伝えたい。これは恋愛で人を好きになることや、共通の趣味を持った人と友人になりたいと思うことと何か違うだろうか。
Posted by ブクログ
山本周五郎賞
直木賞候補
前にトークショーで著者をお見かけし、気さくな人柄に好感を持った。
また、レビューがどれも高評価。
期待して読んだのだが、文体が私には合わなかった。直前に読んだ有吉佐和子の『出雲の阿国』、吉田修一の『国宝』、木内昇の『雪夢往来』は素直な文章でサクサク読めたのだが、一ひねりある文章とオノマトペの多用で好みではなかった。単に私に読む力がないだけなんだけど。
余談だが、誰かも言っていたが、日本史の教科書に塙保己一と書いてあっても、どこで切れるのかわからなかった。「はなわほ きいち?」「はなわ ほきいち?」と思っていた馬鹿な私だった。
見せ物小屋については、障がい者の生きる手だてという面があると何かで読んだこともある。盲人に対する手厚い保護につけあがる盲人たち、など考えさせられるところも多かった。
Posted by ブクログ
普段、目にしないようなオノマトペが多用され、盲が進む状態から始まったので、なかなか読むのが進まず、時間が掛かってしまった。主人公も天才であるが故か、独特な思考と行動だし、周辺の人達も主人公を助ける人は良いが、目が見えないことで欺こうとする人達が多く登場し、読んでいて苦しくなる。
最初の妻も外面は主人公を助ける良い妻を演じているものの、妻となった本音からして不純だし、結果的に大罪を犯したことを隠して去って行ってしまった。信を置いていた幼馴染自体が最期には、、、。
最後まで重く苦しい内容だった。