【感想・ネタバレ】戸籍の日本史(インターナショナル新書)のレビュー

あらすじ

古代律令制時代に生まれた戸籍はなぜ、何のために明治に甦ったのか? そしてその制度が21世紀の今日まで生き続けているのはいったいどういう理由なのか。
夫婦別姓問題、同性婚、このほか種々の国際化の「見えざる障壁」になっている、日本独自の国民管理制度を暴く。
「天皇には戸籍があるか」「江戸時代の戸籍制度は」など、戸籍をめぐる小ネタも満載!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戸籍の本質は、日本人であることの証明。日本は血統主義なので、親のいずれかが日本人であれば、どこで生まれても日本人として戸籍に入る。無国籍の日本人は出生届が出されていない人。親が日本人か、よりも戸籍の有無が重視されてしまう問題。日本人同士の結婚であれば、新しい戸籍が作られる。国際結婚の場合、夫婦の戸籍は作られない。しかし、外国人の相手の戸籍は作られない。
アメリカは出生地主義なので、不法に入国してもアメリカで生まれればアメリカ人。トランプ大統領が移民の排除に熱心な理由のひとつ。

古代日本にも戸籍制度はあったが、有名無実化していた。明治になって復活させた。明治4年壬申戸籍が編まれた。もともとは670年に庚午年籍、690年庚寅年籍が作られた。口分田を与えて、税を徴収するための名簿。税負担を逃れるために、出家して戸籍を脱するものが現れた。僧侶の公認制度のために授戒師を招聘した。鑑真和尚のこと。税を逃れるために、性別を偽ったり貴族に寄進するものが現れて公地公民は破綻して、戸籍も形骸化した。

明治政府の戸籍は、家長制度(戸主制度)を武家に習って設定した。明治民法には家族の規定があるが、今の民法にはない。一緒に住んでいても戸主が認めたもの以外は家族ではない。一緒に住んでいなくても家族になれる。戸籍とは家のこと。婚姻によって家に入る、は戸籍に入るのこと。子ハ父ノ家ニ入ル、は子供は父の戸籍に入る、という意味。戸主とは家=戸籍における天皇。
イエとは、イヘ、のこと。ヘとはへっつい(竈)のこと。同じ釜の飯を食うのが家。使用人も同じ釜の飯を食うが、明治民法では家族ではない。
民法にはフランスのナポレオン民法をお手本にしたボアソナード民法が作られたが、個人主義的との批判があり、民法典論争で御蔵入りになった。明治民法と同時に戸籍法が改定された。紙の上では大家族。弟も残っていれば一緒の戸籍に入る。武家社会の慣習と同じ体裁を整えた。

律令制では、隠居年齢は70歳。明治民法では60歳から。個人の意志プラス裁判所の許可が必要。女戸主は許可は不要。応急的な措置に過ぎないから。

家の存続のために婿取りをする風習は世界で稀。
中国、朝鮮では、血統を重んじる。姓は血筋を表すもの。古来より夫婦別姓が基本。同姓の結婚もできない。朝鮮では、姓の数が少ないので、同姓本貫(出身地)が同じだと結婚できない。韓国では2008年に家単位の戸籍が廃止。個人単位の家族関係登録制度になった。

日本も明治の苗字の義務化のときは、夫婦別姓が原則だった。明治民法で夫婦同姓になった。
日本は、儒教精神を曲げてでも、家の存続に意義を見出した。

阿Q正伝でも、血統が途絶えて子孫から供養されないことを恐れた。
妾は明治維新後も残った。妾は妻と同じ2親等。不平等条約の改正に生涯となって、1880年刑法で妾が削除。明治民法で廃止、一夫一婦制が確立。

宗門別人別帳は江戸時代の戸籍。秀吉の太閤検地から始まる家数人数帳が始まり。課税台帳の役割。江戸時代の寺請制度で宗門改のもととなったのが、宗門別人別帳。毎年作成された。武士は分限帳、僧尼や神官も別のもの。人別帳から漏れているものは無宿、木枯し紋次郎。勘当が主な要因。
札付きの語源=勘当されそうな物を人別帳上で札を付けておいたことから。
長谷川平蔵野作った人足寄場は、無宿でも前科者でも、手に職を持てば生きていける、ことを実現する場。
佐渡送りは、死刑宣告に近い。原則無期。出るのは金より人の首のほうが多い、と言われた。

壬申戸籍(明治4年)で、戸籍に記載があるものが日本国民となった。血統主義でなく居住地主義。そこでアイヌと琉球をどうするかが問題になった。
北海道屯田兵として家族を含めて4万人を送り、北海道を本籍と定めさせた。この結果北海道が日本になった。アイヌには苗字がなかったが、アイヌ向け創氏政策でロシア風の名前を変えさせた。ロシアからロシア国民との主張をされないように。
琉球は中国への朝貢国だった。苗字は地名を表すもので移動すれば変わった。それを変えた。
小笠原は、定住者がいなかったが、捕鯨ブームで1830年に西欧人など20数名が移住。それを戸籍を作って日本人として日本の村をつくった。戸籍を作ることで帰化させた。

戸籍は徴兵のためのもの。徴兵告諭には血税と書かれていて、各地で血税一揆がおきた。
徴兵は国民皆兵wぽ原則としたが、戸主、長男、養子、家産家業の管理者は兵役を免除。養子になって徴兵を忌避することを徴兵養子という。立憲政友会総裁の鈴木キサブローは、徴兵逃れのためもあり、鈴木家へ養子になった。高村光雲(高村光太郎の父)も高村家へ養子にいった。
北海道、沖縄に本籍を移すことも徴兵逃れ。夏目漱石は25歳のとき、岩内郡に転籍。
失踪宣告制度も徴兵逃れに利用された。死亡診断書を偽造してニセの死亡届を出す者もいた。戸籍から抹消されても、生きていけた。
除籍簿があるおかげで、明治時代までは家系図を作ることができる。
国勢調査は、戸籍制度の欠陥を埋めるために行われた。
戸籍はどこにおいてもいい。日本人が最も多いのは皇居(千代田区千代田1番)。日本の領土ならどこにでも戸籍は置ける。歯舞諸島、北方四島、尖閣諸島、竹島などに本籍を置いている人もいる。領土関係で対外的主張の根拠となっている。

戦前の無国籍問題。資本主義の発展で東京大阪に人口移動がおきた=日雇い労働者、浮浪者の流入でスラム街が発生、無戸籍の人が集中。住民票制度がなかったため、戸籍がないと年齢を証明できない。
方面委員=戦後は民生委員に変更、が戸籍整理を担当。
一家揃って無戸籍でも、近隣扶助があれば問題なく生きていけた。
サンガ(山窖)の民=戸籍がない漂泊集団も存在したが、国勢調査で戸籍を申告させた。

族称=華族、士族、平民の3つにわけた。壬申戸籍には、職業、前科、檀那寺も記載されていた。元穢多、元非人、新平民なども記載された。警察行政のため。
これらが公開されていたため、犯罪調査、探偵興信所による身元調査に使われた。1968年まで公開。それ以降もなりすましや、職務上請求書などで公開させることはできたが、2008年改正で制限が厳しくなった。
婚外子差別は21世紀まで。明治民法では婚外子は認知されても戸主の許可がなければ、父親の戸籍に入れない。婚外子は私生子男、と記載された。
犬神家の一族では、3姉妹はいずれも庶子女と記載されていた。横溝正史は、家族の複雑さを経験していた。

新たに日本の領土となった台湾、朝鮮の問題が生まれた。
台湾は2年以内に退去しない場合は日本臣民となるとされた。ただし漢族のみ。それ以前の部族は番人と総称。国籍日強制の原則=国籍選択条項を設けることが通例。
朝鮮では国籍法が施行されなかった。満州にもたくさんの朝鮮人がいた。中国に帰化してしまえば、取り締まれない。朝鮮人の保護のため、という理由で派兵できる。

旧慣習を尊重するために異なる法律体系を用意せざるを得ず、そのため、外地、異法地域という区別ができた。
慣習をもとに朝鮮戸籍をつくった。
樺太は内地の戸籍法が施行されてない知人になった。アイヌは1933年から戸籍法が適用された。
台湾には戸籍制度がなく、結婚などで手続きが煩雑。内縁が増える原因。内地延長主義で台湾戸籍が作られた。種族、前科、アヘンの吸引歴なども記載された。

帝国臣民の中は、内地人、朝鮮人、台湾人の区別ができた。兵役は外地人は対象外。忠誠心が期待できない。最終的には招集されたが軍属として徴収された。武器をもたせることに危惧があったのだろう。その代わり参政権が制限選挙で与えられた。

創氏改名は強制だったか。届け出までは設定創氏、届出後は強制的に従来の姓を氏とした。法定創氏と呼ばれる。
近代国家は国民が存在しなければその体をなさない。
国籍法は満洲国になかった。
日本の国籍法は、帰化したものは日本国籍を失う=満洲国に移住したものを満州国民とすると、日本国籍を失う。
国籍法がなくても、建国宣言で慣習法として扱うこととした。そのかわりに民籍法を定め、徴兵の導入をした。大多数90%は漢民族。

戸籍は多数が戦災で消失。本人の申し出で再編された。特に東京の戸籍。なりすまし事件も起きた。松本清張『砂の器』はその例。
家制度は戦争で機能不全になり、御家断絶が激増。
日本国憲法で夫婦が平等となり、民法改正の前に、「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」ができた。家制度が廃止。
p221

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2026年01月07日

Posted by ブクログ

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<目次>
第1章  「日本人」としての証明書
第2章  「古代の制度」がなぜ復活したか
第3章  明治国家が作り出した「家制度」
第4章  戸主という名の「君主」
第5章  「婿」と「妾」の国・日本
第6章  創り出された「日本人」
第7章  早くも現れた「限界」
第8章  戦前の「無国籍」問題
9章  差別の温床として
第10章  「大日本帝国」の戸籍~朝鮮、台湾、そして満洲
第11章  国破れて「家」あり
第12章  「日本人」の再編
第13章  天皇に戸籍はあるか
第14章  『サザエさん』に見る戦後の「家」
終章  戸籍がなくても生きていける

<内容>
戸籍をめぐる近代の歴史の本。こういう視点は歴史学にはないよね。著者は政治学者。日本史と歌いながら、古代から中世はちょっとだけ(最も中世に戸籍的発想はない。みんな自力救済)。近代以降の戸籍および「家」の追究。「家制度」が壊れている中、この本を読んでも保守陣営はなぜこだわるのかわからない。著者は、「家制度」はもう終ったから、夫婦別姓などを柔らかくと考えるべき、言っているが…。

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2025年11月08日

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