【感想・ネタバレ】グロリアソサエテのレビュー

あらすじ

大正十三年、宗教哲学者の柳宗悦が住む京都の家で女中奉公をはじめた少女サチ。ある日、河井寛次郎という陶芸家が柳家に来訪する。英国帰りの陶芸家・濱田庄司も同席し、男たちはすぐに意気投合した。彼らは共に小道具市を巡り、「下手物」すなわち日用の品に自由な美を見出し、それらを「民藝」と名付けた。薄汚れた古布や、埃にまみれた陶磁器に感嘆し、その美を世に提唱する三人の姿に驚かされるサチ。佳き品々に満ちた柳家での暮らしと、美を愛する人々との出会いを経て、彼女自身もやがて「民藝」に魅せられていく。百年前の京都で、新たな美「民藝」の世界を切り開いた人々の情熱と輝きの日々を描く歴史長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

とてもよかった。私の身体や心によい小説。
もういちどはじめから読みたいと思う小説はほぼないけど、これはもう一度読みたい。

輝ける仲間たち、前から好きだったが、ますます好きになれた。
鮮やかにつぶさに情景がうかぶ。
朝市で「いいね」と目を輝かせる人々と後に続く大蔵大臣。
ねえやの目を通して、その時代の新しい価値観が生まれる瞬間を味わえた。
「グロリアソサエテは三人だけじゃない。奥様、家族、そしてたくさんのひとの心が光を放っている。」と沖縄で思うねえやの佇まいもとても美しい。

10年も前になるが、壷屋で自分で探して買い求めた小皿たちがある。毎日使いながら日々の暮らしの中に用の美を感じられて豊かだな。今の時代まで残ってくれていてありがたい。

民藝には
その工芸品そのものの良さだけでなく、日常の丁寧な営みを尊ぶこころも含んでいるのだな。
だから、好きなのだな。私は。

小説を通じて、ずっと流れる風は、人に対してもモノに対しても生活そのもに対してもきちんと向き合って気配る清々しいもの。お金や欲や出自や何やらやたくさんのわずらわしさの間にも、こうあろうとする姿勢、それは美しいもの。そこに民藝はスポットライトをあてたのだな。

自分が何故民藝に惹かれるのか、前より少しわかった気がする。

また、読む。
ずっといきたいと思っている河井寛次郎記念館にも必ず行く。

P.s.
沖縄の気風のこと
征服された国の宿命
世界が隔てられないための同化、、、
美しいものが光れば光るほどそれを容赦なく奪い壊していたある時代の日本のことも重く感じた。

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2026年07月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

民藝の世界になぜこんなにも惹かれるのか、この小説を読んでほんの少しわかったような気がしてくる
錚々たる面々が生きて、会話している!3人はこんな関係だったのか、大原孫三郎もここでこんなふうに絡み、志賀直哉!棟方志功まで登場する

河井寛次郎記念館を数年前に訪ねて感動し、何枚も写真に収めてきた、その写真を眺めながらサチが訪問した夏の様子を思い浮かべながら読んだ

そしてなんと言っても幸太郎との淡い淡い恋

串団子のくだりで泣かされ、どうかどうか結ばれてほしいと願いながら読み、結末に安堵した。

それにしても兼子さんの魅力といったらとてつもない。映像化するなら宮沢りえ一択(笑)
この人のセリフで感極まった
「ごまかさないで生きるのよ」
朝井まかてさん、参りました!の瞬間

サチが立派な芭蕉布の職人になり、幸太郎と幸せに暮らしながら民藝の人たちと関わっていくフィクションも書いてほしいと思わされる作品でした

心打たれたぜ

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2026年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大正末期、民藝運動の提唱者である柳宗悦の京都宅で女中奉公するサチの目線から民藝運動や女性立身を描いた物語。

面白かったー!これまで「民藝」という言葉を意識したこともなく、「白樺派」も教科書に出てたかも…程度の知識しかなく。骨董やアンティークは詳しくはないけど好きで、お手頃なもので気に入ったら買ったりもするぐらいで。
柳宗悦のことも知らず、オシャレなキッチン用品で有名な(?)柳宗理のお父様なんだー!という軽い気持ちで読みました。

大正末期の暮らしが色鮮やかに目に浮かんで、慣れ親しんだ近所の風景も季節の行事も、時を越えて旅をしているようにワクワクしました。

女中さんがいるような家の奥さまなんて大層優雅な暮らしかと思いきや、奥さまで声楽家でもある兼子は家事育児に加えて自ら稼いで家計を預かって……。この時代の女性の不自由さも強さも、しなやかさも逞しさも感じて本当に尊敬しました。今わたしたちが選べる生き方は、先人が切り開いてくれた道の先にあるのだなと改めて感じました。

そして少しだけ、琉球王国をはじめ他国に征服されてしまって失われた文化にも思いを馳せました。大国に挟まれつつ独自のしなやかさと高度な政治力で長らく繁栄した琉球王国の文化や思想はとても興味深くて、色々な本でしか知らないながら失われないでいて欲しいと思っています。琉球王国に限らず、そこに生きる民衆の暮らしに寄り添うものを“美しいもの”と肯定する「民藝」という言葉を確立させた柳宗悦にも感謝を。

別の作品も読んでみたいし、原田マハさんも同時代の民藝に関わる人物の話を出版されているようなので、そちらも是非読みたいなと思っています。



*以下本文から引用*

工藝の美は親しさの美であり潤ひの美である。

美が自然から発する時、美が民衆に交る時、そうしてそれが日常の友となる時、それを正しい時代であると誰が云ひ得ないであらう。私達は過去に於てそれがあった事を示し、未来に於てもあり得べき事を示す為に、此『日本民藝美術館』の仕事を出発させる。

「彼らの歩く道は我執を捨て去る道だ。個性を沈黙させる道だ。なればこそ自然で自由な美が生まれる」
その道はいかほど険しいのだろう。たとえ強固な信念や天性の陽気さがあろうとも、同伴者があろうとも、道を歩くのは己の足。いかほど孤独であろうとも。

「書物の題。民藝の道ではなく、工藝の道となさったのですね」
「そうだ。Fine Artと呼ばれる美術に対する工藝、Craftだよ」

「Fine Art。美術は実用から離れているがゆえに純粋。そう賛美されてきたのだよ。かたや工芸は実際の使用に即しているがゆえに、二段も三段も下に置かれてきた。工芸の美は純粋でなはなく、応用に過ぎないとね。しかもあの文芸復興期には個人主義が勃興した。美は個性が発露されてこそ美である。それは誤りではない。個の表現も一つの美ではあるが、すべてではない。だが今日まで、美の基準は美術からのみ論じられてきた。今日の美学はほとんどまったく、美術の上に構築された論だ」

「だがね、ルネサンス以前に遡ってみれば、個性なんぞどこにも跋扈していない。かつての美はどこまでも実用だ。だからゴシック時代には驚嘆すべき秩序の美があった。正しい伝統の守られ方があった。その意味においては、絵画も彫刻も美術というよりは工芸なんだ。単独で辺りを睥睨したがる個性ではなく、建築物に共鳴し、調和する一部だったのだよ」

「六朝や推古の仏教藝術もしかりだ。今、途方もない値で取引される大名物の茶碗や茶匙を、初期の茶人たちは日常の雑器として親しんだ。陋屋に炉を切り、松籟を聴きながら茶を点てた。身近な素材の、簡素な器でね。ゆえに彼らは宇宙の一部たる己を感じ取ることができたのだ。すべての一部はすなわち、すべてである」

「工藝は現実に交われば交わるほどに、親しめば親しむほどに美しい」

「子供が最初に出会う理不尽が父親なのよ。いずれ世に出たら必ず出会う理不尽、不条理。その最初の壁なの。(中略) もしパパが壁でなかったら、ママがその壁になっていたわ。自ら進んでね」

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2026年08月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回は、民藝という運動が多くの芸術家と関わっているためだろうか、経緯を登場人物の台詞で説明することが多いのが気になった。一人称ではないのだから、客観的に描かれてもよかったのではないかと思う。

それにしても、まかてさんの描く女性は相変わらず素敵だ。
男たちは物事を成し遂げてはいるが、なんとなく印象が薄い。時代の影響もあって、まだ女性の地位は低く、男性優位な社会にも関わらず。
中島兼子という声楽家の存在感が素晴らしい。彼女は、芸術家として自分を表現する欲求と、家庭の主婦のタスクの間で苦しむ。しかも、柳の活動を金銭面で支えなければならず、そのためには公演会を催して稼がなければならない。
芸術家として、表現者として学びたいという当たり前のことさえ、柳は許さない。半年のドイツ留学に至るまでの経緯は兼子の聡明で情熱的な描写が印象的だ。
民芸運動という芸術活動を推進しておきながら、妻の芸術活動を認められない宗悦は、ここではただのわがままで寂しがりやの夫でしかない。

サチは架空の人物だが、柳家には当然女中がいたであろう。
女学校出で、関東大震災後に京都に来て、柳家の女中となる。どこか訳ありの雰囲気な「ねえや」は、白樺も読んでおり、書物をジャンル別に書棚にしまうこともできる。民藝の品物を市で贖った後の荷物持ちや、家族や客人をもてなすための食材の買い出しなど、力もあるようだ。ただのお嬢さんではない。そして、西洋料理にも果敢に挑み、かなりの腕前で子供達のおやつに「ハットケーキ」を作ったり、客人をもてなす。他にも大ばあやや、ばあやがいて、威圧を感じたり、嫌味を言われたりするが、うまく切り抜けている。
彼女の視点で語られる、柳家や河井寛次郎や濱田庄司らとの交流は、穏やかで微笑ましい。最後にサチの出自が明かされるが、ネタバレになるのでここでは控える。

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2026年03月13日

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