あらすじ
人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな――。ひどく損壊された6人の少年の遺体が発見されると、社会はその事件の異様さに衝撃を受けた。大学の生物学科で蝶の研究をする榊史朗は、蝶の世界を渇望するあまり、息子を含む6人の少年たちを手にかけたと独白する。蝶に魅せられ、禁断の「標本」を作り上げたという男の手記には、理解しがたい欲求が記されていた……。耽美と狂おしさが激しく入り乱れる、慟哭のミステリ。
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Posted by ブクログ
これまでに読んだ湊かなえさんの作品の中で、私にとっては最高傑作だった。
途中からは父の息子を愛する想いに反し、ボタンの掛け違いで全てを失った現実が苦しすぎて涙が出そうになってしまった。
蝶に魅了されすぎた結果、最愛の人を失い、蝶ではなく、人として生を終える。グロテスクな話なのに、蝶によって美しい物語に感じる奇妙さもあったせいか読み進めやすく、読後の気持ち悪さもなかった。
湊かなえさんのことなので後々どんでん返しが来ることはわかっていながら、後半に明かされる真実に結局驚かされてしまう。
真犯人が史郎→至→杏奈→留美と移り変わってゆくにも関わらず、その全てに違和感がなく騙されてしまう構成は流石だった。
そうそうこいつがやったんだよねーと思いながら読んでたら、「まさかのそっち?」で、さらに読んでいくと「え君だったの、、?」と、もうずっと翻弄されている。
Posted by ブクログ
ひとりひとりの遺体を用いた作品は是非映像で見てみたいと好奇心ながら思いました。
お父さんの最後のネタばらしのような部分はただただお父さんがいたたまれなさすぎて辛かったです。
親子愛と言っていいのか…歪んだ愛が入り組んだお話でした。
Posted by ブクログ
2026/07/20 - 2026/07/25
湊かなえ氏の作品を読むのは、自分の記憶が正しければ初めてな気がした。
これも、人にお勧めされて読んだ。
まず、文章で世界観に読者を引き込むのが上手い、と思った。
完全に榊史朗の書いた、とされる最初の作品を齧り付くように読んだ。それこそ、あの世界でweb小説に触れた読者たちのように。
しかし、この時点で、私はいくつか違和感を持つことになった。
というのも、蝶と少年たちを重ねている、という割に、また、少し性的な部分を匂わせている割に、「随分と女性的な感性を持っている」男なのだな、と思っていた。
特に、「切断」があるかないか、というのがその少年が加害していたかどうか、に関わっている気がしていた。その判断の軸が、どうにも女性的なような気がしたのだ。下肢にたまる油というのは標本にはいらない、台無しにする部分だから。綺麗な標本に汚いところはいらない、とでもいうかのような選択が気になった。
また、この最初の作品の時点で、「留美ちゃん」という存在が引っかかっていた。なぜなら、この作品を作るように榊史朗に舞台を用意した仕掛け人にしか見えなかったのである。
結論から言えば、この私の違和感や予測は「ニアミス」と言ったところである。私には、留美という女性が、幼き日の榊史朗という少年の作った世界から抜け出すことができなくなった、その才能に理性を焼かれてしまった人のように思えた。
榊史朗の持つ才能は、彼の父と、留美という少女の才能を焦がしたように思えてならなかった。
イタルの切断に関して言えば、史朗が至(では結局なかったが)の意思を汲み取って、加害者を切断ルールを適用したのだろうが、作者の望んだ世界観を感覚的に理解し、死に物狂いではあったがその対象が我が子であっても実行できる才能が史朗にはあった。
史朗の世界はさまざまなボタンのかけ違いで地獄へと至ったが、その引導を渡したのが実の息子であるイタルであったことは、彼がその才能を持って焦がした芸術家は三人いたことになる。
p43-l16
額縁は別世界へと続く窓で、その向こうには無限の景色が広がっている。
この一文が全ての始まりだったような気がする。この絵が、この才能が、額縁の向こうの別世界へと蝶のように人々を誘ったのだ。
いや、向こうの別世界を、現実側に引き寄せた、が正しいのかも知れない。
話自体は、これがイヤミスか、を身をもって味わうことになる作品だった。
一番気持ちが動かされたのは、榊史朗という人間が持つ、息子への愛だ。
これが、痛くて、苦しかった。
Posted by ブクログ
初の湊かなえ作品。イヤミスの女王ってこういうことか〜!
描写がグロいのはそうなのですが、
他人の意志をためらいなく継いでしまう狂気はもはや美しく、そちらの方がしっかり嫌な気持ちになりました。
この人が犯人だ!え、この人か!こっちだった!と、
ジェットコースター的に振り回される感覚が楽しかったです。
これ実写化って本当ですか…
Posted by ブクログ
標本の作り方を残したレポートを読み解いていくスタイル。気持ち悪さやグロさもありつつ、犯人はこの人か。いや、お前だったのか!え?こっちの人?な展開で気持ちよく振り回された。
Posted by ブクログ
蝶の名前がなにやらでまったく覚えられなかった!オチとしては騙されたような気分になるでもなく。ブロマンスっぽい作風なのかちょっと期待したけど、そんなこともなく。父と息子の物語と思わせておいて、母と娘の物語っぽくもあり。二転三転する構成はスリリングで、真実は何なのかと楽しく読めました。女は怖いということです。榊史朗はまんま西島秀俊で、脳内で秀俊が大暴れで、それもおもしろかった。他のキャスティングは知らないけど、皆さん、だいぶ身体を張られたんだろうな。ミステリーとしては微妙ですが、サスペンスとしては◎でした。
難点は誰にも感情移入ができないこと、誰も魅力的には感じないこと。男の子5人は魅力を発揮する前に標本になっちゃって、せっかく癖強が集まってるのに、残念ではありました。男たちが主人公だと思ったら、実はという展開は好みではありますが。
Posted by ブクログ
『人間標本』はとても読みやすく、物語に引き込まれて最後まで一気に読むことができた。
読んでいて特に印象に残ったのは、蝶が人間の象徴として描かれているように感じたことだ。蝶の翅の表と裏が、人間の表の顔と裏の顔を表しているようで、登場人物たちがそれぞれ隠している思いや本心が少しずつ明らかになっていく展開がとても興味深かった。
また、この作品で描かれる殺人は、単純な憎しみから生まれたものではなく、それぞれの「愛」が歪んだ結果として起きているように感じた。家族への愛や認められたいという気持ちなど、一見すると温かい感情が悲劇につながってしまうところに、この作品の怖さがあると思う。
物語の構成も工夫されていて、視点や話の進め方が新鮮だった。真実が少しずつ見えてくるたびに印象が変わり、最後まで飽きることなく読むことができた。
読後はすっきりするというよりも、登場人物たちの心情や「愛とは何か」について考えさせられた。後味は決して良くないが、人間の心の複雑さや怖さが強く印象に残る、まさにイヤミスと呼ぶにふさわしい作品だった。
Posted by ブクログ
グロい!そしてただただ胸糞悪い
なんで善良な親子がアタオカアーティスト親子にこんなに振り回されないといけないんだよ!ってイラついてしまいました
榊親子が何したって言うんだよ…
面白いとか以前に胸糞悪い以外の感情が湧かなかった
Posted by ブクログ
冒頭から筆が乗っているのが紙越しに伝わってくる文章。そして後半いつもの湊節の巻き取りは圧巻。ただ、筆が乗っているから面白いということもなく、163Pまでの「人間標本 榊史郎」「SNSより抜粋」はかなり退屈でpixivに見られる類の素人のようでな文章で辟易としたのだが次のPを捲ると数行で違和感。これをやられたらそら面白いでしょうと言いたくなる否応なしのエンタメ性が繰り広げられ最後まで読み切ってしまった。ただ、犯人が二転三転する展開では、被害者以外の登場人物が全て一度犯人であるかのような描写があるため真犯人に行き着く頃には少々食傷気味であった。人間標本は現実離れしすぎていてイメージがボヤケているのでぜひドラマ等で見てみたい
Posted by ブクログ
想像の上をいったと思ったら、また上をいくような作品。事件というものが、シンプルな動機で起こることはもちろんあるが、人間の複雑なそれぞれの考えが混合することで榊史郎が捕まるという形に収まったように、シンプルに見えるがその背景には複雑に物事が混ざっているのだと感じた。
それぞれの登場人物が誰かに打ち明けることなく物事を遂行したがために、榊史郎が息子である至を殺害してしまったということが、この物語の核心であり嫌な余韻を生み出したんだと思う。
映像のほうもあとから見ましたが小説より映像映えする作品でしたね。
二転三転するようなストーリーでした。驚きはあるけど、登場人物全員に感情移入ができない。
主人公も息子があんなことしたと思いこんだからってそう簡単に実行できるでしょうか。切ないというよりはなんだか愚かで可哀想。