あらすじ
リアルで力強く、驚くべき知性と社会性を持った動物たちの世界――今こそ「本当のシートン動物記」に出会う、大人のための新訳・決定版!
シートンの作品が好評を博したのは、動物たちの生態をありのままに生々しく描いたからだった。作品の根幹にあるテーマは人間と野生生物の共存であり、これは21世紀に生きるわれわれにとってもきわめて大きな関心事である。そして、シートンが描くのは「動物たちとのふれあい」などといったきれいごとではない。動物たちは、弱肉強食を基調とする自然界のきびしい摂理のなかに生き、恋の鞘当てもあれば不倫もあり、腹黒い策略もあれば失脚した者の煩悶もあり、新たな生命への讃歌もあれば老いへの恐怖もあり、とにかく人間よりも「人間くささ」に満ちている――。
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Posted by ブクログ
動物達の生態が観察されたまま描かかれ、ほっこりする気持ちになるのも束の間、悲劇的な結末になる物語もあり、生死を考えさせられます。伝書鳩の話、キツネの話、マガモの話が特に好みでした。狼の話は、子供のころに読んだので、懐かしい感じで読みました。
Posted by ブクログ
ファーブル昆虫記は子供向けのを読んだことがあったが、何故かシートン動物記は未読。完全に忘れていたのだが、偶然見かけて手に取ってみた。
結果、大当たり。解説にある様に子供向けの、人と動物のふれあい等という話では無く、徹底したリアリズムに基づくドキュメンタリーと言うべき内容。翻訳も更にその魅力を高めているし、シートン自筆の挿絵がまた美しい。
思うに、シートンは動物をひたすら観察し続け、共に生き続けて来たのだろう。だからこそ、実際には見ていないはずの光景すらもまるでその場にいたかのように、動物の心理すらも描き出すことが出来たのだと思う。動物をただ可愛い可愛いでは無く、人間と同じ存在として冷静に捉えたからこそ出来た事だと思う。
個人的には、動物のお医者さんと同じだと思う。あちらは冷静な観察をユーモアに包んでいるが、変に媚びたり可愛いだけで終わらせたりしていないのは同じ。
人間も動物も、等しく自分たちのために生き、自分たちの善をなして生きていく。そこには善悪はなく、それがぶつかった時だからこそ悲劇が起こることもあり、それもまた善悪の範疇の外。そこが淡々と描かれていて、説教臭いところが無いのが良い。とは言え、何処となく人間の欲深さに呆れているように思えるのは気のせいか。
個人的に好きなのは、スプリングフィールドのキツネと、サンドヒルの雄ジカの足跡。キツネの方は、本当に動物にこんな気高い哀しい選択が可能なのかと疑うほど。でも嘘とは思えないのが凄い。
雄ジカの話はただ美しい。ラストシーンが目に浮かぶよう。まさに、「これは黄金の日々」と言う言葉がぴったりだった。
Posted by ブクログ
読みはじめから面白くて、最後まで興味は尽きませんでした。本書には短編8作がおさめられ、原文に忠実に訳されており、大人向けです。シートンが描いた挿絵も入っています。
野生動物の生態が面白いだけでなく、人間と動物の知恵比べにも夢中になり、いつも動物の方を応援してしまう自分がいました。
語られるエピソードのひとつひとつが、深く記憶に残るものでした。
・愛する妻が殺されたのを知らずに、探しまわる夫のオオカミの姿
・死んだふりをすることで敵をおびき寄せる、母ぎつねの賢さ
・人間に捕獲されてしまった子ギツネに対する母ギツネの行動には、ドキッとさせられました。“これが野生動物の真の姿なんだ。こんな愛情の表し方があるんだ。”
・雄のハトが伝書バトとして働いている間、他の雄のハトに気を許して不倫関係になるも、素知らぬ顔の雌のハト
最後の短編は、主人公の言葉で締めくくられています。この言葉に込められたメッセージ、深く深く心に沁みました。
何度も繰り返し読みたくなる作品ばかり!(私は、伝書バトとシカのお話が特に好きです。)
腰前敏弥さんの訳、おススメです。
〈目次〉
ワーブ 灰色グマの一代記
暴れ馬のコーリーベイ
オオカミ王ロボ
スプリングフィールドのキツネ
マガモの親子の旅
だく足の野生馬(マスタング)
アルノー ある伝書バトの物語
サンドヒルの雄ジカの足跡