あらすじ
中学教師の葉奈子は中二の夏、ネットの掲示板で声をかけてきた男のもとに身を寄せた。そこは、母親から構われずに育った葉奈子が救いを求めて逃げ込んだ場所だった。15年前の夏の記憶と、担任する女子生徒の無断外泊の背景が重なったとき、葉奈子の中でひとつの真実が立ち上がる。その真実を共有したのは、心に傷を負ったまま生きる同僚の中年男性教師だった――。SNSを用いた未成年者誘拐の、真の罪をあぶり出した長編小説。 解説・寺地はるな
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
2025/05/16予約 1
中学教師の葉奈子は、中二の夏にネットで知った男のもとに身を寄せた事がある。その時『大丈夫』と言われたことが自分を救い、鼓舞したのも事実だけど、大丈夫じゃないと声を上げることもできなくなった。
葉奈子は母親に放置され危ない橋を渡った。受け持ち生徒の家出にかつての自分の姿を投影してしまい、寄り添いつつ、彼女が彼をいい思い出にしないよう心を砕く。それができたのは葉奈子が同僚男性教師に心を開いたから。親や教師でなくてもどこかに相談できる場所があることを切に願う。子どもに限らず大人にも。
Posted by ブクログ
テーマとしては思春期真っ只中の中学生の未熟さや、大人になっても本当に大切なことみたいな感じでした。解説にもありましたが、あらすじを読んだ時は「見えてるものが全てではなく、未成年誘拐のような間違いに救われることもある」みたいなテーマだと思いましたが、ナオくんはしっかり変質者だったのでそこはいい意味で裏切られました。
また、中学生の星来が成年男性を信じきって自分だけは違うと思い込むことで現実から逃げる中、それを助けようとする葉奈子自身も変わっていくという構図も良かったです。「夏鳥たちのとまり木」というタイトルの「とまり木」が、若者にとっては歪んだ欲望に満ちた人間しかない世間に警鐘を鳴らし、身近な人間たちが若者のとまり木になるべきというメッセージを感じました。副担任の溝渕にとっては宗教団体が、葉奈子にとってはナオくんが、星来にとってはSNSで出会った男がとまり木になっており、確かにそれがなければダメになっていたかもしれません。しかしそれによって失ったものもあり(葉奈子は人に頼れなくなり、溝渕は家を手放した)、その時頼れる人間がいたらよかったのにという後悔を抱えながら生きている様子が描かれていました。そのような成長物語だったので心に響くものがありました。
ただ物語として、どうして葉奈子は学校祭でぶつかった男が星来の彼氏だとわかったのかが不明瞭だったり、母親の描かれ方が浅く感じたり、表現や文章が雑に感じたり、わかりづらい文があったりという点はいくつか感じました。