あらすじ
「本を読みたいけど、読めない!」
現代の忙しい私たちは、いったいどんな本を読めばいいのだろうか?
または、どうやったら本が読めるだろうか?
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者が、具体的な方法と作品タイトルをもって贈る、やさしい読書エッセイ。
焦燥感と罪悪感にかられるあなたの背中を、そっと押してくれる全53章。
【著者プロフィール】
ファン・ボルム
小説家、エッセイスト。大学でコンピューター工学を専攻し、LG電子にソフトウェア開発者として勤務した。転職を繰り返しながらも、「毎日読み、書く人間」としてのアイデンティティーを保っている。
著書として、エッセイは本書のほか、『生まれて初めてのキックボクシング』、『このくらいの距離がちょうどいい』(いずれも未邦訳)がある。
また、初の長篇小説『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(牧野美加訳、集英社)が日本で2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞した。
【訳者プロフィール】
牧野美加(まきの・みか)
1968年、大阪生まれ。釜慶大学言語教育院で韓国語を学んだ後、新聞記事や広報誌の翻訳に携わる。
第1回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」最優秀賞受賞。
ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)のほか、チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』(クオン)、ジェヨン『書籍修繕という仕事:刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』(原書房)、キム・ウォニョンほか『日常の言葉たち:似ているようで違うわたしたちの物語の幕を開ける16の単語』(葉々社)、イ・ジュヘ『その猫の名前は長い』(里山社)など訳書多数。
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Posted by ブクログ
毎日も読む時間はないし、そんなに沢山読んでるわけではないけど刺さりました。付箋だらけ。私にとっては、小さいけど何かのきっかけをくれるような本です。読んでて気持ちいい綺麗な文章…には不思議な魅力があります。
「最近気分が晴れないな....」「ちょっとした息抜きが欲しいな....」そんな時にまた再読したい…
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退屈で、物語が恋しくて虚しくて友達に共感したくて、世の中に希望を持ちたくて、そして究極的にはただただ何かが読みたくて、私は毎日本を読んできた。これからも読み続けるだろう
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本を読んで強くなりたい。より揺らがない、よりどっしりした人間になりたい。傲慢でもなく、無邪気でもない人間になりたい。自分の感情に率直でありながらも、感情に振り回されないようになりたい。大げさに言えば知恵を得たい、日常生活では賢明になりたい。世の中を理解し、人間のことがわかるようになりたい。
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「君は君の人生を変化させなければならない」それが、パトリック・ジュースキントが結論づけた、わたしたちが本を読む理由だ。わたしはその文章を頭の中で何度もつぶやきながら、もし一冊の本を読む前の自分と読んだあとの自分が少しでも変化していたなら、たとえその本を読んだことすら覚えていなくても問題ないのだと自分を慰めた。
Posted by ブクログ
思わずわたしだ!とさけんだ。わたしがいる。
「心がざわつくときは本という部屋に入ってゴロゴロしていた」
という序章から始まるこの言葉でもう仲良くなりたい!と思ってしまった。
韓国人の方だけど日本の作家も読んでいるし、それだけでなく世界中の名著をあげるので、同志だ!と仲間を見つけたようで嬉しくなりつつも私の百倍くらい読んでる。
51.自分を守る読書 が特に感銘を受けた。
広告画像が、幸せになりたければ脱毛しダイエットして、美人になって、流行に乗り、金を稼げと脅してくる。私たちの思考を鈍らせる。
わたしの幸せはわたしのもので、その信念を読書を通して育てていくのだ。暴力性のある「提案された幸せ」から自分を守る方法を身につける。
「物語の自販機」を持とう、の提案がすごく素敵。
最近はまったく本を読めていなかったし、休日もほとんど寝て、スマホ見て、を繰り返していて、身体的にも精神的にも疲れているんだなと実感している。
本を読む余裕なんてないよ〜無理無理と思っていたけど、そんな時の読書エッセイは強い。読書をしたくて仕方なくなる。引用がとにかく多くて(参考文献は137冊!)、読みながらも次の読むべき本を探すのに必死になる。今は哲学の勉強がしたいよ。
また、著者であるファン・ボルム氏は、大学で学んだコンピュータ工学を活かして日本よりも厳しい競争社会である韓国で、大企業への就職を決めた"成功者"であるように思えたが、研究員として連日残業、休日返上で働き、職場で机に座ると次から次に入ってくる仕事を淡々とこなすだけの日々が続いた。仕事を辞め、本を読むことで「本来の自分」を取り戻したという彼女の経験があるからこそ、より"読書で得られる栄養"に説得力がある。
心に留めたい言葉がたくさんあって、ノートに書いて自分の心に染み込ませて、潤いを甦らせていきたい。何度も読み返し、帰ってきたい本。
Posted by ブクログ
全体を通して友だちを見つけた感じ。夜寝る前の読書の時間に、この時間も誰かと繋がってるんじゃないかと思っていた感覚を、この本を読んでいるときも同様に感じた。
「頭も心も重い日には、負担の少ない薄い本に手が伸びる。」私も本を読めない時があって、それで挫折しちゃうのは勿体無いなと思うし、やっぱこういう人もいるんだと思った。
「ほかの誰かを本が読みたいという気持ちにさせながらも、自身は本を読むことにしか関心がない」読んでいる人を外から見た表現。その点に魅力を感じていたが言語化したことがなかったことに気づいた。
「本を読んで強くなりたい。より揺らがない、よりどっしりした人間になりたい。」この本のコピーを書くとしたらここを使う。訳者後書きにも使われていた。なぜ彼女が本を読むのか、がこの一言に凝縮されているし、十分に共感できる。
「彼は絵を眺めていたけれど、実際には自分の中の「動揺」を見つめていたのだろう。」自分の中の変化を見つめていると似た考え方。そのもの自体が大切なのではなく、なぜか惹かれる自分を考察する楽しさ。
「天真爛漫でありながら洗練されていて、言葉や行動に過不足がなく、どんな場所でも自然に振る舞える人物。」
こうなりたいと言える。いい言葉。
「優れた本は、わたしたちの共感能力を増幅させ、すべての人間をつなぐ。」私が受け入れる力を身に付けたのは本のおかげかもしれない。
「本を読む人がとても非現実的に見えることがある。」私の非現実性も物語のおかげ。現実だけが世界だけではないと知っている喜び。希望。
「私たちが目にするものはすべて星の一部ってこと。素敵じゃない?」本読んでキラキラした人も好き。
Posted by ブクログ
読書に関するエッセイ。語り口が優しく(ようこそ、ヒュナム洞書店へと一緒!)、読書に対する愛が深くて面白かった。
読書をするときの不安?悩み?戸惑い?に対して私はこうしているという事が書かれていたり、たくさんの本から引用がされていたり、でも押し付けとか上から目線という感じがせず好感を持てた。
後半は若干流し読みになってしまったけれど、前半はメモをしながら読むほど良い言葉がたくさんあった。
◯読書後の忘却
読書が虚しく感じられる理由
「文学的健忘症」
パトリックジュースキント
読書においては「記憶」ではなく「変化」がもっとも重要だ
◯読んだり書いたりするときに感じる快楽は、時とともに大きくなっていく。夕立のように一気に降り注ぐのではなく、霧雨に服が濡れていくようにじわじわと染みていく。
◯今読めなくてもいつかは読める。
今は自分の関心や好奇心がその本を受け入れようとしないだけなので、今読んでいるその本は一旦手放してもいい。状況が変化し考え方が変われば読みたいと思う本も変わってくるので、その時また手に取ればいいのだ。
◯その程度の縁
人と人の間にあるように、本と人の間にもあって良いはずだ
◯古代哲学者セネカ「人生の短さについて」
誰も自分の金を分け与えようとはしないのに、自分の人生はいかに多くの人々に分け与えていることでしょう。人は財産を守ることにかけてはケチくさいのに、時間を浪費することには鷹揚です。こと時間にかけては貪欲であって然るべきなのに。
◯ゲーテ「ファウスト」
歳ともに安定するどころか、ますますさまようばかりの人生に
人間は努力する限り迷うものなのだから
◯一日一日が集まって人生を成すという事実にあらためて気がつくと、再び、一日単位の目標に熱中することができる。
一日をどう過ごすかという問題は、私たちの人生をどう過ごすかという問題を意味する。
◯孔子「論語」
もし富が、求めて得られるものならば、行列の露払いという卑しい仕事でもやろう。だが、求めて得られるものでないなら、自分の好きなことをしよう。
◯文章の収集
一冊の本にできないことを一つの文章がやってのけることもある。
何だか集めたのは自分への言い訳ばかりのような気もするけれど、こういう文章に出会えて幸せだ。