あらすじ
辻原志織は34歳、愛する夫・誠太は不妊治療にも協力的だ。しかし突然、誠太が失踪――残された手紙には志織への懺悔が綴られていた。最愛の人を得るために、あなたならどうしますか?どこまで許せますか?
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Posted by ブクログ
「最愛の人を得るためなら惚れ薬を使いますか?」
という衝撃的な帯で手に取った作品でした!
内容は不妊治療を行う誠太と志織の夫婦
章ごとにそれぞれの視点からお話が進行していく。
1番印象深く残っているのは、
不妊治療は精神的にも身体的にも過酷ということ。
周りからの嬉しい報告さえも
羨ましい気持ちから憎い気持ちになってしまうのも
読みながら辛いよなと感じました。
「惚れ薬」よりも不妊治療や夫婦関係に
重きを置いたような感覚の作品でした!
そばに居てくれる主人や家族を
大切にしようと思えました。
Posted by ブクログ
夫婦とはいえ、一番近くてどこまでも他人である。
ずっと一緒にいるからなんでも知っているような錯覚を持つが、見落とすことや知らない一面はまだまだたくさんあったりする。一緒に見ることのできる日常、些細な感情…細かな当たり前。何も言わなくても分かること、話してぶつかって知ること、この両方を何年経っても見つけられるような関係でいたい。
〝頬を伝う二本の透明な筋を見たとき、私はこの人と死ぬまで一緒にいたいと思った。この人と死ぬまで一緒にいたいと思ったのだ。〟
Posted by ブクログ
帯の「最愛の相手を手に入れるためなら、惚れ薬を使いますか?」の一文がズルすぎる。読んじゃうよね。
『傲慢と善良』に続き、「突然パートナーが失踪する」系はやっぱりおもしろい。
本作では、不妊治療中の夫婦の“夫”が姿を消す。
献身的に妻のメンタルケアや家事、仕事をこなし、温厚で穏やかな彼が、なぜ突然いなくなったのか。その経緯が少しずつ明かされていく。
気温の寒暖差が激しいと体調を崩すように、自尊心の高低差が大きいと、コミュニケーションに支障をきたすのだと感じた。
相手の気持ちを察するための「ものさし」の目盛りが合わないというか、思いやっているつもりで、むしろ傷つけてしまっていることに気づけない。
だからこそ、生成AIに何でも相談できる時代だけど、「相手との血の通ったやりとり」をおざなりにすべきではないのだと静かに刺してくる物語。
帯からはファンタジーものかと思いきや、れっきとした大人の恋愛小説でした。
Posted by ブクログ
誠太と詩織夫婦。妊活で行き詰まった二人、誠太が消えてしまった。帯は惚れ薬に焦点が当たっていたが、夫婦の在り方について考えさせられる。
私たちが向き合わなければならないのは目の前の人。
そうだなぁ
Posted by ブクログ
この本を読む前はね、
私は「使う派」でした。迷う余地なく。笑
だけど、そういうアイテムを介することで相手が見えなくなってしまうこともあるな、と、この作品を読んで思いました。
恋愛は特に、常に生身の人間同士のコミュニケーションだし、人のことなんて全て理解できるわけないので、だからこそ分かり合おうと言葉を尽くさねば、伝わるものも伝わらないですものね。
でも、そういう大事なことほどわかんなくなっちゃうんだよな〜!(自戒)
加藤千恵さんの解説に書いてあった、
「人の気持ちが、とうてい白黒つけられないものであることもまた、本作によって改めて気づかされた。気持ちはたいていグラデーションだ。」という一節が心に残っています。そう、人間ってのは純度100%でいる時の方が少ない、複雑な生き物なんだ。
Posted by ブクログ
本作の求めよ、さらば(与えられん)というタイトルには、2つの意味が込められているように感じた。
1つは、実力・努力至上主義に対する疑念。
志織と夫の誠太は、不妊治療を進めるも子どもを授かれず、それでも妊娠にこだわる志織を見かねた誠太は離婚を考える。
志織には進学、就職と自身の努力で望むものを叶えてきたという自負がある。
パワースポット巡りや食事など、いわゆる妊活と呼ばれるものすべてを試すも妊娠には至らず、初めて自分の努力とは無関係に事が運ぶ様を見ることになる。
もう1つは、全力でものごとと向き合えば、少しの障害があっても優に乗り越えられるということ。
タイトルの原義は宗教的なもので、心の底から祈れば信仰が得られるというもの。
誠太は結婚後ずっと最良のパートナーとして役目を果たしてきたが、まだ心の底の本当の気持ちや不満を志織は掴めていないように感じている。一方の志織も、妊娠に気を取られすぎて、誠太を正面から見られていないところがある。
最終的に離婚の危機を迎え、お互いに本音で向き合ったことで、また新たな扉が開かれていく。