【感想・ネタバレ】イエスの生涯のレビュー

あらすじ

英雄的でもなく、美しくもなく、人々の誤解と嘲りのなかで死んでいったイエス。裏切られ、見棄てられ、犬の死よりもさらにみじめに斃れたイエス。彼はなぜ十字架の上で殺されなければならなかったのか?――幼くしてカトリックの洗礼を受け、神なき国の信徒として長年苦しんできた著者が、過去に書かれたあらゆる「イエス伝」をふまえて甦らせた、イエスの〈生〉の真実。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の思い描いていたイエスの姿とは全く違った印象を持った。
神の愛を伝えたいイエスと目の前の見える奇跡を求める民衆とのギャップ。
イエスがここまでの孤独を抱えていたことを知らなかった。

イエスの苦しみはまさに人間が抱える様な苦しみで、神の子にも関わらず人間の苦しみも分かち合ってくださる。
自分の中では勝手にイエスは「思い悩むことのない、完璧な存在」と思っていたが実はそうではない。
無力だったからこそ、弟子たちに伝えられたことがあったのだ。

地上に来てくださり、神であり人でもある神の子に感謝する気持ちがより一層強まった。

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2024年09月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 私は本書にイエスの天涯孤独を読んだ。
 「汝等は徴と奇蹟を見ざれば信ぜず」(ヨハネ、4・48)とあるが、民衆はおろか、弟子たちですらもイエスの真意には寄り添わず、ひたむきに「愛」を説くイエスに、病を治す奇跡や、ユダヤ民族主義のリーダーとして立ち上がることを期待していた。
 「裏切り者」ユダに、イエスの意図を理解したうえで、民衆が求める者へと路線を変えてほしいと切に願い、幻滅した「哀しき男」[第8章]としての像を見たのは斬新な指摘であると感じた。

 お伽噺のような「物語」を基にして、説得的な「事実」を論理的に追及しているというある種の矛盾がとても面白かった。

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2024年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

謎多きイエスの事実と真実を書いた本。
無駄を削いだ文から、人間性やあらゆる感情を推察し見出した、想像力に富んだ内容だった。行間を読み、想いを巡らせ、聖書の中の人々に血を通わせ生き生きとした肉の叫びが聞こえてくるのはさすが小説家らしいと感じる。
特に、イエスが今から訪れる自分の死をどのように考え受け入れたか、著者の深く慮る心が私の胸を打つ。
「剣をとる者はみな剣で亡びる」
今、この言葉が痛切に響く。
聖書を読む決心がついた。

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2022年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遠藤周作の考えるイエスの生涯、群衆や弟子たちの思惑、その考察を書いた本。
「死海のほとり」の感想と被ってしまうのだが、やはり遠藤周作の個人的なイエスのイメージ(何もできないが、永遠の同伴者として愛を示す人)ありきでそれにそぐわない要素は切り捨てに切り捨てまくっているという印象で、読んでいてもいまいち共感できない。
イエスが永遠の同伴者であるためには何もできないみじめな人でなければならないから、奇跡は全くできなかったことにされる。ひたすら愛を説く人でなければならないから、神の国が来たという宣教については無視する。たとえ話やサドカイ派などとの論争の批判的な部分も書かない。宮清めの暴力的エピソードは、自らが逮捕され死に渡されるためにやったことにする…という具合である。遠藤周作のエッセイで知人たちが彼について語る部分があり、「遠藤さんは三のことを十ぐらいにいう癖がある」と書かれていたが、確かに、と思ってしまう。
しかし、最後の弟子たちがなぜイエスを死後神格化し、強い信仰を得たのかという謎のところは引き込まれた。弟子たちは大祭司と取引をしてイエスを否定することで自分たちの身柄を見逃してもらっており、まさにイエスは彼らの身代わりとして十字架についていたという想像。そして、裏切りの強い自責と彼らを呪わずに逝ったイエスの最期が弟子たちをイエスの愛の教えへと導いたと遠藤は考える。さらに、イエスの復活に対する初期キリスト教会の強すぎる確信を鑑みても、復活という強烈な衝撃が神格化と信仰のかかせないピースとして必要だったという見方を示すのである。
あんなに奇跡を否定していた遠藤が復活は認めるのがまず面白い。しかし、イエスが弟子たちの代わりに十字架についたのは比喩でなく事実であったのだ、だからこそその死が弟子たちの感動、驚愕、思慕の感情を揺さぶり、信仰を生んだのだ、というのは説得力を感じてしまう。根拠はなく、全部想像なんだけども。小説を読んでいても思うが、遠藤周作はひとの感情に関する想像力がすごすぎる。そのすごみで納得させられてしまい、恐ろしいぐらいだ。

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2025年05月07日

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