あらすじ
百年という時の流れの背後に埋もれた人々の思い、
そして、愛する作家と文学館に自分が出来ること――
里海町の町役場で働く由佳利は、二週間前に婚約破棄をされてしまい人生行き詰まり中。
そんな中、担当している地元出身作家の文学館「貴地崇彦生家館」に関して、刑事二人が聞き込みに来た。貴地は明治末期の生まれで戦後に活躍した作家だ。没後二十年以上になるが知名度はまだまだ高い。
刑事は収蔵物について聞きたいということだったが、なにやら裏に不穏な事件があるらしい。
調べると、数日前に発見された身元不明の青年遺体のポケットから、貴地にまつわる葉書が発見されたようだ。
驚き戸惑う由佳利のもとに、以前いちどだけ会った老齢女性の艶子が訪れる。艶子は若いころ貴地の愛人だったと噂される存在だ。
生前の貴地先生から、やり残したことがあると聞いていたという艶子。その勢いに呑まれて調べを続けた先で由佳利は、中学高校で同級生だった夏央にも再会する。彼も調査に加わり、3人の凸凹チームが誕生した。
やがて、貴地が謎の「かぞえ歌」を残していたことが分かり、そこに隠された秘密を辿るのだが……。
思いがつながる、著者初の文学館ミステリ。
ある作家をめぐる「百年」に、あなたは何を見つけますか。
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Posted by ブクログ
百年がかりでも謎が解け、ずっと想いを残したまま亡くなっていった先生や邦夫さん、関わった人たちの想いが昇華できたらよいと思った。
艶子さんのキャラがたっていた。あまり百年前の人に想いを馳せることはないが、確かに生きていた人の足跡を辿ると自分もいつかそちら側になるし、今いる現実が奇跡みたいに感じる。
Posted by ブクログ
大学卒業と同時に地元の町役場に就職した由佳利。地元出身の文学作家・貴地崇彦の生家館を担当している由佳利に刑事から聞き込みがあった。他殺の疑いがある遺体がその作家と関係があると言われた。
若い頃、貴地の愛人だったと言われていた艶子、中学高校の同級生・夏央と共に貴地の残したかぞえ歌の謎を解く事になり…
百年前のかぞえ歌の謎の秘密、そしてそれを守ろうとしていた人達。事件そのものはやるせない物でしたが、理由はどうあれ理不尽な気もしました。
Posted by ブクログ
里海町の町役場で働く由佳利が、婚約破棄でちょっと人生どん底なところから始まる。
彼女が担当してる地元作家・貴地崇彦の文学館「貴地崇彦生家館」を舞台に、謎の事件が絡んでくるミステリなんだけど、ただの事件解決だけじゃなくて、過去と現在を行き来しながら人の思いや繋がりを感じさせる話だった。
由佳利が、貴地の愛人だったと噂される艶子さんや、昔の同級生の夏央と一緒に、貴地が残した「かぞえ歌」に隠された秘密を追っていく。
特に、艶子さんのキャラがめっちゃ魅力的で、年齢を感じさせないパワフルさとミステリアスな雰囲気が物語を引っ張ってくれる。
3人の凸凹チームが、ちょっとずつ謎を解いていく感じは、読み進めやすくて楽しかった。
ただ、ちょっとモヤっとしたのは、人物が昔と今でごちゃごちゃになって、頭の中で整理しきれなかったこと。
誰がどの時代に何してたのか、時々こんがらがっちゃって。
貴地の愛人だったかもしれない艶子さんの話とか、貴地の過去の出来事とか、時間軸がパズルみたいに飛び跳ねるから、ちょっと集中力が必要だった。
物語の最後は、貴地の「かぞえ歌」に込められた思いや、由佳利たちが文学館を通じて感じた繋がりが、なんかじんわり心に残る感じで良かった。
ミステリとしては派手なトリックとかドキドキの展開ってより、静かに人の心に寄り添うタイプの話かなって思う。
Posted by ブクログ
作者自身が公言しているように、舞台は湯河原(作品内は里海町となってる)。今は亡き地元縁の作家が遺した葉書が、山中で亡くなった若者のポケットから見つかり、役場の担当者、幼なじみ、作家馴染みの艶子で謎に向かう。丁寧なストーリーで面白いけど、夏央が秘密を隠してたり、そもそも殺人?殺すまでする?……と、最後の方がモヤモヤするのが残念な気がしたなー。
Posted by ブクログ
大崎氏の作品は初めて手にした。
序盤は、大きな展開もなくストーリーはゆっくり進む。ページを捲る手もなかなか進まない。
そのうち、この作品の目指すところが見えてきてから、やっと読むペースが上がった。
終盤には、序盤のゆっくりさが嘘のように急展開した。
由佳利の「婚約破談」が、主たるストーリーにほとんど効いてないのが実に勿体無い。結果的に恋愛小説ではなかったから、生かしようがない要素ではあるが、それならば端から要らないエピソードだった。読みはじめにはその点の期待もあったので、その後に展開されるミステリー要素には、完全には入り込めなかった。