あらすじ
「お前を、千年待っていた」
不遇な少女と冷酷非道な神。
時を超えて孤独な魂が繋がる、奇跡の後宮シンデレラストーリー!
【あらすじ】
とある時代の〈奉〉。異能一族の名家に生まれた令冥(レイメイ)は、能力をもたないことで母から虐げられて育った。ある日、生贄として嫁入りを命じられる。無情にも相手は、国を滅ぼす霊力をもつ冷酷非道な神・神喰(カミジキ)。だが──「お前を、千年待っていた」。なぜか、抱き締められ…? その夜、母が殺され、令冥に死者の記憶がみえる〈見鬼〉の異能が覚醒する。そんな彼女の力を見込んだ皇帝から依頼が舞いこむが……。
事件の真相を見るため、神と共に呪われた後宮へ。全ての謎を解き明かす時、千年の時を超えて孤独な魂が繋がる──。
著者について
●夢見里 龍
第26回電撃小説大賞で最終選考作となった『死者殺しのメメント=モリア』を改稿しデビュー。
感情タグBEST3
凄惨な世界に灯る愛
舞台は後宮ですがヒロイン令冥が嫁入りするのは神サマである神喰。異能の家に生まれて無能と蔑まれた令冥ですが神喰には溺愛されています。
神喰の見た目や言動には人でない存在の恐ろしさがありますが、寂しがりなところは人間以上。二人の穏やかな触れ合いは可愛く微笑ましいものですらありました。
そんな二人が立ち向かうのは霊鬼が引き起こす事件。
令冥は他人の未練を見る異能を用い、死を追体験する壮絶な目に遭ってまでどんな相手にも寄り添います。絶大な力を持つ神喰にも基本は頼らず、懸命に頑張る様は応援したくなります。
家族の復讐を目的にし、神喰をその代わりにしない覚悟も純粋な愛の為。復讐相手への選択も見所です。夫婦で地獄を行く共依存の関係からは、二人ならではの愛情が感じられます。
それから各エピソードで主に描かれるのは親子の愛憎。期待と失望、無垢の望みと失う恐怖、愛を求める子の苦しみが繊細な筆致で描かれています。美しい情景に深い感情の動きが重なり、どれもが印象的なシーンとなっていました。
深く抉られる暗い話の中に映える愛が温かく、心に刻まれるような物語でした。