あらすじ
上洛した織田信長に呼び出された明智光秀は、とある任務を下される。数の信奉者である信長は、敵対する大名の武力を把握する必要があった。中でも武田と毛利の資金源である湯之奥金山と石見銀山の見定めは不可欠である。ただし、そのためには敵地の中枢に潜り込み、金銀の産出量を示した台帳を確認しなくてはならない。見つかれば命の保証はない危険な道中である。光秀は盟友の新九郎と愚息を伴って隠密裏に甲州へ向う。駿河湾の港・田子の浦にたどり着いた三人は、そこで土屋長安と名乗る奇天烈な男に出会い――。
『光秀の定理』『信長の原理』に連なる、直木賞受賞第一作!
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Posted by ブクログ
信長から命じられたのは、武田の金と毛利の銀を調べ、地力を知ること。命じられたのは明智十兵衛光秀、愚息(一瞬、名前と思わなかった笑)、新九郎の3名。
最初は詐欺まがいの博打をやっていた愚息と新九郎が光秀と馬が合うのか不安ではあったが、最後にはバディか?と思うほどの仲になっていた。人は自分が持たないものを持つ者と惹かれ合うというが、光秀と愚息・新九郎がまさにそれにあたるのかもしれない。
途中、土屋十兵衛が同行するとなったときは、3人の度量の広さに驚いた。敵意はなさそうとは言え、土屋は完全に武田の者なので、いつ裏切られるか分からないのに。でも何だか憎めない人物だし、現代でこういう人物がいたら上司に気に入られそう…等と思った。
読み終わって思うと、土屋はこの旅に必要な男であった。凡ミスにはヒヤヒヤさせられたが。土屋がいなければ毛利の兵に追われることもなかったんだけどね。光秀たちの逃亡劇は緊迫感あり、友情ありで興奮させられた。
一連の報告を信長が受けるシーンが何なら一番緊張した。下手を打とうものなら、首が飛んでしまうだろうし。よくあの場で嘘を交えてもっともらしく報告ができたと思う。
信長が全て気付いていて、光秀という人物の評価を述べたところあたり、後の光秀の謀反を匂わせていてうまい!と思った。
毎回、時代小説を読んで思うのは、自分の圧倒的な日本史への知識不足。史実に忠実に書かれている訳ではないだろうが、最後に「大久保長安」と出てきたときに、なんか聞いたことあるな…くらいの感想しか出てこないのが悲しい。それでも本書は面白かった。