あらすじ
〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。
〈化け物遣い〉御行の又市。
〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。
彼らが対峙し絡み合う、過去最大の大仕掛けの結末は――?
文学賞3冠を果たした〈巷説百物語〉シリーズ堂々完結!
下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛には、裏の渡世がある。
凡ての嘘を見破り旧悪醜聞を暴き出すことから〈洞観屋〉と呼ばれていた。
ある日、藤兵衛に依頼が持ち込まれる。老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者ども炙り出してくれというのだ。
敵は、妖物を操り衆生を惑わし、人心を恣にする者たち――。
依頼を引き受け江戸に出た藤兵衛は、化け物遣い一味と遭遇する。
やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禪寺洲齋と出会い、とある商家の憑き物落としに立ち会うこととなるが――。
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Posted by ブクログ
2025年7冊目。
ううん、見事な幕引き。まさに[了]の名にふさわしい大作で、おかげさまで満足感ともの寂しさがとんでもないわ。ナンバリングの一作目から、古典の三部作、そして時間軸があとだから触れられんべと勝手に思っていた遠野まで網羅して…すべてを絡めとった上に百鬼夜行につなげる流れはもう、舌を巻くしかなかった。
個人的に又市が大好きなもんで、まさかの最終巻にぜんっぜん登場しないのにはびびったけど、だからこそたった見開き1ページのあの終わりが…くそぅ、痺れる。そんで又市と、遠野に行っちゃってた仲蔵を抜けば、びっくりするくらいのオールキャストっぷり。お馴染みのキャラ…特に治平が退場するのを見せられるのはつらかったけど、予告されてたことだったしやむなしよな……。かっこよかったなぁ。かっこよかったのでよりつらいが。
しかし間違いなく江戸時代を舞台にしていながら、つい現代とオーバーラップしてしまうこの描き方はほんと、どういうことなんだろね。終盤の富久と中禪寺のやり取りなんかほんと、「今の日本のはなししてる???」ってなった。刺さるなぁ。
読み始めて数十ページで、「あっこれは「嗤う伊右衛門」「数えずの井戸」「覗き小平次」見てた方がいいわ」となってそこから始めたため、読み終わるまでに尋常じゃない時間がかかった本作。ようやく済んで、まさにひと仕事終わった気分。たのしかった。いつかまた、一作目から順に読み返したいけど、生きてる間に二週目達成出来るかしらん?わくわくするね。
Posted by ブクログ
〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。
〈化け物遣い〉御行の又市。
〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。
嘘を見抜く洞観屋藤兵衛の側から見た又市や洲齋の物語をからめながら、老中首座・水野忠邦による改革とその黒幕となっている金貸しによる改革の真の目的が語られます。
複数の事件が相互にからまりながら、クライマックスへと突き進む1100頁を超えるオールスター総出演の物語を一気に読ませてもらいました。
このシリーズには『巷説』『前』『続』『後』『西』『遠』『了』があって、又市側の視点から描かれたそれぞれの事件が本作ではどのように藤兵衛の目に映るのかという読み方もとても興味深いです。
膨大な物語を破綻なくまとめる。やはり、京極氏は天才でした。
竹蔵
Posted by ブクログ
収録されている作品は以下の通り
於菊蟲
柳婆
累
葛乃葉
手洗鬼
野宿火
百物語
又市かっこいい。最後まで姿は出てこないけど。
しかし人死が出過ぎ。度々泣いた。毎度人が死ぬたびに後悔していると顔を顰めすぎな中禅寺氏。もっとヒーローであってくれと思わなくもなく。
しかし分厚い。分厚いのにあっという間に読めてしまったのはさすがである。
Posted by ブクログ
了わった。
藤兵衛を通して、外側からじわじわと渦中へ。点と点が線になっていく、知っている顔が浮き上がってくる。。。やぁ、ため息、圧巻。
しかし、じじさま達の死でボロボロ泣くなんて思ってなかったよ。
さて、シリーズを読み返しますか。
Posted by ブクログ
終わってしまった。
藤兵衛、お玉、源次というNewキャラ目線ではじまり、治平、お龍、柳次、玉泉坊、林蔵、文作、徳次郎、おぎん、縫らとつながっていく。京極堂(あの京極堂の先祖らしい)も登場。又市は最後の最後で姿を見せるがそれまでは存在感のみ。山岡百介は直接話に絡まないが彼の動きがきっかけになって思わぬ方向にいってしまう。仁蔵までが死んでしまうとは。富久の野望は阻止されたけど、百姓の方が何倍も多いのに侍を倒さないのはおかしいという考えには賛同する。京極堂が説くこの世に不要な人は存在しない、弱い者も生きていける世の中を目指すべきだという考えは、京極さんの今の世に対する考えなんだろうな。
右近って他に出てきたかな?風見が異様に強かったけど、彼もどこかで登場してたかなあ?と思っても簡単に読み返しができない長編ばかりだからね。
和製アベンジャーズって感じ。
Posted by ブクログ
シリーズを読み直してから挑んで良かった。これまでのキャラクターたちが勢揃いし最大規模で繰り広げられる圧巻の最終決戦。まさか稲荷坂のあいつまで冨久の仕掛けだったとは驚きました。最後の又市のセリフ"輩も物語になってるでしょうよ"でとうとうこのシリーズも終わったんだなと実感が湧きました
Posted by ブクログ
巷説百物語の完結だってんで、キャラ総出演のうえ新キャラ稲荷藤兵衛を主演に据える。どんな嘘でも見抜く、暴く。こんな漢、絶対に敵に回したくない。俺なんざ味方でも御免だ。でもそんな能力が自分にあったらなぁ。そして憑き物落とし中禪寺洲齋、武蔵晴明社の陰陽師とくればあの京極堂主人・中禪寺秋彦のご先祖様でしょ。もうこの人が出張れば怖い者なしだ。が、まああの最後の大立ち回りはあまりにしっちゃかめっちゃかかな。洲齋は堂々と敵陣に乗り込むけど、結局は護衛依存で被害甚大。又市と百介、いつ登場するかと待ち焦がれてたら、あはは。
Posted by ブクログ
前作からも、まして一作目からは遠すぎて記憶がほぼゼロ。
でも面白かった。
それにしても、今までになく人が死んだなぁ…。
人の死には意味なんてないし、全てが無駄なんだろうけど。
それでも、治平の死に様は、作中で唯一の救いだった。
切ない場面なんだろうけど、それでも、何かを守り、繋ぐために死ぬのは治平にとっては、何よりの解放の瞬間だっただろうと思う。
Posted by ブクログ
シリーズ第1作『巷説百物語』が刊行されたのは1999年。それから25年後の2024年、『続』『後』『前』『西』『遠』と続いてきたシリーズの完結編『了巷説百物語』が刊行された。1100p超えで税抜4000円。固定ファンしか買わないとは思うが…。
『巷説百物語』刊行当時から、シリーズ全作を追ってきたが、本作は既刊作品に張られた伏線を一気に回収するという趣向である。キーパーソン、キーワードはある程度思い出せたものの、さすがに記憶は薄れている。まあとにかく、読み進める。
語り部は、本作がシリーズ初登場の人物、稲荷藤兵衛。狐狩りを生業とするが、〈洞観屋〉という裏渡世を持つ。ある日、藤兵衛は老中首座・水野忠邦による改革を妨害する者どもを炙り出すことを依頼される。その者どもとは、御行の又市たち一派らしい。背景にあるのは、かなり前に刊行されたあの事件か…。
そしてもう1人の初登場人物。帯にははっきり書かれているが、京極作品にはお馴染みの…。やはり、世界と時間は連続していた。敵か味方か、方法論が異なる面々が入り乱れながら進むが、彼らが時代に、権力に翻弄されているのは共通している。
適度に章を区切っているため、意外と長さは感じなかった。むしろ端折っている印象すら受ける。あの人物が絡んでくるのは正直唐突だし、情報源も謎だ。謎めいた人物ばかりのシリーズとはいえ。その点、藤兵衛は自分を偽る気はないし、このシリーズには異色の人物と言える。完結編の語り部としては適任かもしれない。
気になったのは、既刊作品のような騙しの鮮やかさに欠けること。クライマックスに近づくほど、血みどろな戦闘がメインになっていく。戦闘に関わらない藤兵衛やあの男の心中や如何に。過去にも、非情な敵役は色々登場したものの、あくまでメインは大仕掛けだった。開国を迫られる時世も影響していたのか。
水野忠邦という実在の人物をこのように描く料理法は大胆だが、本来又市が描いていた絵とは、何だったのだろう。単純な勧善懲悪に近いシリーズ初期と比較すれば、それぞれがそれぞれの正義で動く本作の構図は複雑で、作中に全容を掴んでいる人物はいないように思われる。自分も読み終えて、掴めたとは言えない。
読み応えとカタストロフィという点では、本作の伏線に過ぎないはずの『続巷説百物語』の方が上かな。何はともあれ、作中では決着し、四半世紀に亘ったシリーズは完結した。京極夏彦さん、お疲れ様でした。さて、あちらのシリーズはどうなるか。