あらすじ
心臓を鷲掴みにされ、魂ごと持っていかれる究極のクライムノベル!
メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアのジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する。
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Posted by ブクログ
はじめてこういうクライムノベルを読んだけど、これぞ小説の醍醐味みたいな話だった。
ずっと暴力!暴力!暴力!の話なのになんでこんなに惹きつけられるのかわからなかった。わからないのに面白い!星★5!パーフェクト!
アステカ?のこともバルミロが信じる神のこともぜんぶよくわからなくても、コシモの人生の行くつく先を見たくて読んでいた。
コシモが純粋で無垢で悪意や殺意がないからこそ自分の犯していることの罪を直視することすらできないことが、もうどうしようもなくてつらかった。環境が人を作るならコシモが平穏な家庭で生まれ育っていたらこうはならなかったのか わからない。コシモも、心臓を奪われた子どもも、生まれてきた環境や親を呪うしか無いのだろうか。
パブロだけがコシモの未来を想ってくれたことが唯一の救いだった。非人道的な行いを悔やみ続けるパブロは本当にただの職人でやさしい人だった。最後は思わず涙が出てしまった。
Posted by ブクログ
1ページも退屈なページが存在しない。
残虐な暴力シーンと犯罪の限りをつくす良心の呵責というものを全く持ち合わせない冷酷非情な彼らを軸に、ほんの微量の温かみがとても際立つ。
トリックによるどんでん返しなどは一切なく、ストレートな流れの中、全く飽きが来ることなく読み進めずにはいられない。
救いがないと感じる方もいるかもしれないが、私は十分に救いがある結末だと思う。
この作家さんのデビュー作を読んだ時、村上春樹さんの影響を受けていると丸わかりだったが、本作ではその影はほぼ感じないレベルまで昇華させつつ、2箇所程、おそらくオマージュとして残された部分を発見した。
あるいは
まずいコーヒー
締めくくりの回想部分の直前の描写にコシモへの興味は消えず、そして矢鈴と順太のそのごも気になる。
次作が用意されているのなら、一刻も早く読んでみたい。
Posted by ブクログ
うわー、面白かった!
群像劇が繋がっていってストーリーが展開されていくスピード感がすごくて、ページを捲る手が止まらなかった!
アステカ文明なんて初めて触れたけど、
読み込むと人を殺すことが正当化されていくような錯覚を引き起こした。
だけど最後は現実世界に戻ってきたのかな?
全体的に血と、絶望と、圧倒的な闇の香りが
漂う唯一無二の一冊でした。
Posted by ブクログ
生まれた環境の違いが理由で、同じ生き物でもこうも価値観が異なることがあるのかと驚いた。神の存在をあまり気にしていない自分でもわかるほどの、バルミロやコシモの神への信仰心は、読み応えがあった。ヨワリエエカトル、ティトラカワン、テスカトリポカ。言いたくなるから覚えてしまう。登場人物全員のエゴがぶつかり合うわちゃわちゃがみてて面白かった。
Posted by ブクログ
所謂ノワール小説というのだろうか、裏社会の残忍な合理性に溢れていて、古代アステカの思想と世界観を交えて、世俗を超越した描写が印象的だった。もちろん、起こっていることは凄惨極まりなく、何度も読みたいと思える作品ではない…が、展開が恐ろしくても、描写が直接的で怖くても読み進められる文体が素晴らしかった。
登場人物の描写も良く、とにかく不運としか言えないルシアとコシモを除けば皆根っからのクズでカス。なのにその生き様には、私のような人間には無い誇りと諦観のようなものがあり、それがユーモラスに描かれていて「かっこいい」とすら思ってしまう哲学に溢れていた。
暴力と知略が入り交じっている裏社会、結局理不尽なまでの暴力が全てを解決して、敵は全て殺せばもういない。当然の事だけど、普通の頭じゃ考えつかない思想だらけで、最早痛快とまで言えるほどだ。恐怖に笑いが起こるという描写が何度かあるが、人間の本能をよく理解して描かれていると感じた…
描かれている犯罪は麻薬ビジネスから始まり臓器売買、しかも人の死が前提の心臓売買に進んでいく。さらに凄惨なことに、その対象者は子ども。救いようが無さすぎる。
なのに、背景はとても合理的だった。頭で認めたくないほど体そのものに価値があり、道徳的に許せるはずが無いが、人間1人1人の価値に覆せない差がある…
頭で理解できてしまうほどの合理性がそこにあり、吐きそうなまでに汚らわしいサイコパスたちの考えに溢れていた。
もう読みたくないが、もう読む必要の無いほど刻み込まれてしまった。忘れることは無いだろう…
ティトラカワン、ヨワリ・エエカトル、テスカトリポカ…
Posted by ブクログ
想像のはるか斜め上をいく悪が集い、日本で臓器売買の新たなビジネスを始める。社会問題・犯罪・暴力、そして南米の神話。そのどれも馴染みのない世界のはずなのに、現実との境界が揺らぐような緊迫感をもって一気に読まされた。
元メキシコの麻薬カルテル幹部・バルミロは、祖母の影響でアステカの精神文化を深く信仰するようになり、「生贄なくして神々は活動できない」という教えに心酔していく。彼の父親はその思想を気味悪がって否定していたが、父の死をきっかけにバルミロの信仰は決定的なものになる。南米の古代文明に触れたことがなかった私にとって、彼の幼少期を通して描かれる神話や、未知の価値観の形成過程はとても興味深かった。
彼にとっての生贄は、私たちが豊穣を祈るときに米や酒を供えるのと同じような感覚なのだろうか。だとすると善悪の感覚がかけ離れすぎていて恐ろしい。敵対勢力の心臓をくりぬくといったカルテルの暴力行為が単なる脅しではなく、儀式的意味を持っていたと知り、もっと得体の知れない恐怖感が増した。
一方、コカイン中毒の保育士・宇野矢鈴の最後の選択には、小さな希望もある。誰かのためなら、人は変われるのかもしれない。そう思わせてくれた彼女の姿に、日本社会へのささやかな信頼も感じた。
フィクションとは思えない重苦しいリアルさと、最後にわずかに差し込む光。強烈な読後感が残る一冊だった。