【感想・ネタバレ】喜べ、幸いなる魂よのレビュー

あらすじ

【第74回読売文学賞(小説賞)受賞作】18世紀ベルギー、フランドル地方の小都市シント・ヨリス。ヤネケとヤンは亜麻を扱う商家で一緒に育てられた。ヤネケはヤンの子を産み落とすと、生涯単身を選んだ半聖半俗の女たちが住まう「ベギン会」に移り住む。彼女は数学、経済学、生物学など独自の研究に取り組み、ヤンの名で著作を発表し始める。ヤンはヤネケと家庭を築くことを願い続けるが、自立して暮らす彼女には手が届かない。やがてこの小都市にもフランス革命の余波が及ぼうとしていた――。女性であることの不自由をものともせず生きるヤネケと、変わりゆく時代を懸命に泳ぎ渡ろうとするヤン、ふたりの大きな愛の物語。

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Posted by ブクログ

18世紀ベルギーフランドル地方
商家の娘ヤネケと幼馴染のヤン
とてつもなく賢いヤネケに実験され、
ヤンは彼女を慕い、ヤネケは子を身籠る
そして、ヤネケは「ペギン会」に入って好きなように生きていく
また次なる興味のために
ヤンのその後は波瀾万丈
あれよあれよと市長になる
2人の妻は尽くし続けて早くに亡くなる
寂しく残された男ばかりの食卓風景は
なんだかせつないばかり

時代の流れの中で、ヤネケやヤン
そして息子のレオ
それぞれが駆け抜けていく!
読むにあたり
歴史にも触れざるを得ないだけに
なんだか賢くなった気分になれる(笑)

女性としての生き方の多様性
男性の女性への考え方の多様性
今も昔もあまり変わらないような気がする
どう生きていくのか
個人として、人間として
どうありたいのか
改めて思いを巡らせたい

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2025年03月11日

Posted by ブクログ

知らなかったな、「ペギン会」。修道女のように教会に使える女性達が集まって暮らしていた組織。ベルギーのフランドル地方にあった。修道女のように「キリストの花嫁」ではなく、ペギン達はそれぞれ経済活動をして、身を立てていた。敷地内に家を購入して暮らす者もいた。
この小説のヤネケという女性の生家は亜麻糸の仲買商人の裕福な家で、彼女は子供の頃から恐ろしく頭が良かった。もうひとりの主人公のヤンという男性は、12歳の頃、ヤネケの父親に引き取られ、ヤネケとは義理の兄妹として育った。二人は仲良く、実験好きのヤネケの「性の探求」にヤンが付き合わされているうちに、子供が出来てしまった。
ヤンは二人で家庭を持って子供を育てることを夢見ていたが、ヤネケは子供を産んだあと、さっさと「ペギン会」に入ってしまった。
ヤネケは自由が欲しかったのだ。「男性に仕える」などという煩わしさのない、女性だけの中で、本を読み、研究し、論文を書く時間が欲しかったのだ。そして当時は女性の名前で論文を書いても相手にしてもらえなかったので、ヤンや兄弟のテオの名前で発表した論文はベルギーだけでなくフランスなど海外でも評判になった。また、ヤンが跡を継いだ亜麻糸の仲買業についてもヤネケは帳簿を点検し、緻密な計算をして助言したり、ペギン会と共同事業で亜麻糸から布を織る工場まで立ち上げた。また、ペギン会の子供達を連れて頻繁に外に出て、社会や科学を観察、体験する実地学習をさせてくれる先生として慕われた。
一方ヤンはずっとヤネケを慕いながらも、一家の主人として、店の社長として、最後には市長として、責任を果たし、家族を愛し、事業や街の伝統を守りながら発展させた。
ところが、ヤンとヤネケの子供のレオだけは、恐ろしく頭が悪く、「女は子供を産み育てるだけのものだ。黙って男に仕えて、男に養ってもらえ」というような、ヤネケの息子とは思えないような主張をする暴力的な男になってしまった。
家を追い出され、フランスに渡ったレオは、40歳になってフランス軍の下っぱとして、実母ヤネケのいるペギン会に乱入し、実父ヤンが市長を務める議会にも乱入し、どちらにも「解散」を命じた。
馬鹿を晒して住民に迷惑をかけまくる馬鹿息子。こんな時、親なら死ぬほど恥ずかしくて、泣きながら息子を怒ったり、代わりに土下座したりするくらい動揺するところだが、ヤネケとヤンは冷静である。
「しようがないねえ」
「もう、親の責任じゃないしね」
と冷静に見て、それでも親として、息子が帰ってきた時の家の中の居場所だけは確保してやる。
あっぱれな親たち。
すごく頭がいいから、そんな頭の良い親の遺伝子を持っていてもレオのような馬鹿な息子も出来るという自然の摂理に反感を持とうともしない。
そんな場でも、ヤネケとヤンには絆があって清々しい。

知性って素晴らしいと思った。私は心配性だが、心配のほとんどは調べも実験もせず、実態を自分が確認しようとしていないことだと最近分かってきた。心配よりも探求し、計算して‥と論理を組み立てていくと解決方法が分かり、ずっと有意義な年月を過ごせる。
ヤネケのような女性が生き生きと過ごせたペギン会というのは素晴らしいところだったのだと知った。読んだことのない、ベルギーのフランドル地方を舞台にした小説を読んでみて良かった。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

はあ〜とっても面白かった。

誰もが自分の望みを持つ。その果たし方に時代性が出る。ヤネケにもヤンにも望みがある。2人にとって愛は意志であり、自分の欲するところを主張はするが、相手の意に反することを強制はしない。いたって現代的な倫理観と理知的な関係性だ。時代風のヤンがそういった態度を身につけていることがむしろ驚きなのだが、ヤンには体験から真摯に学ぶ才能がある。ヤネケが奇矯に見えるのは、彼女の所有欲が極端に低い上に実利主義だからだろう。
個体の能力や特性にはばらつきがある。様々な制約はあれど、それは普遍の真理みたいなもので、その中で自由に生きることができる。その哀しみ、苦しみ、開放感、喜びが、読んでいると身に染みてくる。
無数の無差別の可能性が収束する様は神にしか見て取れない。幸いなことに、人には愚かに生きる自由さえある。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

パリオリンピックもあった2024年、折角なのでフランス革命に絡んだ本をと思い読みました。

フランス革命前後で国家観や宗教観、家族観が移ろう中をパリから離れたベルギーのフランドールに生きる商人、ヤンの人生を通して見ることができました。

また、何気なく綴られる会話や一編で、年月が流れ環境が変わっていく様は、ヤンのとめどなく溢れる回顧録のようですが、それでいて散らかる事なく丁寧に整理されていて、ドラマを見ているように読めました。

世界史を知らなくても、その時代の価値観やある1人の人生を追うのが好きな方にオススメです。

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2024年09月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

奇書というべき作品か。フランドル地方を舞台に中世ヨーロッパのような話が進行し、変な本を選んだかと後悔し始めたくらいで、少女ヤケネがヤンを誘って性に耽りだして、やっぱり変な本だとわかった。この天才のヤケネが修道女に似たベギンになり、ヤンは家の跡をついで、という大河小説な感じで、おおくの学術書を表すヤケネは誰かモデルが居るのかなと思いながら読み進んだが不明。よくこんな作品を書けたなあと感心した。

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2025年01月13日

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