あらすじ
射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。
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Posted by ブクログ
ブク友の皆さんが興奮気味にレビューをされていて、★5つの評価も多く常に気になっていた本です。
出版されてから2年も経ってしまいましたが、遅ればせながら読み終えました。
この本は凄く評価が高く、山本周五郎賞も取っているのに本屋大賞ではノミネートもされていません。
本屋大賞は出版時期の影響を受けやすいので不運でしたかね。
1ヶ月ほど前に読んだ「論理的思考問題」の小説版という雰囲気もあります。
ただ本書で登場するゲームに必勝法はなさそうです。
相手の考えを予測し、自分が仕掛けた罠のとおりにゲームを支配する。
相手に勝ちを確信させてからの、まさかの手で大逆転する流れが気持ちいい。
そんなにうまくいくわけないよ、という展開なのだが、フィクションならではの面白さでした。
5つのゲームを題材にした連作でしたが、同じ人物が活躍する1つの物語とは想像していませんでした。
面白くなければ「地雷グリコ」だけ読めばいいやという軽い気持ちで手に取りましたが、次の展開に興味津々であっという間に読み終わりました。
最初の「地雷グリコ」から、ルールをよく理解し、ルールのあやを上手く利用する知恵がこの物語のポイントになっていました。
相手がイカサマを行うなら、それを逆に利用した作戦に出たり、相手の動きは何でもお見通しという感じです。
最後のポーカーでの対戦は、対戦相手の絵空が真兔を上回るような知恵もので、犯罪まがいのことを平気で行う大胆さも持っている。
真兔の読みと行動を全て推理してゲームを進めているので、絵空が最後の真兔の仕掛けに気づかないことが不思議でした。
読者も騙されて「最後は真兔が負けるのか」と思わせる展開でしたが、まさかの大逆転が起こります。
「このカードを取れば勝ち」という状況があからさまに作り出されているのに、そのことを疑いもせず真兔が仕掛けたカードを取る絵空に不自然さを感じた。
「このカードを取れば勝ち」のわけがないと考えるのが絵空のはずだから、ここで真兔が手にすることになるカードを選んでいても面白かった。
でも、まさかの大逆転を楽しむストーリーなのでこれでいい。
真兔が勝つことで明かされた、鉱田さんへの隠し事もこの物語の重要な要素になっている。
「この世で一番大切なものは、何か」と問いかけた答えが最後に回収されて物語が終わる。
2025年の隠れ本屋大賞はこの本でもいいのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
おもろー。
若い子の真似したらそんな感想だろうか。
一歩間違うと「うちら天才、頭脳戦」のサムいやり取りになりそうなところ、
上手いこと魅せられてしまった。
ありがちな変な口調の人とかあまりいなかったからかな。
ゲームの基はみんなが知っているものだけに
導入部分もすんなり入ってくるし、
その中で繰り広げられる心理戦(と多少のイカサマ)が非常に面白かった…!
恐らく皆さん感じていることだとは思うけれど、
これは映像化するべき作品だと思う。
(ただ実写の場合相当演技が上手い子にしないと
変な学芸会になりそうな気もするので心配。
アニメの場合逆転裁判みたいな演出されそう…)
最後は勝つだろう、と思っていても
途中ピンチになりすぎるので大丈夫か?
ここからどう盛り返す?とハラハラするがそこは心配ご無用。
裏の裏の隅まで読み切って、勝ち抜いていく射守矢真兎。
(それにしてもすごい名前)
いいなと思ったのが、戦った相手が次は仲間になっているところ。
その時は真剣勝負で、相手を憎たらしいと思うけど、
こっちサイドになってくれると非常に心強い。
最後、続編も作れそうな終わり方だけどどうするんだろう。
作中で真兎をどうやって勝たせるかも重要だけど、
そもそものゲームを考えるのがかなり大変そう。
作者さんそういうのが好きなのかな。
結局物語の中も外も、切れ者だけが勝ち進んでいくのかも。
Posted by ブクログ
地雷グリコ
心理戦の先に得るものは文化祭での屋上使用権。デスゲームでないのが新鮮です。まあ流石に鈍い私でも見え透いた仕掛けですね。掴みとして最高。
坊主衰弱
これは特に工夫がなくて唯一イマイチだったかな。
自由律じゃんけん
自分で役を作るという斬新なジャンケン。1番タネがわからなくてマジックのようだった。
だるまさんがかぞえた
ルールの盲点を突く。漫画でいうと『ジャンケットバンク』型のバトル。そんなのあり!?と反則一歩手前の勝ち方。こういうのがやっぱりたまらん。
フォールームポーカー
ギャンブルものでポーカーが登場すると間違いなく傑作になるという私の法則(ただしワンポーカーは除く笑) 仕掛けの多彩さを考えると、流石にこれが1番かな。
全体的に高水準であるが、ギャンブルものとしては少し物足りない。決して、人が死なないからというわけではない。ではなぜか?短編集だからだ。
優勢劣勢が何度も入れ替わるなかで、苦境に立たされながらも、初期から仕掛けられていた思いも寄らぬトリックでひっくり返す。このカタルシスを存分に味わうためには短編では物足りない。
ぜひ続編では『嘘喰い』のエアポーカー、『ライアーゲーム』の密輸ゲーム、『カイジ』のEカード、『エンバンメイズ』の皆月戦に匹敵するほど、緻密でかつ奇想天外、手に汗を握るような心理戦を長編で一発お願いしたい。そして、オリジナルギャンブル小説は本作の大ヒットを機にもっと流行ってほしい。