あらすじ
いつか田舎の村を出て上京し、自分の人生を切り拓くことを夢見る天。天の幼馴染で、彼女に特別な感情を抱く藤生。その藤生を見つめ続ける、東京出身で人気者のミナ。佐賀の村で同級生だった3人は、中学卒業前、大人になったそれぞれに充てた手紙を書いて封をした。時は流れ、福岡でひとりで暮らす30歳の天のもとに、東京で結婚したミナから、あの時の手紙を開けて読もうと連絡が来て――。他者と自分を比べて揺れる心と、誰しもの人生に宿るきらめきを描いた、新しい一歩のための物語。
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Posted by ブクログ
読み始めた時は、なんだかよく分からない話だなと正直思った。それが読み進めるうちにどんどん引き込まれていった。
私も思春期の頃は都会に憧れて、早く地元を離れたいと思っていた。だから天の気持ちも分かるし、特有のイタさにも共感できる。
「他人の必死さを笑ったり、心配するふりして気持ちよくなったりする側より、笑われる側にいるほうがいい。」
この言葉に背中を押された。
Posted by ブクログ
『言葉はいっぺん相手にぶつけてしまったら、もう取り消すことなんかぜったいできないんだから。他人に向けた言葉が、自分自身にはねかえってきた。』p26
『わたしは彼女たちだったかもしれないし、彼女たちはわたしだったかもしれない。(中略)おしゃれをしていたら、家出をしたら、ひとりで歩いていたら、女の子は身体に触られたり、見たくもないものを見せられたり、殺されたりしてもしかたないんだろうか。』p35
『威張り散らしたり他人の大切なものをバカにしたりするのは、自分の好きなものを追い求めることよりもまっとうなおこないなんだろうか?』p64
『届かなかったもの。もう二度と触れられないもの。ぜったいに帰れない「どこか」。』p218
『神さまは見とらすよ。みんなのことをぜんぶ。でもただ見とらすだけ。そいけん、ずるくてもよかっちゃないとね、天ちゃん』p274
『必死になればなるほど空回りして、焦って、どうしてわたしはあの子じゃないの、なんて妬んでばかりで、そんな自分がいやだったけれども。』
『内側のことは他人の目には見えないし、わたしたちの目はいつだって、見たいものだけを見たいように見る。』p276
とても好きな作品でした。
田舎出身だからなのか、すごく刺さった。
自分も同じようなことを思っていたなあ。
理不尽に歯向かう勇気はなく、違和感を感じながら、心がちくちくしながらそのまま見ないふりをしてた。
でも、自分が自分であるために、家を出るっていうのは必要なことだったなと今思う。正直、馴染みのない土地で、誰も知らないなかで過ごすのはとても自由だった。
狭い世界だとどうしても、『どうしてわたしはあの子じゃないの』と思えてしまうけど、
世界はひろい。宇宙はもっと広い。
わたしはわたしでいいのだ。