あらすじ
目が覚めると、エレナ・ボールダーの世界はすっかり変わっていた。
目の前の美しい子爵・オスカーに「10日後に婚約破棄する」と告げられても、
婚約なんてした覚えもない。
聞けば、記憶を失う前の自分は、傲慢と悪名高い人物だったらしく――
「エレナ、いいところがないですね」
「本人である君に同情されるのは複雑なのだが」
婚約者として最後の10日間、ふたりの関係は次第に変化していき――
記憶喪失から始まる恋物語。
電子書籍限定、特別短編「青紫の追想」を収録。
時を経ても色褪せない、アドルナート卿の想いとは――。
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Posted by ブクログ
Web版を読んでいたので、書籍版でまた読めて感激。
しかも後日談まで完備とは嬉しい。
後日談の某キャラの采配がまたにくいのよ。
この作者さまの書かれるおじ様はイケオジなイメージなのですが、ここでも爆誕してしまった印象。
気になる方は、すぐに読むのだ。
転倒後に目覚めたら記憶を失っていたエレナの10日間の物語。
しかも10日後に婚約破棄がほぼ確定しているという。
そこからの逆転劇というか再生物語といった方がいいか。
記憶喪失ものと言いつつも、エレナの中身はほぼ別人。
感覚的には転生ものに近い。
かつて穏やかに夫婦生活を営みながらも若くして亡くなった女性の記憶を持ってエレナは目覚めた。
それまでにこの体が行ってきたこと、体感してきたことを全て忘れるという形で。
今にして思うと、これは代償だったのかなと思う。
再生のための代償。
だから、最後の10日目を迎えても彼女は……詳しくは本編にて。
別人の記憶を持って目覚めたため、エレナの性格は依然と全く別物になった。
なったがゆえに、過去の自分の話をとても客観視して判断できるように。
それが彼女が何故記憶を失うような大けがをしたのか、その謎解きのきっかけにもなっていく。
なお、この別人の記憶に関しては、ラストに一応謎解きがされる仕様である。
そして、そんな彼女の性格に振り回されつつ、惹かれていってしまうのがヒーローのオスカー。
かつてはエレナを嫌いまくって碌に接点を持たなかった彼だが、元々の性格は誠実でいい人。
エレナの今の性格によって彼自身もまたかつての行いを客観視できるようになり、反省し、エレナを救うために、ちょっと不器用で突っ走るところもありながらも成長していく。
彼がエレナに惹かれていくのは微笑ましくもあり、ただ置かれた状況が婚約継続を許してくれないのが切なくもあり。
エレナも誠実になった彼に惹かれていきながらも、自分に縛られてほしくないと婚約破棄を受け入れる覚悟。
切ない。
そもそも、二人の恋には障害が多かった。
エレナの実家の環境がそもそもよろしくない。
家族仲もそうだし、毒侍女もいるし。
また、前述通りエレナの怪我の原因にはちょっとしたミステリ要素も入っていた。
それを婚約破棄の10日間までに明らかにするという。
エレナの怪我というハンデを持ったまま。
難易度が高い。
そういった難しいところを乗り越えての逆転話になるので、嬉しさはひとしお。
すかっとできるような「ざまあ」展開がある訳ではないのだが(あるにはあるが、エレナが止めたためマイルドになった)エレナ自身望んでいた訳ではないし、今の二人にはそういうすかっと展開は似合わない気がする。
どうせ回り道したのだから、焦らず、ゆっくり、着実に進んでいけばいいのではないかなと。
書き下ろしの後日談はもう本当にニヤニヤ読めます。
冒頭に書いたとおり、ある方の行為がもうね、本当にたまらんね。
これでまた一歩成長するオスカーくんなのである。
Web版しか読んでいない方はもう是非読んでいただきたい。
オスカー、頑張ってますよ。
ちなみに、アニメイトで買うとついてくるSSでは、本編後のお出かけ話も読めます。
こっちは更なる未来を予感させる話で最高でした。
本当に何もかもありがたい書籍化でした。
ちょっと不思議で切ないお話でした。ハッピーエンドで終わるところも好き!今の2人なら記憶が戻ってもきっと大丈夫な気がする。
記憶の行方
最後までヒロインの記憶は、戻らなかった。でも、それはそれでヒロインの本当の人格が眠っていただけなのだろうと思いました。日にちが過ぎていくなかで、お互いのことを思うと涙腺が緩んでしまって。サクッと読めますが、決して軽いわけでなく心に残る作品でした。その後ももう少し読んでみたいです。
匿名
少し悲しくも思うハッピーエンド
婚約者から婚約破棄を告げられた直後に階段から転落し記憶を失ってしまった令嬢の物語
失ったと言うよりは、別の誰かの記憶に入れ替わってしまったよう。
かつて同じ世界に生きていたであろう誰か。
何故その記憶があるのかは分からない。
そんな状態で、元々の自分がどんな振る舞いをしていたかを知って行くが記憶が戻らず苦しむ令嬢。
そんな令嬢を見て、惹かれつつも、自身が令嬢に対して、全く真摯でも誠実でもなかったことを思い知る婚約者。
最後まで記憶は戻らず
そのままハッピーエンドとなります。
元々の令嬢の人格は、出てくることもなく
記憶を無くした後の令嬢以外、誰一人それを想うことなく。
なくなってしまったものは仕方がないとは言え
幼少の頃から、愛情に恵まれず、認められることもなく、憎まれ、唯一世話をしてくる侍女からさえも人として認められない境遇のまま
消えてしまった令嬢の元人格には
やるせなさを感じずにいられません。
あれ?
確かに表題どうりなんだけど、ここで終わってしまうの?これでは、ヒーローと結ばれたのかわからない。だって確定してないもの。
従姉妹は改心してなさそうだし、実家の方も問題が出てきたようだし、あの怖い侍女は?
続きはあるのでしょうか?
よくある話なんだけど
悪女の婚約破棄系でよくある話なのですが、婚約破棄までの期間を10日に絞りテンポ良く短くもまとめられていて良かったです。
階段から落ちたことで記憶をなくしたヒロイン。自身の悪女ぶりを聞き婚約破棄されても当然と思います。しかしヒーローにとってはこれまでと別人のように変わったヒロインに対して冷静になり、これまでの自身の態度も省み反省するきっかけになります。記憶をなくしたことで近づいた二人ですが期限は迫ります。
ヒロインが悪女になってしまった理由などヒロインが育ってきた環境を考えると切なくなりました。ヒーローが自身を反省してくれるような人で本当に良かった。またお医者さんとして出てきたジェイクも良いキャラでした。後半に出てくるヒロインの大叔父様も良いスパイスでした。一度読むと振り返る作品かどうかで評価をつけてますが、多分また読み返したりするだろうなぁと、この評価です。