あらすじ
猪狩雅志は高齢ドライバー事故のニュースに目を向けた。78歳といえば親父と同じ歳だ。妻の歩美と話しているうちに心配になってきた。夏に息子の息吹と帰省した際、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなく不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して……。父は運転をやめるのか。雅志の出した答えとは? 心温まる家族小説!
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Posted by ブクログ
老いていく両親、自分の仕事、息子との関係。問題が山積みの主人公でしたが、思考錯誤を重ねるうちに、どの問題もよい方に向かう兆しが出てきます。
問題があっても目を反らさないで取り組むことが大切なのだと感じました。
「八十歳近くになった今、振り返ってみると五十代がいかに若かったかがわかる。お前も悔いのない人生を歩めよ」
私は今、四十九歳。集中力も記憶力も落ち、自分が老いていくことを実感する日々ですが、「まだまだこれからできることはきっとたくさんあるはず」と心を軽くして暮らしていければと思いました。
Posted by ブクログ
高齢ドライバーによる事故の多発を受け、父親に運転を止めさせたいと考え始めた猪狩雅志は、最終的には仕事を辞めて田舎でスーパーの移動販売員になることを選ぶというストーリー。
免許を返納したくても、バスの本数も少なく、車なしでは暮らしが成り立たないという状態は、他人事ではないと感じる人が多いと思うが、この作品ではさらに、地域コミュニティの中での人との繋がりや、仕事の遣り甲斐、都会での消費•浪費中心のライフスタイルについても考えさせられる。
垣谷美雨さんの本はやっぱり面白い!
Posted by ブクログ
時々ニュースで見る高齢者の運転による事故。公共交通手段が消えていく過疎地域では運転をやめられない現実。離れて住む両親が高齢になった時子どもはどうするか。
またローン返済とある程度の生活水準を保つため共働きする親と、ひとりで過ごす子どもの気持ち。
共感できる点が幾つもあり読み易い。
結末は少し甘いというかそんなに上手くいくことばかりだろうかとついひねくれた考えを持ってしまうが、読み終えてホッとする本だった。
Posted by ブクログ
初めて垣谷さんの本を読みました。
ちょうど帰省した際、来年、自分の車を譲ってくれと言われた時、親父にまだ乗るの?と聞いたら、試験に受かったら乗ると答えられたところ。
ナウな話題だと思い、何の気なしに読んでみたらあっと言う間に読破!うちの家はここまで過疎ってないけど、似通ったところはあった。まー少し俺より上の世代かな。けど、それがまたやがて来る将来かと思い、考えさせられた。
主人公は結果的にものすごく柔軟に考えていると思う。人は人と関わることでしか喜びを得られないかもしれない、と何となく思う。
職業柄、こう言う生協のような移動式スーパーがあることは知ってたけど、割と楽しいのかもと思う。先日、知り合ったお客さんが今は福岡で野菜を中心とした販売店をしているけど、それまでは国の第三セクターの管理会社になるためのな提案書を作ったりしていたが虚しくなり辞めたと言う話を聞いた。今は毎日近所の寿司屋などの飲食店、主婦など常連さんと話しながら自分で野菜を仕入れて売っていて楽しいと言っていた。それに近いものを感じた。
自分も食品メーカーで営業をしているが、喜びを感じる時は本当にいいものが出来て、それが人に喜ばれた時。店で販売していた時、差し入れを持ってきてくれた人とか、ずっと作ってくださいね!って言ってくれた人や。。逆にありがとうございます、なんて言われて買ってもらったのになんで?って思う時も。
本を読んで、何だかそんな感覚を思い出した。
きっとそれが正しいことなんだろうなって思う。人間は老人になると子供になると言う言葉は印象的だったな。良い本だと思う。おすすめです。
Posted by ブクログ
うちの義父も運転をやめません。
少し違う部分ですが、
「今までずっと将来のためにと考えて、やりたいことを我慢して生きてきた」
この一文が今の自分に刺さりました。
受験に始まり、できるだけ前に進む道から逸れないようにとなんの疑問も抱かずに、今の今まできていますが、やりたいことをやれるのはいつ?と問われると、体が動きにくくなったあと、なのかもしれない…どうしよう。
免許に関しては、ある程度の年齢になると、必要性や個人の差など関係なく、返納する制度にしてもいいのではないか、それが理想な気がしてますが、現実的にはそうさせて、その穴をカバーでききれるもの、そういうものがない。
若いときには考えもしなかったことに、歳を重ねると気がついたりする。自分がそなの年代になったときはどう思うんだろう。
とまあ、色々共感したり考えたりさせられました。
Posted by ブクログ
高齢の父親に運転を辞めさせたい息子(雅志)が、どう父親に運転を辞めさせようか試行錯誤する話。
タイトルと装丁から本筋は捉えつつもなんとなくコミカルに進むような印象があったけど、雅志自身の都会での生活スタイル、子育てを振り返って高校生の息子に対して思う事など、高齢者ドライバー問題の他にも現代社会、子育て世代に問題提起しているような深い内容だと思った。
特に自分はまさに子育て世代で持ち家も購入し
ローンを組んでいる状況で、教育資金のことを夫と話すことも多く、かかる費用の膨大さに仕事は絶対に辞められないと思っているだけあって、胸に刺さるものがあった。お金と時間、単純に考えれば子供との時間が大切だと思うのに、子供と過ごす心の余裕や子供の将来を思うと、お金を優先しなければならないという状況になってしまうというやるせなさ。色々と考えされられた。
終盤、保守的だった雅志が自分の殻を破ってひまわり号を始めて色んな人と関わりが出来たこと、息子との関係も良くなっていくのを見て、人の温かさを感じて幸せな気持ちになれた。
軽い気持ちで助手席に乗ってみますか?と言ったのがきっかけで出来た"助手席予約ノート"
ラスト一行の"明日の予約は久子さんだ"
不意に涙ぐんだ。
素敵な終わり方でした。