あらすじ
36歳のOL・茅ヶ崎リナは、オフィスで降りかかってくる無理難題も、何のその。魔法のコンパクトで「魔法少女ミラクリーナ」に“変身”し、日々を乗り切っている。だがひょんなことから、親友の恋人であるモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになり…ポップな出だしが一転、強烈な皮肉とパンチの効いた結末を迎える表題作ほか、初恋を忘れられない大学生が、初恋の相手を期間限定で監禁する「秘密の花園」など、さまざまな“世界”との向き合い方を描く、衝撃の4篇。
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Posted by ブクログ
全体的に短編で読みやすいのに常識への揺さぶりが尋常じゃない。寓意小説らしく超現実的でもあるのに、どこか自分たちの生きる現実世界の延長のようにも感じられる。
「丸の内魔法少女ミラクリーナ」
魔法少女というものの持つ属性である、正義や幼さなどを活かして作品としての深みと面白みを確保している。27年目の魔法少女という始まり方から既に変だ。大筋はレイコの彼氏の正志を主人公レナが阻止するというものだが、その過程で魔法少女の在り方が問われる。正志の魔法少女としての正義の目的はレイコとの復縁があった。そして目的は次第に感謝による快感に置き換わった。正志の魔法少女としての在り方は純粋ではなく、本物ではない。本物の魔法少女の正義は、世界を守るという漠然とした幼い希望なのだ。そしてレナはその幼い希望を胸に大人として社会に適応している。二十代にローンで買った黒のセリーヌのバッグの中にポムポムがいるという状況も、大人として生きながらもうちに幼さを持っていることの比喩に思える。
「秘密の花園」
主人公千佳は小学校の頃の初恋の相手である早川くんを自宅に監禁し、自らの初恋と決別をつける。「丸の内魔法少女ミラクリーナ」とは逆に、過去と決別をつけることで社会に適応していく話だった。最終的な早川くんとの接触はキスと口淫で、口というのは体を一本の管と見立てた時の始まりに位置するものであって、その口に関する行為によっての決別は、自らの恋の遍歴の始まりを断つことでもあり、やはり口でなければいけなかったのだと思う。しかし「こんなまずい精液、初めてだな」という発言から、おそらく過去に経験はあり、キスも本当はしていたかもしれない。ただ、幼い頃のものへの執着という点では表題作とかなり似た作品となっている。
「無性教室」
この本の中で一番好きな作品だった。18歳まで性が禁止され、その中での若者の葛藤。性という世界の根幹を揺さぶることを、ここまで読みやすくしっかりと捉えるのは一筋縄にはいかないと思うが、そこは流石村田沙耶さんなので完璧にやってのけている。性別があるから恋があるのか、性別とは何なのか、面白いぐらいに揺さぶられる。性別のない環境では異性恋愛も同性恋愛も無性の人もいる。果たして性別とは何なのか。
途中のユキの語った未来の世界は消滅世界にも繋がるものだったことからも、村田沙耶さんにとって性に関する疑問提起はこの作品だけに収まらないのだと思う。
「変容」
世の中から「怒り」というものが消えていて、「なもむ」という流行語が生まれている。そして若者の性格は流行として作られていたという、今の世界の先にあるものとも捉えられそうな面白い作品だった。いかに人間のアイデンティティや感情というものが、個人のものでないかということを知らされた。「コンビニ人間」でも主人公は自分の周りの人の言動などの、環境を取り込んで今の自分を作り上げていた。結局は人間というのは社会に生かされているものであって、個人というのは儚く脆い。構造主義のような話でもあって、読んでいると自分って何なんだろうと思うような、読みやすさからは考えられないほど深いテーマを内包したものだった。
Posted by ブクログ
面白かった〜〜〜!
パワフルでコミカルでテンポがいい。
これまで読んできた村田作品の中では一番ライトで、たびたび声出して笑いながら読んだ。
表題作『丸の内魔法少女ミラクリーナ』そして『秘密の花園』『無性教室』『変容』の4篇を収録。
ダントツで面白かったのは表題作。
ストレス社会を"キュートな妄想"でやり過ごしている、自認・ベテラン魔法少女の茅ヶ崎リナ(36)が可笑しくも愛おしいキャラクター。
世間的にはいい大人とされる年齢の人間(たち)が、子供の頃の無垢をそのまま大事に胸に抱いて、真剣に再現し続けているちぐはぐさが絶妙で面白い。
漫才とかコントとかで演ってもきっと真っ直ぐに面白いと思う。そういうコミカルさがある。
『変容』も好き。
ファッションのように「人間の性格」にも時代によって流行りがある、なんていう着眼点がもう面白い。
村田沙耶香の造語は力が強い。
つい最近もポーポー様とかポピ原人とかポハピピンポボピア星とか読んだばかりだけど、今作に至っては、エクスタシー五十川に、なもむに、パブスピホムパに、まみまぬんでら……。
独特さと違和感とダサさと皮肉っぽさが上手〜くマリアージュしてる言語感覚だなあ、とか思って読んでた。
『無性教室』も良かった。
色彩としてはトーンが落ち着いていて、これもまた十代の私に読ませたかった、少年少女の性自認と、身体との向き合い方の話。
「性別が厳格に禁止」されている校則の学校、という発想が斬新。思考実験みたいで面白い。青春の香りもする。
『秘密の花園』は少し冗長だな〜と思いつつ、新しい恋をするために、過去に思い続けてきた初恋の人の"リアル"を直視することで自ら幻滅して次に進む、その方法が強引かつ暴力的で、読ませる引力があった。
村田作品の中では比較的推薦しやすいかも?
Posted by ブクログ
丸の内魔法少女ミラクリーナ
笑いと、村田沙耶香の「奪われたくない正義」のエッセンスが噛み合っていい一篇だった。
秘密の花園
グロテスクってこういうことを言うんだろうな…と思った。しかし、爽快感。気分のいい読後感が、妙で、楽しい。
無性教室
青春だなあ……。ちょっと切なさもあり。でもハッピーエンドにしちゃうのは、村田沙耶香のいいところ。この人はハッピーエンドしか書かない。
変容
村田沙耶香は本当に、架空の「変容」を描くのがうまい…と書こうとしていたのだけど、それすらパブスピホムパの手のひらの上だったらどうしよう?と今思っている。正直、めちゃくちゃ笑ったし、この作品がこの本の中で一番好きだ。そして「変容」できない五十川さんに美しさすら感じている、今。
全体的に村田節の刺さる、なもむ一冊でした。
Posted by ブクログ
〇丸の内魔法少女ミラクリーナ
36歳のリナが、魔法少女となっていくくだりから既に面白い。ミラクリーナでいる時は、仕事場とかからの評価は高かったが、ミラクリーナでなくなる後半では、冷たくなっていく展開が見どころでした。レイコとの魔法少女ごっこを聞いた正志が、興味を持ち、マジカルレイミーになるくだりも面白かった。優先席のシーンにおいて、正志が妊婦さんに話しかける場面がありましたが、妊婦だと信じませんでした。そこに、初代マジカルレイミーのレイコが現れ、ケンカをするシーンが良かったです。ミントスプラッシュが面白い。
〇秘密の楽園
主人公の内山が、早川君を監禁するという奇妙なお話。初恋の相手を期間限定で、監禁する、お話でしたが、この話も村田沙耶香さんワールド全開でした。最初は、内山は、恋愛というものがよく分からず、早川君を監禁することで、早川君の好きが垣間見えているような気がしますが、最終的に、嫌っていくくだりが面白かったです。監禁といっても、一風変わったところが良かったです。
〇無性教室
性別というものが、なくなった世界においての、とある教室でのお話。主人公のユートは、女性ですが、あの子は、男性と女性どちらなのだろう?と推測していく展開が良かったです。ユキが校則を破り、女性になっていく瞬間は印象的でした。ラストシーンのユナとユートが交錯していくところも、何とも言えない感情になりました。
〇変容
哲学的なお話で、少し自分には難しいお話であったと振り返りますが、良かったです。エクスタシー五十川のくだりが、面白かったです。なもむって、いったい何なのだろうと、考えさせられる読書体験でした。