あらすじ
36歳のOL・茅ヶ崎リナは、オフィスで降りかかってくる無理難題も、何のその。魔法のコンパクトで「魔法少女ミラクリーナ」に“変身”し、日々を乗り切っている。だがひょんなことから、親友の恋人であるモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになり…ポップな出だしが一転、強烈な皮肉とパンチの効いた結末を迎える表題作ほか、初恋を忘れられない大学生が、初恋の相手を期間限定で監禁する「秘密の花園」など、さまざまな“世界”との向き合い方を描く、衝撃の4篇。
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Posted by ブクログ
村田沙耶香の作品に共通するテーマは、セクシャル及びジェンダーの常識や定説に対する忌避感であると思う。女性が被る男性性からの抑圧や差別、性行為で直面する男性優位。著者はそのような状態からの脱却を試みる。
しかも、完全にないものにするのではなく、無味無臭で高尚な営みへと変換するのだ。登場人物や設定が提示する身体性からの脱却と再結合に読者は不信感を抱く。その不信感を持つこと自体、常識やイデオロギーに覆われているということを読者は自ずと認識し立場を危うくする。
そういった観点から「無性教室」をおすすめする。
舞台となる学校は「性別」が禁止される。真っ白な校舎はその中性的な空間の象徴であろう。
性別を意識しない環境の中で、主人公ユートはある同級生へ恋をする。それは純粋無垢な精神的な恋ではなく、身体的な生々しさを伴う性愛も含むものである。ユートは自身の性による身体的特徴に戸惑い、一方性が隠蔽されている環境に不安を覚える。
突拍子もない舞台設定で繰り広げられる衝動的な愛と性の形。社会構造や周囲の環境で形成されているかもしれない「普通」の恋愛模様とは違う、身体を伴う関係性を疑う契機を読者に与えてくれる。
その中でたどり着く答えは、ぜひ本作品を読んでほしい。クライマックスの描写は筆者の神髄である。完全に私的であるはずの体験を徹底的に抽象化、無個性化するこの場面は、著者の執念を感じる。
村田沙耶香の最新作「世界99」が2025年話題になって久しい。遂にキノベス!2026も受賞した。著者の現時点の最高到達点であるであろう、ぜひとも読んでみよう。
Posted by ブクログ
全部で4本の短編を収録している短編集。
全部の作品がってわけではないけど、
わりとシリアスな状況なのに傍から見ているこっちとしては笑ってしまう荒唐無稽さがたまらない。
それで、これまた全部の作品ではないけど、
我々人間の中に存在するものを1つ制限するだけで、
これほどのディストピア感を出すことができるなんて、
驚きとともに今の人間社会がたったそれだけのことで
大きく変わってしまうのではないかという恐怖も感じた。
しかも読んでいて段々とそれが正しい形だったかのように思えてくるんですよ。
まさに4本目のタイトル通り、私たち読者はこの本を読んでいる間に『変容』してしまっているという……
全体を通して私が感じたのは、
この短編集は自分の中のなにかを壊す話だったということだ。
それは過去の思い出なのか、初恋の幻想なのか、性別の壁なのか、怒りという感情なのか……。
壊すというと聞こえは悪いかもしれないが、
創造的破壊であることは共通している気がする。
新たな一歩を歩むためには内にあるなにかを壊さなければならない、そのことを実感させてくれる、作品群だったように思います。
Posted by ブクログ
すきー!特に
ミラクリーナはかなり笑えるし、元気が出る。小学生の時のごっこ遊びを心の中でずっと続けているっていう設定、ちょっと気持ちわかるし、キュート。魔法少女(30代)はいくつになってもみんな可愛い!スカッとした。
無性教室は、すごい話。村田沙耶香の「性」をテーマにしたお話はエグくてあんまり好みじゃないけど、この話はすごく良かったなあ。ユキ、かっこいい!自身の性と性的指向、主張に悩みながら正解を求めて葛藤していく「僕」たちがとても魅力的で、みんな愛しい。最後、耽美でドキドキした…。
Posted by ブクログ
かつて女の子だった女性のための短編集。
いや男の人でも読めるかもしれないけど、わかる、と頷くのは女性じゃないかな。
「丸の内魔法少女ミラクリーナ」
小さい頃のごっこ遊びをずっと続けて、トイレで魔法のコンパクトで変身すればクソみたいな仕事でも機嫌良くいられる。このマインド、本当に宝なので貴重すぎる。
友人のレイコのDV最低彼氏がマジカルレイミーとして駅を徘徊するが、ただの正義厨になってしまい最後は二人で退治する。よく分かんないけど爽快感がある。最後に死んでいたポムポムがフルラのポーチの中から起き上がるところ好き。
「秘密の花園」
小学生から心の中で育ちまくった初恋を終わらせるために初恋の男の子を監禁する話。オチがどうなるか全く分からなかった。現実の醜い男との決別で新しい恋をする。大丈夫?仕返しされない?
蛙化現象、というのが女性の方に多く聞く言葉なので分かる話だなと思った。
「無性教室」
性別を分からなくさせる校則の学校で恋をするユートという女の子の話。性別があるから好きなの?というテーマなんだと思うし、あえて生々しい性器や生理の描写を入れたんだと思うけど、それでもあまりにもギムナジウムでBLGLの波動が強すぎて消し炭になりそうだった。設定面白い。
「変容」
世にも奇妙な物語だー!謎の疾走感とシュールな笑いで一番好きかも。最近の若者、に怒りという感情がなくなっている。怒りって必要なことじゃないの!?なんか気持ち悪いよ、ってなる主人公が、変容していく話。
なもむなーーー!!に笑ってしまった。
まみまぬんでら、すなーー!!
ワンピースの上に腹巻きを巻くな!
でも萌えもエモもメロも、その数年前にはなかった言葉だけどいま定着してるのを見ると、全く「無い」話では無いのかもしれない。
Posted by ブクログ
表題作のインパクトが凄すぎて、このお話がトップバッターで大丈夫?他のお話が霞んでしまうのでは?と思いながら読み進めたら、杞憂杞憂。
どのお話もぶっ飛んでる(褒め言葉)
中でも『変容』が自分には身近なテーマだった。○○世代と名付けて、乱暴に一括りにしてレッテル貼りするあの流れがどうしても頭に浮かぶ。
表題作や『無性教室』では、世間という見えない強制力に対してそんなんしらねー‼︎と最終的に自分の感情に正直に行動している。
ところが『変容』では、実は誰かに共感したり同化したかっただけで、「怒り」自体を大切にしていた訳ではなく、まわりに流されるオチになっている。怖くもあるし、理解もできるしで、収録作で一番感情を掻き乱された。
村田さんの作品、いつも劇薬すぎる。
Posted by ブクログ
短編集で文章も固くないので、どんどん読み切れた。一人一人を客観的に見ると最高に狂っているのに、心情を知るとなんだか納得できてしまう不思議さ。それが、気持ち悪くもあり、心地よくもあり。やっぱりそれぞれに自分なりの正義があって、その人からしたらそれが正しい、でも他の人から見るとそれはおかしい、というのは当たり前なのかもしれない。どんなに世間に紛れていても、心の中はミラクリーナのままかもしれないし、好きな人を監禁したいと思っているかもしれないし、性について悩んでいるかもしれないし、感情を爆発させているかもしれない。
特に、「無性教室」を読んで、「性」というものについて、じっくり考えた。私は、人が人を好きになるというだけだから、その対象は異性でも同性でも良いと思っている。周りに同性愛者もいるし(友人にも、家族にも)、何も偏見は無いと思っている。校内では性別が分からないという狭い世界での話だが、その中でも当たり前に恋愛は存在する。その人たちにとって、人を好きになるのに、性別は関係ないのだ。男女関係なく、ただ、純粋にその人「個人」の事が恋愛対象になる。つまり、フィルターが何もかかっていない。それって凄く清くて美しい恋なのではないか……?と思うのと同時に、じゃあ恋愛ってなんだ……?性別って……?とはてながいっぱいになった。私は身体は女性、性自認も女性。だから違和感なく生きていけているが、無意識のうちに恋愛対象は男性に限っていることに気付いた。そして、男性であるかどうかというフィルターを通して人口の半分を振るいにかけてから恋をする。それは、個人を恋愛対象にする人たちと比べてどうなのか。もしも、今の恋人が同性だったとしたら……?それでも、恋愛関係になっているだろうか。私は、たぶんだけど、Noだ。もちろん彼の事は大好きだ。だけど、「例えどんな姿に生まれ変わっても、また恋人になりましょう……(涙を流す)」とは、ならない。それってほんの少しだけ不誠実なのか……?とも思ったけれど、人間の本能的なことを考えれば、むしろそのフィルターは誠実なのかもしれない。もちろん結婚願望は人並みにあるし、子どもも欲しい。だから私の望む幸せのためには、潜在的に男性を求めるのは正しいともいえる。だけど、それはあくまでそのステレオタイプの恋愛、からの温かい家庭、これを幸せと定義づけている場合に限って有効だ。世間一般的な幸せは、果たして自分にとっての幸せなのか?そして、彼にとっても幸せなのか??むむむ。難しい。
そんな事を彼が仕事中で居ない部屋で考え、その日の夜彼とも話をした。こういう話がちゃんとできる人と一緒に居られるのが嬉しい。いろいろタラレバも考えたけど、私は今、貴方と居るのが幸せだし、貴方の事が好きなので、それでいいと思う。
Posted by ブクログ
村田沙耶香の作品は突飛な設定があることも少なくない。その「まさか」の部分が結構好みで楽しみに読んでいるけど、好みが分かれる部分だと思う。
4編どれもが村田沙耶香色が効いていて良かったが、特に「無性教室」には私の中の「当たり前」をひっくり返してハンマーで粉々にされたくらい衝撃を打たれた。性別の在り方、誰を好きになるのか、もそうだし性別を知らなくても相手を愛することができる、ということをなんか忘れていた。よく考えたらそうなのに。本当にすごい、としか言えなかった。自分がこうすべきと思っている「当たり前」ってどこから生まれたんだろう?と考えた。いい物語でした。