あらすじ
36歳のOL・茅ヶ崎リナは、オフィスで降りかかってくる無理難題も、何のその。魔法のコンパクトで「魔法少女ミラクリーナ」に“変身”し、日々を乗り切っている。だがひょんなことから、親友の恋人であるモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになり…ポップな出だしが一転、強烈な皮肉とパンチの効いた結末を迎える表題作ほか、初恋を忘れられない大学生が、初恋の相手を期間限定で監禁する「秘密の花園」など、さまざまな“世界”との向き合い方を描く、衝撃の4篇。
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Posted by ブクログ
すきー!特に
ミラクリーナはかなり笑えるし、元気が出る。小学生の時のごっこ遊びを心の中でずっと続けているっていう設定、ちょっと気持ちわかるし、キュート。魔法少女(30代)はいくつになってもみんな可愛い!スカッとした。
無性教室は、すごい話。村田沙耶香の「性」をテーマにしたお話はエグくてあんまり好みじゃないけど、この話はすごく良かったなあ。ユキ、かっこいい!自身の性と性的指向、主張に悩みながら正解を求めて葛藤していく「僕」たちがとても魅力的で、みんな愛しい。最後、耽美でドキドキした…。
Posted by ブクログ
本って心の処方箋。ここんところ世の中のなんともいえない『変容』に「なもんで」(そういう使い方じゃない!)いたのでまさにドンピシャでした。意外にもエロ多め。
表題作の『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は『コンビニ人間』の流れを思わせつつ始まるも「そこいくかぁ」という今を描いててニンマリ。『秘密の花園』はタイトルからは想像できない世界でまさかのチ◯コ舐めという……。
『無性教室』はなかなかに衝撃的。近未来のエリート学校(?)が舞台なんだけれど性別が消されている。やがて社会は性別を停止して性行為をのみ楽しむという? 子供は科学的に作られる。そこに私はリアルワールドのこの少子化問題に世界がのほほんとしている理由を見たわ。こないだある人が「世界は何十年か前に少子化を目指して今はそれが成功したところです」って言ってたのに驚かされたけど、まぁそうなんでしょう。いったん人を少なくして住みやすい地球にしてからデザイナーベイビーの時代がくるのね。
圧巻は最後の『変容』でした。大好きな『アサッテの人』に負けないおバカさのあるお話。でも完璧なまでの風刺物。この世界から「怒り」が無くなっているんですね。特に若い人。私もここ数年1億人近い日本人が怒らないことが不思議でならなかったのですが、まぁこの本を読んでその理由がわかったということはないんですが、少なくとも村田さんも同じように感じているのかなと。笑えるのは70代の怒れる五十川さんを見て若い人が「すごくなもむ」って言うんです。
「わかる。なもむよね、彼女を見てると」
「あんなに『怒る』人、久しぶりにみたもんなあ」
「すごくなもんできたよ」
「私も、すごいなもむ」
五十川さんが皆の中央で足を踏み鳴らして怒鳴った。
「なもむな!!」
なんだかわからんけれど、わかるわ。世界はぜんぶつながっている。
Posted by ブクログ
かつて女の子だった女性のための短編集。
いや男の人でも読めるかもしれないけど、わかる、と頷くのは女性じゃないかな。
「丸の内魔法少女ミラクリーナ」
小さい頃のごっこ遊びをずっと続けて、トイレで魔法のコンパクトで変身すればクソみたいな仕事でも機嫌良くいられる。このマインド、本当に宝なので貴重すぎる。
友人のレイコのDV最低彼氏がマジカルレイミーとして駅を徘徊するが、ただの正義厨になってしまい最後は二人で退治する。よく分かんないけど爽快感がある。最後に死んでいたポムポムがフルラのポーチの中から起き上がるところ好き。
「秘密の花園」
小学生から心の中で育ちまくった初恋を終わらせるために初恋の男の子を監禁する話。オチがどうなるか全く分からなかった。現実の醜い男との決別で新しい恋をする。大丈夫?仕返しされない?
蛙化現象、というのが女性の方に多く聞く言葉なので分かる話だなと思った。
「無性教室」
性別を分からなくさせる校則の学校で恋をするユートという女の子の話。性別があるから好きなの?というテーマなんだと思うし、あえて生々しい性器や生理の描写を入れたんだと思うけど、それでもあまりにもギムナジウムでBLGLの波動が強すぎて消し炭になりそうだった。設定面白い。
「変容」
世にも奇妙な物語だー!謎の疾走感とシュールな笑いで一番好きかも。最近の若者、に怒りという感情がなくなっている。怒りって必要なことじゃないの!?なんか気持ち悪いよ、ってなる主人公が、変容していく話。
なもむなーーー!!に笑ってしまった。
まみまぬんでら、すなーー!!
ワンピースの上に腹巻きを巻くな!
でも萌えもエモもメロも、その数年前にはなかった言葉だけどいま定着してるのを見ると、全く「無い」話では無いのかもしれない。
Posted by ブクログ
凄く面白かった。
ずっと気になってたけど読んで本当に良かった。
村田さんはコンビニ人間しか読んだこと無かったけど、やっぱり世界を捉える感覚とかがぶっ飛んでるなぁと感じる。
色んな価値観についての短編集と言う感じだけど、どれも爆笑しそうになるところもありつつ凄く考えさせられる。
個人的には学生の頃は性別を無くして過ごす話と、喜怒哀楽の怒ると言う感情は古いと言う短編が心に刺さった。
いつかは性別なんてものは完全に無くなる世界が来ると言うのもありそうだし、喜怒哀楽はファッションと同じでトレンドを誰かが作っていくと言うのも興味深かった。
これを機に他の作品も是非読んでみたい。
Posted by ブクログ
短編集で文章も固くないので、どんどん読み切れた。一人一人を客観的に見ると最高に狂っているのに、心情を知るとなんだか納得できてしまう不思議さ。それが、気持ち悪くもあり、心地よくもあり。やっぱりそれぞれに自分なりの正義があって、その人からしたらそれが正しい、でも他の人から見るとそれはおかしい、というのは当たり前なのかもしれない。どんなに世間に紛れていても、心の中はミラクリーナのままかもしれないし、好きな人を監禁したいと思っているかもしれないし、性について悩んでいるかもしれないし、感情を爆発させているかもしれない。
特に、「無性教室」を読んで、「性」というものについて、じっくり考えた。私は、人が人を好きになるというだけだから、その対象は異性でも同性でも良いと思っている。周りに同性愛者もいるし(友人にも、家族にも)、何も偏見は無いと思っている。校内では性別が分からないという狭い世界での話だが、その中でも当たり前に恋愛は存在する。その人たちにとって、人を好きになるのに、性別は関係ないのだ。男女関係なく、ただ、純粋にその人「個人」の事が恋愛対象になる。つまり、フィルターが何もかかっていない。それって凄く清くて美しい恋なのではないか……?と思うのと同時に、じゃあ恋愛ってなんだ……?性別って……?とはてながいっぱいになった。私は身体は女性、性自認も女性。だから違和感なく生きていけているが、無意識のうちに恋愛対象は男性に限っていることに気付いた。そして、男性であるかどうかというフィルターを通して人口の半分を振るいにかけてから恋をする。それは、個人を恋愛対象にする人たちと比べてどうなのか。もしも、今の恋人が同性だったとしたら……?それでも、恋愛関係になっているだろうか。私は、たぶんだけど、Noだ。もちろん彼の事は大好きだ。だけど、「例えどんな姿に生まれ変わっても、また恋人になりましょう……(涙を流す)」とは、ならない。それってほんの少しだけ不誠実なのか……?とも思ったけれど、人間の本能的なことを考えれば、むしろそのフィルターは誠実なのかもしれない。もちろん結婚願望は人並みにあるし、子どもも欲しい。だから私の望む幸せのためには、潜在的に男性を求めるのは正しいともいえる。だけど、それはあくまでそのステレオタイプの恋愛、からの温かい家庭、これを幸せと定義づけている場合に限って有効だ。世間一般的な幸せは、果たして自分にとっての幸せなのか?そして、彼にとっても幸せなのか??むむむ。難しい。
そんな事を彼が仕事中で居ない部屋で考え、その日の夜彼とも話をした。こういう話がちゃんとできる人と一緒に居られるのが嬉しい。いろいろタラレバも考えたけど、私は今、貴方と居るのが幸せだし、貴方の事が好きなので、それでいいと思う。
Posted by ブクログ
村田沙耶香の作品は突飛な設定があることも少なくない。その「まさか」の部分が結構好みで楽しみに読んでいるけど、好みが分かれる部分だと思う。
4編どれもが村田沙耶香色が効いていて良かったが、特に「無性教室」には私の中の「当たり前」をひっくり返してハンマーで粉々にされたくらい衝撃を打たれた。性別の在り方、誰を好きになるのか、もそうだし性別を知らなくても相手を愛することができる、ということをなんか忘れていた。よく考えたらそうなのに。本当にすごい、としか言えなかった。自分がこうすべきと思っている「当たり前」ってどこから生まれたんだろう?と考えた。いい物語でした。
Posted by ブクログ
丸の内魔法少女ミラクリーナ
茅ヶ崎リナ
魔法の国から不思議な動物ポムポムがやってきて、魔法のコンパクトをくれた。ジュエル・スターが埋め込まれたコンパクトに向かって呪文を唱えると、魔法少女ミラクリーナに大変身する。という「設定」を小学3年生の春に始めた。三十六歳。魔法少女を始めて27年目に突入。
レイコ
リナの小学校からの友達。マジカルレイミー。
正志
レイコの彼氏。レイコと仲直りするために、二代目マジカルレイミーとなってパトロールをする。
秘密の花園
内山千佳
早川を監禁している。
早川
千佳と同じゼミ。
亜里沙
早川の彼女。
ナツキ
木村
コンビニの店員。
無性教室
ユート
優子。
ユキ
コウ
ミズキ
セナ
変容
川中真琴
40歳になって再びファミリーレストランで働く。
高岡
ファミリーレストランの大学生アルバイト。
雪崎
ファミリーレストランの大学生アルバイト。
裕二
真琴の夫。
純子
真琴の大学時代からの親友。
エクスタシー五十川