あらすじ
魔女はすべてを覚えている。
ひとの子がすべてを忘れても。どこか遠い空の彼方へ、魂が去って行こうとも。
そして地上で魔女たちは、懐かしい夢を見る。記憶を抱いて、生きてゆく。
その街は古い港町。
桜の花びらが舞う季節に、若い魔女の娘が帰ってきた。
赤毛の長い髪をなびかせ、かたわらに金色の瞳をした使い魔の黒猫を連れて。
名前は、七竈・マリー・七瀬。
目指すは、ひとの子たちが「魔女の家」と呼ぶ、銀髪の美しい魔女二コラのカフェバー。
懸命に生きて、死んでゆくひとの子と、長い時を生きる魔女たちの出会いと別れの物語。
―――
魔女たちの物語は、物語の形を借りた、わたし自身の想いであり、言葉でもあったのだろう、といまになって、気づいています。
何の力も持たず、歴史を変えられもしない、一本の糸に過ぎないわたしが、誰かのささやかな愛すべき日常に寄り添い祝福し、
不幸にして斃れたひとびとにさしのべたかった「腕」が、この物語だったのだろうと。
そう、わたしには魔法の力はなく、この物語もいつかは忘れ去られてゆくでしょう。
けれど、この物語にふれたどなたかが、ふと、これまで地上に生きてきた一本一本の糸に思いを馳せてくださるなら、
わたしの言葉はそのとき、魔法になるのだと思います。
村山早紀(「あとがき」より抜粋)
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Posted by ブクログ
現代日本でこっそり生活する魔女たちのお話。
どのお話も心温まるものばかりでとてもよかったです。何話かは泣きながら読んでいました…。電車とか外で読む際は要注意。
雨のお話が一番好き。
Posted by ブクログ
悲しみと優しさが絶妙にブレンドされてて良い
ファンタジーだけど、魔法のような力が存在すると思うと日々を楽しく過ごせそう
戦争で理不尽な命の失い方をしている人も現在もおり、自分の日常がこんなにも当たり前に平和である事が奇跡的であることに感謝しかない
胸がギュッとなり涙が溢れたサンライズ・サンセットが好き
Posted by ブクログ
寝る前に1話ずつ読み、今夜で終わってしまう悲しさよ。
出会いと別れが切ないけれど、ホッとする様な暖かさに包まれる感じがとても好き。人と人ならざるものとも関係なく、互いを想い合う心や魂が温かい。装丁も好き。
読み終わってしまった。
穏やかな気持ちに包まれて、切ないけれど素敵なお話をありがとうございました
Posted by ブクログ
遠い約束/天使の微笑み/雨のおとぎ話/月の裏側/
サンライズ・サンセット/ある人形の物語/
エピローグ 貝の十字架
人は寿命が尽きたら身体が動かなくなるけれど、魔女は消えてしまうという。長い年月の彼女の想いも一緒に消えてしまうはずがないと信じたい。人の命が輪廻の流れに乗るように、魔女の想いも輪廻の流れにのっているといいなぁ。
Posted by ブクログ
ある寒い春の夜から始まる、ある街の魔女にまつわる物語。
一つ一つの物語、そして文章、単語の一つ一つに至るまでも夜空の星のようにきらきらと輝いているような印象を受けました。
魔女たちの起こすほんのちいさな奇跡。それらすべてがいとおしいです。
長い寿命と不可思議な力をもつ魔女から人への思いを『片思い』と称したのが素晴らしい。
彼女たちのあたたかくも切ない片思いが、本当はそこら中に溶けているのかもしれません。
村山先生の本をもっと読んでみたくなりました。
読んでみるとふっと心が軽くなるような、本当に、魔法のような素敵なお話です。
Posted by ブクログ
単行本からの置き換えですが、文庫本で村山早紀さんのあと書きが追加されています。今の新型コロナやウクライナと、理由もなく罪もなく亡くなっていく方々にとても辛い気持ちを抱えつつも、この本が心に癒やしをもたらせてくれることを願う言葉には、村山早紀さんのお人柄を改めて感じることができる内容でした。
以下は、単行本の時の感想をコピペしただけですが、皆様の心を癒してくれる1冊になることを、私も願いたいです。
〜単行本の感想〜
『魔女の宅急便』や『魔女の旅々』といったアニメ作品にも似て、一つ一つのエピソードが色んな味わいを楽しめる紅茶の詰め合わせのような、とても温かさを感じる作品でした。
同じ紅茶でも少しだけ色味が違ったり、時に甘く、時に甘酸っぱく、それでも読み進めていくにつれて美味しさが滲み出てくる。素敵な時間を過ごせたと思います。
魔女という存在は、人々にとって砂糖のような存在なのかもしれませんね。
ゆったりとした時間を紅茶と共に過ごしたい人にオススメしたい作品でした。
Posted by ブクログ
たくさんの情景が浮かんできてとても楽しかったです。魔女になりたかった子供の頃を思い出させていただきました。…魔女はいるのかもしれません/•᷅•᷄\୭
単行本で読みましたが、書籍を置くスペースを減らすべくまた文庫で買い直し再読。読むのに夏の暑さや日々の忙しさに読了にほぼ2ヵ月掛かってしまいました。
Posted by ブクログ
長い長い時を過ごす魔女たち。彼女らから見ると短命な人々とほんのひとときを共に過ごし、去っていく。たくさんの出会いと別れを繰り返す。
しかし、一つ一つの出会いが思い出となり、愛おしく感じている。
私たちが過ごす日常は、だれの記憶にも残らない吹けば飛ぶような儚いものである。けれどそのひとつが積み重なって、人生が交差して、時は流れている。
魔女たちはそんな人々の時の流れをあたたかく包むような優しさと共に見守っている。
そんなゆっくりと穏やかなファンタジー。
Posted by ブクログ
ジャンル的にはファンタジーかもだけど、中身は泣けるヒューマンドラマ系のお話です。
人間よりも長生きで、人助けが好きな、魔女という種族と、そんな魔女に出会った人間たちのお話です。舞台は海辺の街で魔女は主に海辺の街を訪れた若い魔女の七瀬と街を守護する魔女のニコラ。
そんな2人と各章毎に出会う人間たちが主な登場人物です。寂しくて、切なくて、優しくて、暖かいお話で、各章毎に涙が出てきてとまりませんでした。
今ある日常を大切に過ごそうと思えるそんな1冊でした。
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身近なようなファンタジーのような。
長い時を生きる魔女だからこそ見えるもの。
良いことも悪いこともすべて。
不思議な感じと切ない感じと
ゆっくりしっとり読みたい作品。
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表紙と題名が素敵でずっと読みたかった本。
実際に本物の魔女が出てくるお話。
外国のファンタジーではなく、日本的で、不思議な雰囲気。
「眠りを守る」という題名のように人間を愛し、見守り続ける魔女達のお話。
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人の子の暮らしのすぐそばで、長い時を生きる魔女たちは暮らしている。魔女たちにとって人の子の一生は一瞬のものだけれど、それでも、出逢った人たちのことを魔女は忘れない。人の子のささやかな想い、懸命な願いを陰日向に支える魔女たちは、儚い命の思い出を優しく暖かく抱きしめ、魂の眠りを守る。
生きることへの愛に溢れた作品。人間を愛おしく思う気持ちが湧き上がってきて切なくなる。
Posted by ブクログ
目に見えない存在を信じる事は、とてもあたたかく平和をもたらす事なのだと思いました。
生きる年月がとても長い魔女。それに比べたら人間の生きる時間はとても儚い。けれども、時の流れの中でたくさんの命が理不尽にも奪われる過去がある。それでも魔女は手を差し伸べ、いつの時代も見守り祈っている。安らかな夜が訪れるように、と。
魔女を見たことはありませんが、その存在はいると思う。いると思う。それだけでも、何かに守られている気がするのは、もしかしたら魔法なのかなと信じたいです。
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☆4.5
以前「風の丘のルルー」を読んだ事があるのですが、そんなルルーのお話を思い浮かべながら本作を読ませて頂きました。
とても切なくて…涙が流れてしまう場面もありましたが、読んで良かった!出会えて良かった!と思えた素敵な作品です。
私が住んでいるこの街のどこかでも、魔女が見守っていてくれたらいいなぁと思いました❁⃘*.゚
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小さい頃に憧れていた『魔女』。
だけど、魔女は人間よりもずっと長生き。
周りの『人』と仲良くなってもずっと一緒にはいられない。それは、どんなに孤独なことだろう?
それでも、魔女達は人間の幸せを思い優しく見守ってくれている。優しい優しいお話し。
Posted by ブクログ
こどものころから繰り返し読んできた、ぶっきらぼうでもあたたかな魔女たち。彼女たちでさえ年下になりつつ(?)あることには驚くが、親愛は変わらない。先輩魔女が大好きなので、ニコラにスポットが当たった「天使の微笑み」の中のあんまり美しい挿話にぐっときた。
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魔女には小さな頃から憧れている。
このお話のように、魔女はどこかにひっそり人に紛れて暮らしていて、気づかないうちに守ってくれてたらいいなぁと思わせてくれる優しいお話。
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魔女が本当にいたら是非とも友達になって、どんな旅をしてきたのか話を聞きたいです。
自分に使ってもらう必要はないけど、ほうきで飛んでる姿とか魔法を使ってるところを見せてもらいたいな。
Posted by ブクログ
七瀬という魔女の主人公を取り巻く短編集。
ほとんどの話が「死んでしまった人物や生物との交流」に主眼を置いていおり、ノスタルジーに近い感傷を喚起させる。
絵本を思わせる平易でやさしいタッチの描写は、洗練された文章とは言えないかもしれないが児童向け作家出身の作風がよく表れていて印象的だった。
反面、迫害されてきた人々や人間に場所を奪われた生物たちが登場する一方で、人の醜い面に対してスポットを直接当てることがないため、かなり角が取れた話になっているなと思った。
登場人物がみなクリーンすぎる、と言ってもいいかもしれない。
悪人の存在は描写されず人間はひたすら庇護を受けるばかりで、「人間に対して甘すぎるのではないか」とすら思ってしまった。