あらすじ
1948年、終戦後の日本。中学2年になったイコの周囲には、やけどを負った同級生や傷痍軍人の物乞いなど、今だ戦争の傷跡が多く残されていた。母を早くに亡くしいつも心のどこかに不安を抱えるイコだったが、英語の授業で習った【~ing=現在進行形】にがぜん夢中になる。「現在進行形、今を進むという事!」急展開で変わっていく価値観に戸惑いながら、イコは必死に時代をつかもうとする。そして「いつかどこかへ行きたい。私ひとりで」そう強く願うようになる。でもまだ、日本からの海外渡航が許されない時代。手段も理由も見つからないまま大学を卒業したイコに、ある日大きなチャンスが巡ってくる……。「魔女の宅急便」の著者・世界的児童文学作家、角野栄子の『トンネルの森 1945』に続く自伝的物語。戦後の日本を舞台に、懸命に自分の路を探す少女の成長をエスプリとユーモア溢れるタッチで描く著者の原点ともいうべき作品。87歳、角野栄子は今も現在進行形だ!
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Posted by ブクログ
本書より引用
「行ってしまいましたねえ、嬉しいことなのに、やっぱりさびしいわ……。さびしいけど……行くって事は、帰ってくるってことよね」
(歩くのよ。進むのよ。出会うのよ。見るのよ。わくわくするのよ。十三歳の時、『現在進行形』そう決めたんでしょ)
「日本は美しい。それはなくなってない、と世界の人に知ってもらいたい。じゃないと戦死した友人たちに申し訳ない。美しいものを描かないとね。敗けたんですから」
「私には自由がある。一人だから歩ける自由が」
やりたいことが見つかったり、それがやっぱり違ったり
何か見えそうで見えなかったり
今の私にそっくりで、読み進めていくうちに
私にも大切な何かがあったことを思い出しました。
角野栄子先生ありがとうございました!
Posted by ブクログ
過去を振り返ってまとめる小説
今回は思春期編って所かな
前回は戦争の重たさや死を感じるテーマでしたが
今回はひたすら明るくて前向き!
街の感じも戦争を乗り越えていく強さがあります
イコの心の動きが鮮明でオドロキです
著者はきっと女子学生気分で執筆?!
思い出す事は楽しい事ばかりじゃなかったでしょう
でも小説にしていただいて私達はとても嬉しいです
今の学生さんばかりではなく
この時代に生きた人達にも読んでほしいです
◇読み終えて
明るくて前向きなこの物語も戦争の影が少し
そして未来への希望がある
ー戦争だった頃はできなかった事
自分らしく自分を作り上げていくこと
自由な人になる事
それは難しい事かもしれないけど少しずつこつこつと
ー今はコロナ明けの新しい希望があるはず
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1週間前に お話を聞いたばかりだったので、現実と物語が 行き来しているような感覚だった。
戦争が終わって、どんな風に大人になっていったのか どんなことを考え 感じていたのか。
だから、あの年代の方たちは 強いのかと 分かった気がする。
Posted by ブクログ
角野栄子さんが子供のころから好奇心旺盛で前向きだったということが分かる素敵な作品でした。
自分にモヤモヤしながらも常に何かに挑戦し、道を切り開いていく様子は清々しくて読んでいてこんな風に生きることが出来るって羨ましいと何度も思わされました。
Posted by ブクログ
『トンネルの森1945』の、小学生までのイコに続く物語。学校教師としてブラジルへ渡るまでが描かれる。
戦争が終わり、イコは中学生になった。
学校での友だちや、学校の外の世界で出会う人たちと出会い、終戦後の時代の変化を感じながら、イコは成長していく。
文体が自由で、なんだか落ち着かない。思春期のイコの心のままに描かれていて、こうだ、という結論に辿り着けないイコのもどかしさそのままだ。自由になって、好きな生き方をしていい戦後、だけど自由に生きることは責任が伴う。
好きなもの、好きなことをひとつずつ数えながら、イコは生活していくが、自分の将来をどうしていいかわからない。
本屋さんへ行って、洋書の香りがビスケットみたい、と感じたり、エドガー・アラン・ポーやエミリー・ディキンソンの詩に惹かれたりするが、歌声喫茶の雰囲気は良くないと感じる。そういうイコの「嗅覚」が、あちこちに感じられる。
みんなの心が、不思議な熱気にわしづかみにされている。何かが違う、何かが恐いと、イコの心の中で叫んでいる声がする。(241p)
これは自伝ではなく、あの頃の感性そのままに、角野栄子が、イコを描いた小説だ。
自伝よりもずっと自由な空気に溢れている。
Posted by ブクログ
戦後の傷跡が残る日本で、懸命に自分の路を探すイコの成長を描く物語。イコさんが『魔女の宅急便』のキキを彷彿とさせる明るい女の子で、「現在進行形」で前向きに生きていく姿に好感が持てた。
Posted by ブクログ
角野栄子さんの自伝的小説。
外国かぶれなところとかやろうと思ったことを中途半端にしてしまうところとか自分と重なるところが多くて共感しまくりだった。
ブラジルに渡ってからのお話も読みたいー!
Posted by ブクログ
角野栄子さんの自伝的小説。
体験した戦中戦後の時代を背景に、イコさんが大人になりブラジルに渡る船の中で始まり終わる物語。『魔女の宅急便』キキの素直で一途なところは、イコさんなのね。
Posted by ブクログ
角野栄子さんの作品が大好きで、魔法の文学館のオープンも心待ちにしています。作中のイコちゃんと同じくらいの年頃に、新宿や吉祥寺を駆け回って過ごしていたので、そんな共通点もなんだか嬉しいです。
コロナも落ち着いてきたこの頃、10代20代の方におすすめしたい作品です。戦後の厳しい時代の中で、迷いながらも自分の心に素直に行動していくイコちゃんに元気をもらえる作品です。
10〜20代のこの時期ならではのみずみずしさとフットワークの軽さについ笑顔になってしましました。その年代を過ぎてしまった私のような読者にとっては、あの頃のような好奇心と行動力が懐かしくなるのではないでしょうか。
年も重ね守るべき家族ができて、家族が人生の主役で私はわき役気分で過ごすこの頃ですが、些細なことであっても好奇心を惹かれる新しいことにトライしてみたい気持ちになりました。
また、題名ですが1948-なので、イコちゃんは今も旅行+現在進行形なのですよね。
私もいい年して精神的にはいつだって迷える旅人ですが、これからも新しい世界に踏み出すことのできる旅人でもありたく思います。
Posted by ブクログ
何か新しいことを始めたくなる、そんな一冊。
まずは「トンネルの森 1945」を読むことをお勧めします。そのほうが、「トラベリング」にて見たいもの、したいことがたくさん溢れ出るイコさんを応援しながら読み進めることができます。
Posted by ブクログ
角野栄子さんの10代から20代の成長過程における自叙伝的な物語。
戦後、外国に憧れたごく普通の女の子に起こった出来事と成長期独特の気持ちの葛藤や変化を表している。誰もが共感でき、素朴な温かみのある前向きになれる作品。
Posted by ブクログ
「ラストラン」「トンネルの森1945」と続く、
イコちゃんの物語。
イコは、エイコ、つまり、角野さんご自身の投影だ。
今回のイコちゃんは、終戦後の1948年、疎開先から戻り、
私立の女学校へ通う13歳からスタート.
22歳の見合い話が出る、お年頃まで描かれる。
ずっと、角野さんはどうしてブラジルへ渡ったんだろう?との
疑問が解けた。
といっても、御著作を、きちんと読めば、
どこかにお書きになっていたのだろうけれどw
イコは、英語で現在進行形を習うと、
すっかり気に入り「これでいこう」と心に決める。
でも、実際は「これから、これから」と物事を先延ばしにし、
日々モヤモヤするばかり。
さすが、御年87歳の魔女さまは
10代の自分をしっかり覚えておいでだ。
そして、それを物語の中で、イキイキした少女におとしこまれている。
すごいなぁ~
全編に通底するのは、
戦争は絶対にイヤだということ
(声高に叫ばないところがいい)
みんなが熱くなって一つのことに向かうのは危険だという感覚
(昭和の戦争に、みなが突っ走ったことを忘れてはならないよ)
魔女様は、そういったことを、
優しい言葉できちんと伝えてくれる。
そして、こちらも、答えたいと思わせてくれる。
幼い人たちを対象に、
長く書き続けていらした大ベテランの魔女様は
鮮やか。
こんなにみずみずしい小説を描ききれる
87歳の角野さんは、やっぱり魔女様。
まだまだ下っ端の弟子にしか慣れない、娘世代のわたしも、
しっかり跡を追ってまいりましょう。
物語の力と、好奇心を大切に。
そんなことを思わせてくれる
幸せな読後感でした。
Posted by ブクログ
近頃ちょっと憂鬱な気持ち内向きな気持ちだったけど、もっと前向きで楽しい事だけでいいんだ!って気持ちを持ち直すきっかけになった。角野さんありがとうございます。
Posted by ブクログ
戦後間もない日本で少女はアメリカに憧れた。敵国だったはずの国が放つ自由な空気に心が引き寄せられたのだ。奔放な少女のまなざしが生き生きと描かれている。
物資が乏しい時代に彼女はアメリカ人家庭の豊かさや異文化に触れ新しい世界を知る。戦争の記憶が色濃く残る中で偏見を超えて憧れる心はたくましい未知への好奇心こそが未来を切り開く。
国を越え文化を越え人は互いに学び合う。少女の眼差しはその大切さを静かに語っている。
Posted by ブクログ
紫式部文学賞
星3.5
角野栄子の自伝的小説だが、ブラジルに渡った動機などはwikiの経歴とはだいぶ異なり、自発的に自分の生きる道を探した結果というように書かれている。
戦後の東京の復興する様子が細かく書かれており、例えば繁華街の表通りでは少女が憧れる華やかな物品が並んでいるが、そのすぐそばでは、雑多な闇市に人々が群がっている。
そして、好奇心旺盛だが、何事にも一生懸命になれず、難しいことをすぐに放り投げてしまう中途半端なイコの心情が私自身を見るようで親近感がわく。
また、良家の子女が集まる私立の女子中、高の少女たちのふるまいや言葉遣いが時代を感じさせて興味深い。
今日マチ子さんの表紙が好み。
Posted by ブクログ
戦後、外国に憧れる普通の女の子の移ろいを描いた作品。自分が何をしたいのかわからない、モヤモヤしていて、自分のお役目を目つけられないままのらりくらりと生きていく姿にすごく共感できる。
モヤモヤを晴らす果てない旅、という意味では「耳をすませば」に少し似ているかなぁ。
戦後の鬱々とした感じや、社会主義を連呼する教師がいたり、外国には簡単には行けなかったり、女子が大学を目指すのも数名という現代とはかなりギャップのある世界観で面白い。
演劇をやって人生を謳歌するおチヨさんや、留学の夢も叶えた優秀なトンちゃん、高校を1度辞めてから大学へ挑戦する前川さんなど、魅力的で輝いていて、我々の何倍も考えてがむしゃらに進んでいたキャラクターたちがすごく良かった。
Posted by ブクログ
真逆に変わった戦後の教育に戸惑う最初の部分から少しずつ成長するイコちゃんが微笑ましい。
抑圧されているからこそ、自分で掴み取る自由の素晴らしさを感じるし、
今だに封建的な社会の中で、自分らしさを貫こうとしてもがくイコさんと敗戦後の日本がダブって見える。