あらすじ
私は幽霊を見ない。見たことがない。さらに目が悪い。心眼でも見えないし、知覚する脳の器官も機能しない……。だけどいつでもどこでも怖がっている筋金入りの怖がりだ。そんな著者は怪談専門誌で怪談実話を連載することに。そこで小学校時代からの恐怖体験を紹介。築百二十年の小学校の女子トイレには、“四時ばばあなる老怪女”や“病院で死んだ三つ子の霊”が出現すること。大学時代の友人たちから怖い話を聞き取りしたこと。友達の友達のお姉さんがイギリスのホテルで胸苦しくて目覚めると、金髪の白人女性がなにかをまくしたてながら首を絞めてきた話や、所属していたカメラクラブの部室の廊下を首のない女が走るという話などを思い出す。芥川賞を受賞し、上京した際には、編集者や出会った人たちからの聞き取りを怠らなかった。タクシー運転手が背負った自殺者の霊の話、マン島で見た妖精のような小さい人と目が合うとウインクしてどこかへ消えた話、自分が殺される夢を見たその夜に殺人事件が起こった話、深夜誰もいないトイレで鳴らされたナースコールなど。心霊体験をしたいがために、徳島県の廃墟ホテル訪問したり、レジデンスで訪れたアメリカで出ると言われているホテルに泊まったが幽霊には出会えず。幽霊には会えていないけれど、幽霊とは何かという問いの答えは知っている。“幽霊とは、生きているときに上げられなかった声”だ。私たちは誰であれ今でも、上げられない声を抱えながら生きているから、こんなにも幽霊を追い求めるのだろう。著者の幽霊探しの旅は続く。文庫化にあたり、書下ろし収録。【解説】朝吹真理子 【カバー絵】アンジェラ・ディーン
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Posted by ブクログ
単行本のカバーイラストは芥陽子。
もふもふおばけが、カバーにも表紙にも中表紙にも。
文庫ではアンジェラ・ディーンの絵へ。どっちもいいな。
藤野可織のインタビューや対談やツイッターをウェブ上で読むのが好き。
そもそも芥川賞待ち時間に「キューバのゾンビ映画を見てました」(ゾンビ革命ーフアン・オブ・ザ・デッドー)というのも100点の解答で、正直メロメロなくらい好き。
初のエッセイ集をこの角度で出してくるのは、嬉しくてにんまりしてしまう。
(柴崎友香「かわうそ堀怪談見習い」の文庫に解説を寄せているので、同じKADOKAWAということもあり、対にしてみたい。)
実話怪談には疎いが、むしろ藤野さんの地の文が素敵。
そしてびっくりしたのが、「生きている時に上げられなかった声」という発見をしたのが、
アンドレ・ウーヴレダル監督「ジェーン・ドウの解剖」のラジオの歌だということ。
それは気づかなかった……創作物に刺激を受けつつ創作しているってこういう瞬間なんだろうな。
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幽霊探しに余念のない著者。芥川賞作家が蒐集した怖い話
私は幽霊を見ない。見たことがない。さらに目が悪い。心眼でも見えないし、知覚する脳の器官も機能しない……。だけどいつでもどこでも怖がっている筋金入りの怖がりだ。そんな著者は怪談専門誌で怪談実話を連載することに。そこで小学校時代からの恐怖体験を紹介。築百二十年の小学校の女子トイレには、“四時ばばあなる老怪女”や“病院で死んだ三つ子の霊”が出現すること。大学時代の友人たちから怖い話を聞き取りしたこと。友達の友達のお姉さんがイギリスのホテルで胸苦しくて目覚めると、金髪の白人女性がなにかをまくしたてながら首を絞めてきた話や、所属していたカメラクラブの部室の廊下を首のない女が走るという話などを思い出す。芥川賞を受賞し、上京した際には、編集者や出会った人たちからの聞き取りを怠らなかった。タクシー運転手が背負った自殺者の霊の話、マン島で見た妖精のような小さい人と目が合うとウインクしてどこかへ消えた話、自分が殺される夢を見たその夜に殺人事件が起こった話、深夜誰もいないトイレで鳴らされたナースコールなど。心霊体験をしたいがために、徳島県の廃墟ホテル訪問したり、レジデンスで訪れたアメリカで出ると言われているホテルに泊まったが幽霊には出会えず。幽霊には会えていないけれど、幽霊とは何かという問いの答えは知っている。“幽霊とは、生きているときに上げられなかった声”だ。私たちは誰であれ今でも、上げられない声を抱えながら生きているから、こんなにも幽霊を追い求めるのだろう。著者の幽霊探しの旅は続く。文庫化にあたり、書下ろし収録。【解説】朝吹真理子 【カバー絵】アンジェラ・ディーン
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もくじ
私は幽霊を見ない
富士見高原病院の幽霊
消えてしまううものたち
国立民族学博物館の白い犬とパリで会った猫
ついに幽霊とニアミスする
はじめて心霊スポットへ行く
幽霊はいないけれど、不思議なことはある
理想の死に方とエレベーターと私が殺した植物たち
アメリカの空港で幽霊を探す
夢が現実になる話
幽霊とは生きているときに上げられなかった声だ
後日談
※書下ろし