あらすじ
又吉直樹の初長編小説にして、『火花』『劇場』に続く第3弾小説が1万字を超える加筆を行い待望の文庫化!
38歳の誕生日に一通のメールが届いた。
呼び起こされる痛恨の記憶と目前に立ち上がるあの日々の続き。
漫画家を目指し上京した永山が住んだ、美術系の学生が集う共同住宅・通称「ハウス」。
飯島、田村、仲野、めぐみ、奥……同居人たちとの生活の中で降ってわいた希望と、
すべてを打ち砕いたある騒動。そして「おまえは絶対になにも成し遂げられない」という仲野の予言。
神様はなんで才能に見合った夢しか持てへんように設定してくれんかったんやろ。
それかゴミみたいな扱い受けても傷つかん精神力をくれたらよかったのに。
何者かになろうとあがいた青春と何者にもなれなかった現在、
上京以降の20年の末に永山に辿り着いた境地は? そして「人間」とは?
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Posted by ブクログ
タイトルに相応しい、生々しく強烈な内容だった。
主人公永山は過剰な自意識やトラウマにがんじからめにされながらも、現実と向き合い過去と折り合いをつけていく。
やはり作者が生み出すキャラクターはとても魅力的だ。
永山みたいに、人間くさくて不器用で自意識に苛まれてたり、純粋無垢な霞の様な人もいる。
仲野みたいな浅薄な人もいれば、影山みたいに物事を必要以上に考えすぎる人。
内面描写も素晴らしくどんどん作品に引き込まれていった。
妄想癖があると疑われる程主観が強く、事象に対する認識が周りとズレている永山。
その周りとの認識のズレが永山の魅力でもあり、今作を面白くしている大きな要因なんだろう。
Posted by ブクログ
よかったなーー
身内のサブカル集団みたいな話で終わるのかと思ったら最後は故郷とか色んな世代の人がでてきて、人間そのものの話に段々ズームアウトされていく構成が素晴らしかったです、、
「僕達のことを少し変わった感性の持ち主だということにしたのかもしれない。角度が変われば色が変わる蝶の存在は受け入れることができる人なのに。」
この話の主題の一つである多様性の概念への警鐘を鳴らす上手い文章だとおもって心を動かされました。
Posted by ブクログ
まずは圧倒的な思考の量とその表現力に圧倒された。
話題としても各章でバラエティに富んでいたが、どれも共感できる部分があり、物語に入り込んでしまった。
結局言いたかったことは、表現には苦しみと矛盾がつきまとうこと、人間のあたたかさだったのかなと思った。
Posted by ブクログ
構成が良かった。
永山の生きづらそうな青年期が1章から3章まで書かれ、最後の4章には永山の全てを受け入れてくれる両親と沖縄の景色が描かれていていた。
永山の「ミチ」という名前は影島道生のミチと何かしらの関連がある?と思ってしまった。
影島とナカノタイチのやりとりはハラハラするけど、私はどちらの意見もなんかわかるなって思いながら読んだ。第三者だから冷静に見てられるけど、当事者だったらこんなことも言いたくなっちゃうだろうなと思った。
Posted by ブクログ
美術を志す若者たちの思い出から始まったのに、最終章はまったく別の物語を読んでいるような気分になった。主人公は思ったことを意外とハッキリ言うので時には辛辣でヒヤリとするものがあるし、仲間たちの間で傷付いていく様子にはこちらも痛みを感じて苦しかった。
長い人生のなかで変化していくものと変わらないもの、どちらもあると思うけれど、あのときの永山と今のミチは違う。成長というのもどこかまた違って、自分自身を痛めつけるのをやめてケアしているように見えた。
ケアで言うならば、影島との会話もかなりお互いをケアし合っていると思った。このふたりならば訳のわからない会話も成立する。ひとりの人格がふたつに分かれたような登場人物だなと思った。内省する心の声の硬さに比べて、こういった会話文はやわらかくて印象は良かった。
なんとなく、最後の心穏やかなミチを見せるためにこれまでの孤独な物語があったんだというような気がした。元の生活に戻ればまた始めから繰り返されるだけかもしれないけれど、その繰り返しこそが人生なのだろうし、人間みんながそれぞれの物語を背負って生きているイメージが湧いてきた。
Posted by ブクログ
いやはや、文学的感。
又吉さんの頭の中を見ているようで。
こういう、ごちゃごちゃした想いは僕の中にもあって、それをこうして文章に表せば、文学作品になるんだなと。
途中のブログのところなんかは、想いを全て文章にした感じがあり、こうして書きたい気持ちも凄く分かってしまう。
僕の中での想いは。いつも頭の中でぐちゃぐちゃしていて、それを整理しようと言葉少なにしようと思いがちだけれど、ブログ部分は、それを全て言葉にしている感じ。
きっと、それを作品としてできるのが凄いんだよな。
生き方考え方を作品にしてみたい。