【感想・ネタバレ】ナンバー2の日本史のレビュー

あらすじ

※本書はリフロー型の電子書籍です。

【主役を操る「名より実」の脇役】

名脇役こそ主役
日本史を概観すると、求められる組織・政治機構の形は時代ごとに違う。
新しいものがつくられていく創業の時代や、動乱や変革が続く混乱の時代は、強力なナンバーワンのもとに権限が集中している方が政治は安定する。
一方、社会が安定してくると、強いナンバーワンは各所に軋轢を生み、また憎悪・敵視の対象にもなりがちだ。
では、安定した時代に求められる組織・政治機構は、何が正解なのか。
トップ、つまりナンバーワンは強力な権威を持つけれども自ら政治をせず、実際に政治を行うのはナンバーワンから委任を受けたナンバー2、このシステムである。
古代における摂政・関白、鎌倉幕府の執権、室町幕府の管領、江戸幕府の大老・老中などがこれにあたる。
「虎の威を借る狐」と罵られることもあるが、強いナンバーワンが憎悪・敵視を一身に浴びることを思えば、ナンバー2のほうが軋轢も少なく、遙かに政治がしやすい。
もちろん、よいことばかりではない。多くのナンバー2はナンバーワンに比べて権力基盤が弱く、ナンバーワンからの信頼を失ったり、トップが交代・衰退したり、ナンバー2の座を狙うライバルの存在もあり、その地位は危うい。
平安時代における藤原氏や、鎌倉時代における北条氏のようにナンバー2の地位を独占した一族もいるが、その実態は一族内部の内紛・暗闘が熾烈であり、ナンバー2の立場が形骸化して「ナンバー2の右腕」が実権を独占する時代もあった。
それでも、多くのナンバー2がナンバーワンを支えてきた。
存在したかどうかさえあやふやな人、一瞬の活躍で終わった人……長年にわたって低評価ながら近年では別の見方をされる人もいる。
彼らがどのような社会事情や政治情勢の中でナンバー2となり、どんな業績を残したのだろうか。
ナンバー2はけっして影の存在ではない。

〈本書の内容〉
■第一章 大王・天皇の補佐役
卑弥呼の弟/神功皇后/武内宿禰/聖徳太子/蘇我馬子/藤原鎌足/長屋王/橘諸兄/藤原仲麻呂/道鏡 ほか
■第二章 摂関政治と院政期のナンバー2
藤原百川/藤原良房/藤原基経/菅原道真/藤原時平/藤原道長/藤原頼道/院政の始まりと藤原摂関家 ほか
■第三章 鎌倉幕府は執権のものか
北条時政/北条義時/北条泰時/北条経時/北条時頼/北条時宗/北条貞時 ほか
■第四章 室町幕府、持ち回りの管領
足利直義/高師直/三管領家/細川勝元/伊勢貞宗/細川政元/大内義興/三好長慶/織田信長 ほか
■間 章 戦国大名とナンバー2
武田信繁/豊臣秀長/朝倉宗滴/片倉景綱/島左近/直江兼続/鍋島直茂/太原雪斎/石田三成 ほか
■第五章 巨大官僚組織・江戸幕府の舵を取った幕閣
本多正純と土井利勝/松平信綱/徳川光圀/保科正之/柳沢吉保/新井白石/大岡忠相/田沼意次/松平定信/水野忠邦 ほか

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Posted by ブクログ

或いは古代から近世までの、日本の通史が判るような一冊に巧く纏まっているのかもしれない。
色々な観方が在るのかもしれないが、古くから“政権”の中枢には「天皇」とか「将軍」というような「トップ」が据えられる。その他方で、時代毎に様子も変わりながら「トップを補佐する」という名目で色々と実権を振るった、またはそうしていたと見受けられる「ナンバー2」が必ずと言って構わない程度に存在した。
本書はその「ナンバー2」に着目し、各時代にそういう立場に在ったと見受けられる人達のことを紹介しているのだ。
特定の時代や人物を深く掘り下げているということでもなく、時代のあらまし、そのあらましの中で当該人物が登場し、台頭した経過等が要領よく纏まっている。結果として「権力を手にする過程の変遷」や、時代毎の「“権力”の定義のようなモノの変遷」が判った。
或いは「歴史関係について“敷居が高い”という程度に感じている方」には御薦めな一冊となるかもしれないと思った。

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2022年06月21日

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