あらすじ
心霊写真の合成が趣味の僕が撮影をしていると、一人の女性がカメラに映りこんできた。しかし撮影されたデータには無人の交差点が映っているだけだった。映りたがりの幽霊、悠川さんがこの世に残した未練とは……?(『悠川さんは写りたい』より)
ほか、乙一が贈る恐ろしくて切ない出会と別れの短編集。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
久しぶりの乙一さん。
おそ松さんの話は私のタイプではなかったけど、その他のお話は前向きな気分にしてくれるのでとっても良かった。
「そしてクマになる」は「熊」になって家族虐殺!みたいな展開になるのかなと思いきや、浮気相手かと思っていた男が自分であることに安心して、リストラされたのを打ち明けるのが良かった。奥さんも受け入れてくれたし、がんばれお父さん!
「家政婦」は、この設定で他のお話も読んでみたいなと思う内容だった。幽霊をスルーするスキルを完璧に身につけている山田さん、すげえ。玄関で幽霊が蠢いてる(?)のに考え事に気を取られてスルーしてるところは笑った。でも最後、ちゃんとゾッとさせるのがさすが。
「フィルム」は楽曲から着想を得た作品なのかな?ほっこりするし、私も「そんな日々が起こるはず」ってちょっと思えた。思いたい。
「悠川さんは写りたい」が一番好き。自分の殻にこもっていた烏丸さんが、自分の好きなこと、心霊写真のねつ造によって、その殻から外の世界へ少しずつ出て行くところが素敵である。好きなものは自分を助けてくれるよな!悠川さんもいいキャラで、本物なのに写真に写れないというのも面白い。悠川さんが恩返しで、烏丸さんの家族を連れて来てくれるシーンは泣いた。烏丸さんには自分で作った悠川さんの心霊写真は美しく見えたみたいだけど、他の人にはおぞましく見えたってのはどういうことやったんやろか、と首を傾げるのである。烏丸さんにとっては良い出来、つまり心霊写真として他の見る人に対しては恐怖を与えるものとして成功してたってことなんかなー?
と、思ったけど、あれは本物の心霊写真だった、っていうオチなのかな、と思ったりもした。それならせっかく合成したのに!ってなりそうだけども。