あらすじ
きりこは両親の愛情を浴びて育ったため、自分がぶすだなどと思ってもみなかった。小学校の体育館の裏できりこがみつけた小さな黒猫「ラムセス2世」はたいへん賢くて、しだいに人の言葉を覚えていった。ある事件がきっかけで引きこもるようになったきりこは、ラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。夢の中で泣き叫んでいた女の子を助けるために……。
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Posted by ブクログ
自分が自分のしたいことをする。自分らしくいるって、大切な事だよといろんな場所でいろんな人から言われていたことだけど、なぜそれが大事なのかを
こんなに論理的に、情熱的に教えてくれたのは初めてだった。
10代のほとんどを悲しみの中で過ごしたきりこが誰よりも人の悲しみに敏感なこと、そしてその生来のものと、マァマ、パァパからもらって、受け継いだ優しさで、その悲しみに駆けつけるきりこは本当に強くて素敵で美しい。
西加奈子の本にはいつも救われる。今後の私の人生をもっといい物にしてくれる。すごい。ありがとう。
Posted by ブクログ
"きりこはぶすである"という出だしで始まる。きりこは"ぶす"な容姿でありながら両親からの"可愛い"という言葉を沢山浴びて育ち、小学校高学年まで自分のことを"可愛い"と信じて疑わずにいた。ところが初恋の男の子に"ぶす"と言われてその魔法がとける。人の内面と外見への囚われ、人1人の人生、そして物語の重要な役、ねこのラムセス2世の存在
Posted by ブクログ
たしか高校生の時に、つまり今から10年ほど前に読んだきりで、主人公がぶすで可哀想な人生だった、という記憶しかない状態で、ルッキズムについて深堀したくなったのでもう一度読んだ。
展開が覚えていたものと違いすぎて、当時の自分が何に興味があったかがぼんやり浮かび上がってきて恥ずかしかった。
ブサイクは幸せになれない、というような、そんな残酷な結末で覚えていたということは、私はそれをどこかで望んでいたのかもしれない。それはブサイクであると私が思う私の顔を何とかしようと、可愛くなろうと注いだ時間を否定したくなかったからだし、その時間があれば私はこんな人になれていたかもしれない、という希望を捨てたくなかったからだと思う。
きりこは、強く、素直で、美しい。きりこはその姿勢を両親から受け継ぎ、守られて、自分でも守っている。大事なことはひとつのような気がする。自分を信じて、大切にすること。そうさせない他人のことは気にしないこと。
自分がただ自分であればいい。自分の望むことを把握して、応えていく。そう生きればいい。いいなあ、と思う。その生き方、いい。出来たら素敵な人になれるとも思う。自信に満ちて、でも誰かに押し付けたりせず、自分だけが満足していてそれで良い、という状態。だけど。今、私はそれが出来る気がしない。それは恋人の影響が強いような気がする。でもこれも、他人に責任を転嫁しているだけで、きっと私が弱いせいで、だから私は強くなりたい。きりこのように、強くなりたい。
Posted by ブクログ
かなり好きだった!
私自身も自分の容姿に辟易し、10代から20代前半頃まで精神的に辛くなることも多かった。しかし、最近やっと私も顔は『容れ物』にしかすぎないことに気づき始めている。
もっと早くにこの本に出会っていたら、もっと早く楽になれていたのかなとも思う。
ただ、きりこと同様、自分で気づくことでより自分を好きになれると思え、幸せな気持ちになれた!
Posted by ブクログ
面白かったです。ラムセス2世の視点から見た人間社会の物悲しさのようなものが、軽やかに描写された作品でした。猫の世界が、本当にこの本のような世界であったら良いなと思いました。
Posted by ブクログ
両親から愛情たっぷりに育てられたきりこは自分がとんでもないブスだと思っていなかった。しかし大好きなこうた君からブスだと振られてしまってから塞ぎ込むようになる。
そうやって猫のように眠って暮らしていると予知夢を見る。それは他人の目や評価に縋って生きている人たちの「中身」の怒りや悲しみの声だった。
私が私であること。
私がしたいことをするのは私しかいない。
当たり前だけど、ハッとさせられるのは私自身どこか他人の目や評価を気にして生きているからだろう。
というより、気にしないで生きていけるほど強い人間ではないのだ。
モテたい、ちやほやされたい、認められたい。
この欲求も間違いではないけれど、長い時間が経ってからどこか満たされない気分になってしまうのだろう。
猫はシンプルな世界で全て「分かって」いる。
だから賢そうで気ままに生きていけるのだ。
私自身生まれ変わったら中国の富裕層が飼ってるようなデブ猫になりたい、と日頃から思っている。
それは他人の目がどうしても気になってしまったり、必死に働いて生活していかなきゃいけないプレッシャーからの願望だけれどラムセス2世が言うには人間から猫に生まれ変わるのは難しいらしい。
ひとまず、私自身のやりたいことや声に耳を澄まして忠実に生きていくことから始めてみようか。
Posted by ブクログ
きりこは、ぶすである。
書き出しにぎょっとして借りた一冊。途中までは、きりこが自分の容姿に気付いて傷付くであろうことを思ってソワソワしながら読んでいた。後半はちせちゃんの性被害事件から怒涛の展開でどんどん読み進められた。前半に登場人物のその後が簡単に触れられるが、後半でそれがきちんと説明される形で回収されるとは思わず驚いた。
ラムセス2世視点であることは早い段階から分かっていたが、読後感がとても良い。サラバ!を読んだときと似たような爽快さがある。自分は自分、というメッセージが込められているように思った。
思春期に自分の容姿に悩んだ経験がある身からすると、多感な中高生のときに、自分は自分だと心から思えるようになるのは難しいように思う。ただ、この本に出てくるきりこの両親は素敵だと思う。もし自分の子どもが将来悩むことがあったり、悪い評判のある友達を連れてくることがあったとしても、そのまま受け入れられる親でありたい(とはいえ後者は難しいかもなぁとも思う)
Posted by ブクログ
どんな人にもそれぞれ悩みはある。
生きるって大変だけど、経験した分成長する。
成長すると新たに見えることがある。
色々あった人たちが、最後にきりこの元に集まったのも良かったし、みんなそれぞれ結果的に幸せになれて良かった。
容姿という容れ物、中身、その人の歩んできた歴史、全てを見て、その人がその人である、ただそれだけを受け入れることの尊さを感じた。
私もそんな風に人を見れる人になりたい。
でも、まだまだ経験不足の未熟者だなぁ。
マァマとパァパが言うように、きりこちゃんは世界で一番可愛い存在。
みんなそれぞれ一番可愛い存在なんだな。
Posted by ブクログ
美しく生まれなかった人や偏見を持たれてる人への愛に溢れる応援歌のような本でした。
コンプレックスに悩む主人公が、真面目に一人称で語り続けるような話だと読まされる方は逃げ場がなくて息苦しく感じてしまうのですが、一見三人称に思われる冷めた視点の文章とユーモラスな人物描写で、うまく緩和されてるのがいいなと思いました。
なので(明るい内容じゃないところでも)最初から最後までおかしみを感じさせる文章で読ませてくれるのがいいです。
何より西加奈子さんの前向きな人生観をところどころで味わうことが出来るのもこの作品の魅力の一つ。
前向きと云っても、歯をくいしばって頑張るでもなく、誰かの価値観を受け入れるものでもなく、ただはじめから備わってる自分自身と向き直って、時間をかけても最終的には自分を認めていく。
こうしてゆっくりでもいいから肯定的に成長していこうとしていく登場人物たちに共感できます。
誰かと比べて誰かの鏡のように生きることではなく、みつめるのはあくまで自分であり、他人ではないのです。
こうした価値観もここ数年になって市民権を得てきた気がします。
コンプレックスに悩まされた十代の頃にこのような本があれば少しは生きやすかっただろうなぁ、と思いました。
Posted by ブクログ
両親からの愛情を浴び、自分が世界一可愛いと信じて育ったきりこは、初恋の男の子に「ぶす」と言われて大きなショックを受けた。小学校の体育館裏で拾った黒猫「ラムセス2世」はとても賢く、人の言葉を覚えてきりこと会話できるようになり、傷ついたきりこを支える。
大人になったきりこは、自分は自分、自分の幸せは自分で決めるという強い気持ちを手に入れる。
西加奈子さんらしい、女の子の繊細な気持ちの動きが描かれた作品。わがままで人の気持ちを考えられない小さい頃のきりこも、ブスと言われて傷ついて部屋に引き篭もった少女時代のきりこも、共感できる。しかし猫との交流で自信を取り戻し、泣いている人を助けに行動し、人の目を気にせず好きな服を着て闊歩するきりこにはびっくり。面白かった。