あらすじ
「太陽の上」中華料理店の三階に住んでいるあなたは三年間外に出たことがない。でもその日、何かが変わる。
「舟の街」ある日、あなたは徹底的に参ってしまった。そして、思い立った。舟の街に行こうと。
「空を待つ」深夜の青梅街道で携帯電話を拾った。その日から、見知らぬ相手とのメール交換が始まる。
「甘い果実」作家志望の私は31歳。勤めていた書店で、あの作家がサイン会を開くという。
「炎上する君」銭湯で私と浜中は足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて…。
「私のお尻」私は白くて綺麗なお尻をもっているけれど、いつからかそのお尻を憎らしく思うようになった…。
何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちを訪れる、小さいけれど大きな変化。奔放な想像力が紡ぎ出す、どこか不穏で愛らしい物語たち。8編収録。
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Posted by ブクログ
足が燃えている男に恋をして、当然のように自分の足が燃えているのが面白かった。
他人と等間隔で生きる、傷つかないように生きることが望んでいることなのか?という言葉が印象的だった。
自分は「地上」で傷つくことを恐れずに生きたい。
超自然的な風船としてただ浮遊したくはない。
Posted by ブクログ
不思議でヘンテコで切ない8編だった。
サラッと読めて、最後にはじんわりと心が温まる。
「トロフィーワイフ」はひとつだけ話の雰囲気が違っていて異色かなと思った。労働を知らない祖母と孫の優雅な生活を、ずっと眺めていたくなる。でもこうやって夫に愛でられていたのだろうと思うと複雑な気分だ。おっとりした祖母はおとぎ話の中の眠り姫のようだった。
ラストの「ある風船の落下」は思いがけずグッとくる話。誰かを必要として、自分も誰かに必要とされることで、長い人生を勇気を持って生きていけるものなのかもしれない。
8編に共通するのは、あくまでも人間というものを信じているという点だった。紆余曲折を経て自分らしく生きていく登場人物たちを見ていると、励まされているような気持ちになってくる。これだけ自由でもいいんだよと。