あらすじ
イラク北部にあるコーチョという小さな村。少数派の宗教、ヤズィディ教徒たちが貧しいながらも日々を平和に暮らしていた。
しかし、忍び寄る紛争の影が、平和を少しずつむしばんでいく。
そしてついにあの日、イスラム国の一群による襲撃が行われた。そして待っていたのは、
自分のすべてを踏みにじられる、性奴隷としての地獄の日々だった――
戦争犯罪の被害者として、「武器としての性暴力」の実態の告発と根絶を訴え続けた著者が、筆舌に尽くしがたい自らの体験を、圧倒的な臨場感で語る。
イスラム国による他教徒への虐殺や性暴力・暴力の実態とは。
彼女が決死の覚悟で逃れ、イスラム国支配地域の現状を世界に向けて発信するまでに、彼女を支えた人々とは。
今、世界でもっとも注目されるノーベル賞平和賞受賞者の自伝、ついに翻訳刊行。
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Posted by ブクログ
第一部の幸せな日々、
しかし常に脅威に晒されるイラクという国家、
不穏な事件、暗転、
第二部は辛すぎて部分的にしか読めず、
逃亡に成功し、
第三部で脱出叶い、母と似た人を見た瞬間で
読み溜めてきた感情が、私もナディアと一緒に放出されるかのようだった。
脱出を助けてくれたナーシル、その家族の善行。
そしてエピローグ。テロリスト達に対する絶え間ない戦いを続ける、勇気あるナディア。
本当にこんな残酷なことができる人間がいるんだ、
宗教って利より害の方が人類にとって大きかったのではなかっただろうか。
日本人には、どれだけ語られても本質的な意味でどの宗教のことも理解できないと思う。
人種、民俗、住んでいる国家や周辺国家の征服者によって
人間たちの都合のいいように作られてきたもののように思えてしまう。
性善説、性悪説はどちらも信じない。
やはり人間、生まれ持った中身と環境の問題だ。
Posted by ブクログ
イスラム教徒過激派による少数派信者に対するジェノサイドを経験した女性の悲劇の物語。
彼女の生い立ちからISISの襲撃、その後の性奴隷にされた日々、決死の覚悟で逃げ出してから今日の活動までを赤裸々に綴っている。
小説を読んでいるようでハラハラした。
コンゴの医師の本を読んだ後だったから、不謹慎にも「アフリカよりはマシでは?」と思ってしまったが、圧倒的に違うのは、アフリカでの性暴力はあくまでも違法であるのに対し、この著者が経験したことはイスラム国では合法だったこと。
合法的に裁判所の手続により性奴隷にされるというのは異様である。
男性が男性であるが故にこの世界から性暴力を根絶するのは難しいのかもしれない。
この著者も自身に起きた悲劇全て(家族が虐殺されたことなど)を話したいのに、人はレイプのことばかり聞きたがるというのがその証拠だと思う。
この女性は強く賢く勇敢なのだと思うが、一点だけ賛同できない考えがあった。
ISISの襲撃や暴力を黙って見ていた人達を憎むことはちょっと違うと思う。
暴力に立ち向かうにはそれなりに勇気と力が必要だし、自分に利害がなければなるべく関わらないようにしようと考えるのが人間である。
他の宗教や考え方を受け入れない姿勢は著者の宗教に起因があるのかもしれない。
しかし、そういう考えが争いの火種になり、今日の紛争や性暴力の原因になっていることを私たちは知る必要がある。