あらすじ
「俺、昔、喋る狼に会ったことがあるんだよ」カナダの温帯雨林にやってきた三人の日本人大学生。狼の生態に関するフィールドワークのかたわら、ひとりが不思議なことを言い出して──(表題作)。大人になる前の特別な時間を鮮やかに切り出した、四つの中編を収録。『叫びと祈り』『リバーサイド・チルドレン』の著者が贈る、ミステリ仕立てのエモーショナルな青春小説。/【目次】美しい雪の物語/重力と飛翔/狼少年ABC/スプリング・ハズ・カム
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Posted by ブクログ
カナダ西部の太平洋岸に広がる世界最大の熱帯雨林〈グレート・ベア・レインフォレスト〉。バンクーバーの名門校に留学して、その研究の一環としてその熱帯雨林で狼の生態を調べている友人に押し掛けた〈僕〉と穂村のふたり。そんな旅先の中で語られる穂村の意外な過去。「俺、昔、喋る狼に会ったことがあるんだよ」と言う彼の言葉は謎が紐解かれるとともに、思いもよらない結末を迎える。――「狼少年ABC」
雪の日の卒業式、体育館に流れたのは本来流れるはずのなかった曲が体育館に鳴り響いた。仕組んだのは誰だったのか。あれから十五年の月日が経ち、卒業式翌日に校庭に埋めたタイムカプセルが開かれるとともに、同窓会が行われることになった。十五年後の自分たちへとあてたメッセージカードの中から取り出されたカードの一枚には、あの事件の犯人だと宣言するメッセージが書かれていた。十五年の時を経て、静かに記憶の扉が開く――「スプリング・ハズ・カム」
本作は全四篇の中篇で構成される作品集になっています。特に印象深い作品が「スプリング・ハズ・カム」で、『十代の青春』という良くも悪くも人生を形作るうえで重要な時間が、記憶となって根付いて遠のいていけばいくほど、心にしみてくるような作品になっています。静謐に辿った言葉の先に、涙なくしては読めないラストが待っています。全篇、折に触れて読み返したくなる、そんな素敵な作品集です。
Posted by ブクログ
今回はじめて梓崎さんのお名前を知ったのですが、読み終えて他の作品も読みたい!とすぐ思うくらいとても素敵な作品でした。
短編集を読むと、この話が1番好きだった…!というのが出てくるものだと思いますが
本作はどれも選ぶのが難しいくらい好きなお話でした。
強いていうなら1番はじめの「美しい雪の物語」が好きです。父親の都合でハワイ島に引っ越してきた少女は謎の日記を見つけ、日記に出てくる人を探そうとする。
p38で「気になるお店があったら〜皆、私の知り合いで気の良い人たちばかりだから。」と叔母が少女にいう。
p60では「それで、日記の男女のその後だが」と土産物屋の老人はいう。
p69で少女の名前が明かされる。
老人は少女の父親のことを知っていたのだろう、皆知り合いになるような街なのだから。
そして少女の両親は、両親にとって大切な思い出を名前に込める。
短いけれどミステリーになっており、
難しいミステリーではないが心温まるミステリーであった。そしてきっと今度はミユキとマテオの物語が始まっていくのだろう。
ものすごく素敵なお話だと感じました。
Posted by ブクログ
心が揺さぶられる優しいミステリの短編集。
「重力と飛翔」と「スプリング・ハズ・カム」がお気に入り。
2つとも死人が出ているお話だが、温かさを感じる。
Posted by ブクログ
いわゆるミステリ風味な作品集かなあって感触で読み始めまたらなんてことはない。
美しいミステリの仕掛け満載でした。
二作品目の全てが繋がる快感、ラストの作品のある叙述トリックにやられてあと込み上げそうになった。
良かった。
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