あらすじ
イタリアや沖縄への旅、妊娠・出産という未知の体験、そして愛するものたちとの別れ――。旅の感触や降り積もる思い出を胸に、家族や友人への愛情と哀惜、自らを取り巻く日本社会の矛盾や違和感について真摯に綴った出産後初のエッセイ集。新たな境地を見せる文章群が、淡く切ない読後感と、小さいけれど確かな勇気を与えてくれる一冊。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
近頃疑問に思っていたことを、同じように疑問に思い、的確だったり柔らかな言葉で書き出されているのを見て、なんとはなしにほっとした。
旅はそのときは最悪だと思っても、後々だからこそ印象深くなるということはよくある。
人生が旅であるなら、生きることにも同じ事が言えるのかもしれない。
東京には豊かになれるスポットがない、あってもお金がかかるが、京都はたとえば鴨川がある、というのはとても納得した。
いろんな人がいろんな時間に、ただそこにいるだけで豊かになれる。そんな場所が都会には少ない。公園でもお金がかかったり人が多すぎたり狭すぎたり、人工的過ぎたりする。
お金や時間がなくても、そのときそこにしかない楽しみというものは確かにあり
それを見つけて楽しめるおおらかさはとても必要だと思う。
数日か一週間しかいない癖に取材させろというのが自分が嫌なので自分もあまり取材が好きではない、というのもとても同意。
一部しか見ずに全てを見た気になって、傲慢に記事を書くようなのは、自己満足であって事実ではない。
ワインを居酒屋に持ち込み開けることに関しては、世代の問題もあるだろうが
私はナシ派ではある。
ただそれでも、融通を利かせて欲しいとは思うし、バイトの子を客がまだいるのに聞こえるように叱るのは接客業として無いなぁと思う。
他に客もいないのに杓子定規に断る店よりは、やはりスイカを出して持ち帰らせてくれるような店の方がほっとするし、また行きたくなる。
いいむだ、というのはちょっと素敵な言葉だ。
無駄にも、全く言葉通り無駄なことと、そうでないものがある。
犬の手づくりごはんに関しても同意。
人と同じ食べ物は犬の体に悪いものもあるが、昔は残り物をあげていたものである。
何が入っているかわからない粗悪なドライフードよりは、手作りのごはんをあげたいものだ。
東京はとても便利だけれど、確かに今までその為に切り捨ててきたもののツケを払わされているのかもしれない。
なつめの木の話がとても好きだった。
持ち主はみんなに迷惑かもと思って懸命に掃除しているけれど、みんなはこの木に慰められている。
目に見えなくても役立たり、つながっていたりするものは確かにある。
ゆとりがなくて一見役立たないとすぐ捨てる世の中で、それを見つけて大事に守ることはとても必要なことだと思う。
ウェイトレス時代に、パニックになりそうなとき、気合いを入れてひとつずつこなすしかない、というのがあって
日頃私が思っていることと全く同じだったのでちょっと驚いた。
慌てても解決しないどころか悪循環になるから、これは本当に大切なことなのだ。
日頃忘れがちだけれど、大切なことはたくさんあって、それは実は些細なことで
物や人やこの世に形あるものは全てなくなってしまい、持っていられるのは形のない思い出だけなのだ。
Posted by ブクログ
この本を手に取ったきっかけは、お友達からのメールでした。
この本の中に、よしもとばななさん的『青森の人』が書かれている一節があって、そこに書かれていることが私のイメージにぴったり当てはまる、とそのお友達が言っていて、気になって手に取りました。
よしもとさんの小説はよく読んでいたけれど、エッセイ集を手に取るのはたぶん初めて。
件の『青森の人』の節は「そうか~」と嬉しくなりながら読み(そのイメージが嬉しかった)、そして読み進め…。
特に感動させようとかという雰囲気もないし、悲しい話は一切書いていない。だけど特に最終章では、『生きるということ』について考えながら読んだりしていて、無意識にほろっと涙が出るような感覚に陥った。
感動でも悲しくて、でもなく泣く。切なくて温かい感じ?
そういう気持ちにさせる本、恐るべし、と思いました。
この本の中のある一節が物議を醸したらしい。
よしもとさんが知人と都内で食事会をしたときの話を書いた節。持ち込みが禁止されているそのお店に、その日は本当に特別な日で、特別なワインを持ち込んだ。だけどどれだけ頼んでも(周りにお客は誰もいないのに)店主は受け入れてくれなかった。そのことに対して、「人間の幅の狭さ」と苦言を呈している節です。
こういう問題は受け取り方如何だなぁ…と。
ルールは確かにあって、そのルールの中で楽しんで欲しい、と思い融通を利かせない店主の行動はけして間違いではない。1人だけ許してしまうと、その先どんどんルールを崩さなきゃいけない結果にもなりうるし。
私は1人の飲食店経営者として、その店主の気持ちもすごーくよく解ります。
だけどやっぱり気持ちも大事。対象に合わせて臨機応変に対応するのも必要なことだ、とも思う。
そこでの行動如何で、相手の気持ちって如何様にもなると思うから。不快な気持ちで帰らせるよりは、気持ちよく、また次も来たいねって思いながら帰ってもらいたい。
よしもとさんの言いたいことはそういうことなんじゃないかな、と思った。
ほんとに難しいことですけど。私も痛い経験してるから解る(笑)
人間の心の豊かさ。幅の持たせ方。思いやり。
それを意識するかしないかで、人の人生は大きく変わってゆく。
だから意識して生きよう…この本を読んで、そんなことを思いました。
Posted by ブクログ
海外との比較、日常の出来事、思い出などを通して、
よしもとばななさんの理想や希望といったものが書かれた本だと思う。
よしもとばななさんの理想や希望はのんびりしたものが多いように感じたが、
よしもとばななさん自身は、とてもバイタリティのある人だと思った。
そのなかで、私が一番好きだった文章は、
「朝起きて、隣に寝ている赤ちゃんを見ると、向こうもうっすらと目を覚ます。そして、私の顔を見て、にっこりと笑う。いちばんはじめの顔が笑顔だということは、一日のはじまりを何の疑いもなく受け入れているということだろうと思う。何てすごいことだろう!」
私も一日を笑顔ではじめられるようにしたい。
Posted by ブクログ
3章に分かれていて、海外旅行、動物、植物、人間について書かれたエッセイ。
色々な場所に旅行に行かれていて、とてもうらやましかったです。
ただし。著者ならではの繊細で透明で鋭い感覚で景色や自然を見つめているので、私でもこんなに発見できるのかという気持ちもありました。
後半は、人間のやりとりの中で、皆で同じ方向に幸せを共有する力を忘れつつあるのではないかという事が繰り返し出てきたように、思われました。
最後に、著者は、本当は毎日が旅だ。旅の前はもう前と同じ自分では帰ってこられない。と、いう気持ちがあるという。
現代はあまりに決まり事の中に閉じ込められて生きていて、小さな自由さえ思いつけなくなっている。だからこそ、人生は自分のもので、・・・絶対人にはゆずることのできない、自分だけのものすごい、でっかい、たくさんの、かけがえのない、びっくりするような、にんまりしちゃうような思い出をつくろう!