【感想・ネタバレ】イン・ザ・メガチャーチのレビュー

あらすじ

☆2026年本屋大賞受賞☆

【第9回未来屋小説大賞】
【第2回あの本、読みました?大賞】

沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」

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Posted by ブクログ

ネタバレ

現代社会に蔓延る「チャーチマーケティング」の危うさと、それに絡め取られていく人間の心理を鋭く、そして残酷なまでに描き出した作品である。物語の中心にいるのは、友人や恋人との人間関係に悩み、無力感に打ちひしがれる内向型の女子大生だ。英語が得意で留学を希望していたものの壁にぶつかり、自己肯定感を失った彼女が、チャーチマーケティングによって自身のリソースを全て巻き上げられていくストーリーである。

チャーチマーケティングとは信者がコミュニティに依存し、搾取されていく構造であり、音楽ライブのような熱狂と仲間との繋がり(居場所)を提供し、本質的には無価値なものに対して、団体が発信するストーリーによる権威付けと信者の「視野狭窄」を利用して本来の価値以上の対価を支払わせる仕組みのこと。
主人公である女子大生をはじめとする信者は 「一の情報から十を受け取り、自分の人生に引き寄せて百の物語を生み出し、千の布教に励む」という言葉通り、信者たちは自ら進んで熱狂の渦へと飛び込んでいく。これらの信者たちは再生回数や高評価数、初動売り上げといった「数字」に固執し、「自分の信じるものを守りたい」「信仰対象を失墜させたくない」という切実な防衛本能からリソースを投じる。

また、現代人は資金や時間、思考力といった自分のリソースを「使い切る」ことに意義を見出している。なぜなら、自分の中に「余白」があると、視野が広がり、迷いが生じ、結果として自分を客観視できてしまうからだ。あえてリソースをすべて巻き上げられ、疑う余地(余白)を消し去ることで安心感を得ようとする心理は、現代の病理そのものである。

ストーリーが面白い作品でありながら、本作の映画化は難しいのではと感じる。なぜなら、「特にこの俳優が出ているから観に行こう」といったファンを動員する映画ビジネスの構造自体が、本作で描かれる「チャーチマーケティング」の性質を帯びているからだ。推し活という名の熱狂に浮かされたファンがこの作品を観れば、皮肉にも彼ら自身の「洗脳」が解けてしまう危険性すら孕んでいるからである。

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2026年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感情よりも論理性が揺さぶられる本だった。現代の色んな課題や闇のテーマがいくつも張り巡らされていて、読みながら色んなことを考えるのにリソースが足りなかった。たくさん色んな考えが大渋滞だったけど、人を動かすのは物語であること。視野を広げるより狭めた方が行動できること。幸せの正解がない世の中で、没頭できること、他にジャッジされないところまで自分のリソースを使い切れること、これが幸せなのかなと思った。でも、派遣のすみちゃんはどこかメタ認知していて、抜け出したいような感じがしたね。
3人のエピソードに共通して出てくる味噌汁、これは脳みそを溶かすことのメタファーなのかと感じた。

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2026年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

資本主義から生まれた大量消費社会の中で、居場所をなくし孤立していく人たちの「物語」を求める物語。

推し活で利益を得たい運営側で働く、家族に捨てられ孤立した中年男性の視点
居場所がないと感じていた大学生が推し活にはまる視点
推しを失って、怪しい団体の思想にはまっていく視点

この3視点の物語が、最後は見事な形で収束していく。

もう、頭を殴られたみたいな衝撃。
痛すぎて直視できない。もうやめてーの連続。

まず、怖いのは、怪しい団体の、なにか大きな黒幕が日本を衰退させようとしているんだという主張が、なんだかそれっぽく聞こえてしまうこと。

食料自給率とエネルギー自給率の低下、自衛権をもたず、経済大国としても衰退していく中で、トレンド入りするニュースはアニメや推し活、ゴシップばかり。
これは、日本を衰退させるための黒幕の罠で、メディアや政治、官僚のなかにスパイが紛れ込んでいるという主張。

なんか、あり得そうだからこわい。

そして、これを読んで思い出したのは、鴻巣由紀子の「小説、この小さきもの」の中で語られている、私たちは「共感できる個人の物語」を必要としている、ということ。個人主義が進むなかで、私たちは居場所をなくし、ナラティブを求めているのだ。

インザメガチャージを読んで感じるのは、個人の物語とは、どこまでも独善的であるということだ。
そこに他人の物語を想像する余地はない。
エンパシーは関係ない。ただ、ひたすら共感だけを求めていく。それを得られる場所だけが居場所だと定義している。

他者性を排除して、自分が心地よいと感じるものだけを集めた物語の中で生きてく末路、のようにも感じる。本当はこんな風にはなりたくない。
だけど、だけど、わかる! と共感してしまう箇所があるのだ。随所に。
だから痛い。もうやめてーの連続。そして物語の行きつく最後が、もう、つらい。

人間の本質を突いているのだ。朝井リョウ! やっぱりすごい!

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2026年06月20日

匿名

ネタバレ 購入済み

刺さる側と分かっていながらも

かなり最悪な読後感だった。
でも、かなりおもしろかった。

昔ドルオタもしていたし、今もライブに行きやすくなるために上京して、私物グッズ入りガチャに6万使って、推しの音楽や言葉を勝手に人生の救済にしている時点で、自分の中に“信徒性”があること自体は前から自覚していた。

ライブ後に「神」と何度言ったかわからないし、作品や言葉を拡大解釈して、勝手に巨大な感情を抱いてしまう感覚も覚えがある。

ただ一方で、“推し”という言葉を安易に使いたくない気持ちもずっとあった。(現時点でドルオタではないから)
周りから見れば十分推し活をしている側なのに、「ただの消費や疑似恋愛とは違う」という意識でどこか斜に構えていたし、その“自分は少し違う側だと思いたがる感じ”も含めてかなり厄介だなと思った。

序盤では骨格診断やMBTIみたいな、令和の若者にとって身近な話題もかなり多く出てきて、「現代」を詰め込んだ空気感がすごかった。
身近に見る言葉や価値観だからこそ読みやすくておもしろい反面、「こういう要素を入れると若者は読み進めやすい」という作者の意図を少し感じて、若干冷めた部分もあった。

ただ、読み進めるほど単なる“令和あるある小説”ではなくなっていく。
人が何かを信仰し、共同体に救われ、依存し、選民意識を持ち、それでも孤独なまま生きていく話としてどんどん複雑化していって、自然と考えさせられた。

あと個人的にかなり考えさせられたのが、“楽しかった”だけでライブを終われなくなった感覚。

彼の音楽を聴くと確実に心を掴まれるし、好きか嫌いかで言えば比較するに値したいくらいに純粋に好き。
でもその一方で、自分の時間やお金や生活を削ってライブへ行っている感覚もずっとあって、手放しに「楽しかった!」だけでは終われない瞬間がここ数年かなり増えた。

ステージ側は「いつでもここにいるから」と言ってくれる。
でも、実際に消費されているのはこちら側でもある、という感覚もどこかにあった。

その曖昧な違和感をかなり言語化されていて苦しかったし、同時に「自分はまだマシな方なのかもしれない」と安心したくなる感覚まで含めて、かなりこの作品の“信徒”そのものだった気もする。

「疑似恋愛」「プロデューサー」「アナリスト」「学級委員長」「信徒」みたいに、同じオタクでも依存や執着の向きが細かく分けて描かれていて、解像度が異様に高い。

オタクにとってのホラー小説だった笑

#怖い #ダーク

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2026年05月26日

ネタバレ 購入済み

「推し活」の光と闇を抉る物語

俳優への心酔やファンダムの熱狂を、個人の孤独を埋めるための「巨大な教会(メガチャーチ)」に見立て、その救いと危うさを鮮烈に暴き出します。
「視野を広げすぎると不安になるが、狭めすぎると狂う」というジレンマに、現代を生きる誰もが戦慄するはず。信じることでしか自分を保てない人間の脆さを残酷なほど美しく描いた、2026年を象徴する衝撃作です。

#深い #アガる #共感する

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2026年04月24日

ネタバレ 購入済み

色々な意味で刺さった

INFP気質があり、学生で、現在進行形でオタク仲間とオタ活に励んでいる自分には深く深く刺さりました。途中の描写は少し、いやかなりダメージを負いながら読みました。でも、その痛みも含めておもしろかった。
印象に残っているのは、久保田さんと道哉がカフェで会話しているシーン。道哉の台詞がつらつらと続く中で、「つまり何が言いたいの?」と思いながら読んでいたら、まさに同じようなことを久保田さんが漏らしていてびっくり。この時の道哉のような台詞って意図的に書けるものなんだ、と唸りました。朝井リョウさんの文章力に脱帽です。

#深い #タメになる #共感する

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2026年03月05日

ネタバレ 購入済み

推し文化の切り取り

推しにまつわる様々な人たちの話がつながっていく物語。正直怖い。のめり込みは気づくとそこにあるもの。そういう怖さを感じながらのめり込んで読んでしまった。

#ドキドキハラハラ #怖い #ドロドロ

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2026年01月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

孤独感と人生への虚無に生きていれば、誰だって魅力的な「コミュニティ」と「ストーリー」に魅入られるのかもしれない

久保田慶彦は昔の同僚との仕事を通じて人間関係を広げ、若者との交流を娘(あるいは家族)と和解する代償行為にして暴走する
武藤澄香はアイドルと自分の生きづらい気質を重ねて傾倒し、自分の未来・信用・お金を失いながらSNSで熱狂的なファンとして活動する
隅川絢子は信仰対象を失い空っぽになった世界を疑い否定する仲間と共に、スピリチュアルと陰謀論の世界に取り込まれる

3人とも内向的で受身で自身や周りの狂気に当てられて破滅的な方向へ行ってしまう
私に"推し"はいないので本書のリアリティは推し量れないが、これが現実に起こっているとしたら寂しい話だと思う
「そっちは危ないよ」と言ってくれる人が一人でもいたらいいのにと何度も思った
そんな人がいないのが現代、ということなのかもしれない

本屋大賞作品であり、授賞式における朝井リョウ氏の丸眼鏡姿が友人に似ていたのを思い出して手に取った
軽い気持ちで読んだが風刺が効いて読み応えがあった
本書を手放しに「面白い」「つまらない」と評するのは、本書にも出てくる狂信者を嘲笑したり疎んだりする"一般人"になるようで気が引ける
ただ、信仰に殉じた登場人物達が人に与えられた"幸せ"でなく、自分で掴み取る"幸せ"をこれから見つけられることを祈るばかりである

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2026年06月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

視野狭窄
同調圧力
誘導されたドーパミン
多様性の重要さを謳いながらマイノリティは生きづらい。登場人物のそれぞれに自分を重ねて苦しくなった。推し活をテーマに現代社会をとても解像度高く表現されています。

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2026年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⭐️4.5

ファンダムについての小説。主人公の3人は誰もが、自分の物語を生きていて、視野を狭めてそれに没頭する姿がとても印象的だった。
誰1人、自分の物語を叶えていない(外から見たらその物語は空虚に見える)ものの、没頭して夢中になっている間はとても幸せそうで、物語の強力さとそれに没頭している間の幸福感、それが終わった後の虚しさが3人の主人公の視点から伝わってきた。
3人の主人公がいて、それぞれが対照的な状況だったのも面白かった。
1人は元々推し活で物語に没入していたものの、あるきっかけでそこから醒めた者。彼女はその後も別の物語に没入していくものの、どこか第三者的に語られていて、その後の物語にも没入し切っていないような、純粋にその物語を信じているからではなく、その物語を信じる人との繋がりを失いたくなくて物語を信じているフリをしているような、そういう他人に巻き込まれてその物語に入っているようなスタンスが表現からも表れていた。
1人は視野を広くという大学のコミュニティに嫌気がさし、馴染めない自分の救いを求めるように物語に没入していった者。いわゆる典型的な推し活だけど、1人目の人がこの人の将来の暗示のようになっていて、対照的だった。
最後の3人目はファンダムの物語を作る立場。しかし彼は2つの物語に没入していて(用件以外の雑談をできるような友達がいない中で周囲の若手社員や担当アイドルがその友達になったんだという狭窄と、留学のために頑張っている娘とそれを応援する父という物語)、1つ目の物語が自分の勘違いとわかった後に最後、2つ目の物語も自分の勘違いと分かった所で物語が結末を迎えた。物語を仕掛ける立場の人間が1番物語に没入して視野狭窄になっていた、というのは皮肉な結末だなと思った。

総じて何か、凄い深い話でも無いのに深く考えさせられるような、そんな物語を与えてくれたという意味で星4.5かな

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2026年06月20日

ネタバレ 購入済み

苦しくなった

自分の仕事に活かせるのではないかと読み進めましたが、どちらかというと「オタク」側に寄り添ってしまって苦しくなってしまいました。

孤独を自覚することの辛さ、それを何かで埋めて自分を使い切る、そうさせるための物語…
世の中はそれらで満たされているってことなんですかね。

#切ない #共感する

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2026年06月14日

ネタバレ 購入済み

一気に読める!!

朝井リョウさん、5冊目かな。相変わらず、サクサク読める展開。会話しながら、脳内思考が繰り広げられるところが、臨場感があって好き。私はユリちゃん側の熱量の低い人だから、推し活で楽しんでいる人が羨ましかったけど、やっぱりバランス良く推さないと人生詰むわな、、、。視野が狭くも広くもバランス大事。個人的には、アイドルプロデューサーが冷静すぎて、リアルに感じた。てか、最後の終わり方!!続き書いてーー!!バレるのかな。家族関係の再構築できるのかな。あー気になって寝られなくなっちゃった。これが、視野の狭くなる感覚かな。朝井リョウさんの自叙伝が個人的に一番面白いよ。

#深い #怖い #ドロドロ

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2026年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3.5。
面白くて一気読みはしたんだけど、
今のブーム、感情の動き、その裏側まで俺は分かってるぞと作者がぶつけてきている感じが時々あって、そのたびに小説の世界から離脱してしまった。

中々没入できないタイプの人間としては、
没入することで得られる楽しみはあるよなと、日々思っていた。だけどそういう人も客観視に目をつぶり、自分を騙してるだけのかもしれないと思うと、自分もあえて視野を狭めて熱中してみようと思った。何もしないは正解でもなく不正解でもない、正解にはならない。

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2026年06月20日

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