【感想・ネタバレ】森栄莞爾と十二人の父を知らない子供たちのレビュー

あらすじ

第25回本格ミステリ大賞[小説部門]受賞作家の意欲作!

投票していただけますか。
彼を父と認めるか、否かを――

カリスマ経営者として多くの人に愛されていた森栄莞爾。
だが彼は、精子提供で105人もの子供を作っていた。
そのリストが出回ったことで、自分が莞爾の子供だと知った健太は、他のきょうだいたちと出会い、ある提案を受ける。
「莞爾を父だと認める声明を出してほしい。全会一致の場合、1000万円を支払う」

育ててくれた人と、遺伝子が繋がっている人。
あなたは、どちらを《父親》と呼びますか?

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Posted by ブクログ

そんな議論ってある?と思いながら読み進め、
なんだかとてつもなく深い問題提起をされている、と次第に怖くなった。いい意味で。
自分が当事者ではないから、そこまで、と思うのだろうか。子どもも親も、深層的には救われない気がして辛い。
ラストの展開はまさかまさかで、おお?!と声が出た。目がつい先を走るから、すごく我慢しながら読み進める。これも読書の楽しさだよなぁ。
自分というアイデンティティ。遺伝するもの。育つ環境。…この本で読書会があったら、すごく楽しそう。

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2025年09月27日

Posted by ブクログ

題名から興味を持ち読み始め、面白くて一気読み。
父とは何か、深く考えたこともなかったし、この本を通して分かったつもりもない。結局人それぞれということだろう。
同じ血を受け継いだ彼らが過ごしてきたそれぞれの人生。そして、森栄莞爾とはどのような人物なのか。
終盤は、自分の予想とは違う展開が多くて驚かされてばかりだった。他とは違うミステリーであり、家族について考えさせられる一冊であった。

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2025年08月27日

Posted by ブクログ

率直な文章で、あっという間に読み終わった。当事者ではないから分からないが、血の持つ力はそんなに大きいのか、と半信半疑で、あまりストンと落ちなかった。子供をもてない親の気持ちなら、よく分かるので、希望もあるのかもしれないけれど…。
25年親子をして人生を生きてきてもなお、一部分のに通った性格や、言葉に出来ない繋がりが、親子と決めてしまうもの、それ程までに、血は強いのか、と改めて感じた。兄弟達の、何を言っても許される感覚の描写は、共感でき、ああ確かにな、と思った。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

父親とは何か?色々考えさせられた。
途中で、オチを予想したけども、思ったオチとは全く同じでも無く、よく練られてるなぁって思った。
逸木氏のミステリーは、どっちかと言うと地味目で、驚きのトリックとかがあるわけではないだけども、読み終わると、いい感じに余韻が残る。
私としては、結構、オススメの一冊。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったー!
けど、結局1000万はもらえないのかな…?鹿島くんにはあげてほしい。あの健太の結論にはまぁ納得だけど大金はそんな簡単に諦めつかないよね。
健太目線なので最初はごく普通の青年と思って読んでたけど、一番莞爾の遺伝子を色濃く継いでたのが彼だったんだろうな。めちゃくちゃ人格者の育ての父へのわだかまりとか、他の11人への情とか、所々共感できないなぁと思いながら読んだ。でも莞爾の同じ人種と思えば納得。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

十二人の怒れる男をモチーフにした作品はたくさんあるので、何となく議論して意見がひっくり返っていくのかな、というくらいの感覚出読み始めた。

元々興味のある分野で、精子提供だけではなく特別養子縁組とか、まだまだ歴史が浅いので、当事者が大人になり子どもや孫をもつ年齢になったら、出自を知る権利について、どう感じるのか知りたいと思っていた。

議論を重ねる中で変化していく主人公や兄弟たちの心情も、育ての親の健一郎の言葉もとても興味深かった。今後も正解なんてないだろう。

逸木さんのミステリは、ともすれば軽いテンポで進められる設定なのに、内面にうずまく言語化できない感情とか、深いところまで描いているなぁといつも感心。
装丁とか文章量がライトミステリ風なので、通勤片道で軽く読もうなんてうっかり始めると、濃厚で大変なことになり、大概その繰り返し。

今回もミステリとしてのオチは途中で見えるところもあったけれど、それを差し引いても一つのテーマとして重厚な作品だった。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

父と子の関係性、センシティブで極深い課題に挑戦した問題作 #森栄莞爾と十二人の父を知らない子供たち

■あらすじ
大手ホテルチェーンの創業者森栄莞爾。彼は生前に精子提供を行っており、百人以上の子どもを作っていた。ある日、転職活動中である三ツ橋健太のもとに、ラ・フォレの相談役の支倉から手紙が届く。森栄の子どもたち十二人が邸宅に集められ、とある提案を受けることになるのだが…

■きっと読みたくなるレビュー
私は何故この世に存在するんだろう?

物心をつくと誰もが一度は思い悩む疑問ですよね、でも結局は答えなんて見つからない。でも近くには両親や兄弟がいて、愛情に包まれながら楽しく過ごしていると、そんな湿っぽい疑問は忘れ去られていく。

アイデンティティってのは、自分自身と何かを比較することで明確になる。だからこそ人間関係、特に愛情と密接に関係あるんだと思う。本作はそんな自分自身の存在意義を描いた物語。

物語は森栄莞爾の子どもたちが邸宅に呼ばれるところから始まる。子どもたち十二人に対して大金が絡む依頼がなされ、全員でどうするか議論していくことになるのだ。

お話全体の進行役は子どものひとりである三ツ橋健太。他の子どもたちや育ての親との会話をすることで、父親と子の関係性について考慮を深めていくのです。

確かに、父と子どもの関係性って何なんでしょうか? 私の場合、母親からは愛情をたくさんもらったと感じてますが、父親からは正直微妙なんですよね。もちろん愛情は感じてますし、感謝もしています。ただ、実は本当の父親ではないとしたら、どんな感情が沸くのでしょうか。

健太の育ての親である三ツ橋健一郎は、めっちゃいいお父さんなんです。父としてはの役割をしっかり果たしていて頼りがいがある、子どもの対しても正直で優しい。でも、健太にとって本当の父親ではないのです。育ててくれたれ人と遺伝子が繋がっている人、どちらが父親なのだろうか… 読者として、健太と一緒にこの難しいテーマに直面することになるのです。

また議論シーンも本作の読みどころのひとつ。映画『十二人の怒れし男』を彷彿とさせるやりとりは、本作をエンタメとして昇華させてくれますね。

そして最大の謎、なぜ森栄莞爾はこんなにも子どもを作ったのか。子どもに恵まれない人たちへの社会貢献なのか、それとも… センシティブかつ困難な課題に挑戦した本作、逸木裕先生の新しい一面が見れた気がしました。

■ぜっさん推しポイント
私も父親になって、それなりの年月が経ちましたが、いまだに父親の感覚がないすね。いや、子どもを愛してますし、責任をもって育ててはいます。子どもたちは何よりも大切な宝物です。しかし父親としてのアイデンティティってのが、ピンと来てないんです。

でも不倫をしたり、犯罪を侵したり、当てもないのに仕事を辞めたりはしない。子どもたちに直接影響を及ぼしてしまうような、愛情を裏切ってしまう行為はしないようにしてます。それは子どもたちが中心であるべきだと思っているからなんですよね。

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2025年10月05日

Posted by ブクログ

育ての父と遺伝子の繋がった父。どちらが本当の父なのだろう。人はみな、自分の出自を知る権利がある。
育ての親と生みの親が違ったとしても、あなたの存在自体を否定しないこと。それは生まれてくる子どもを守ることに繋がるりこどものアイデンティティの形成として。
けれど、果たしてそれだけで本当に子どもは救われるのか。

父とは、親とは、一体なんなのか。
とても考えさせられました。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

精子提供で遺伝子的に同じ父親を持つ、年齢も境遇もバラバラな十二人の子供たち(高校生~30代くらい)が果たしてその人物を父親と認めるかの大金絡み議論バトル。
最後のオチは不完全燃焼感はあったけど、議論シーンは個人的には好きだった

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

「十二人の怒れる男」に始まるいわゆる「十二人」もの。三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人」などのオマージュに本書も連なります(本筋はまったく関係ありません)。
十二人もいるの!?と身構えましたが情報を提示する順番が丁寧に整理されているのですんなりと読むことができました。
もし自分が当事者だったらどんな反応をするだろう…と考えながら読むのが思考実験みたいで面白かったです。

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2025年08月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

さもありなんという結末。12人の怒れる男とカズオ・イシグロが脳裏よぎる。クローンでないのが、救いなのか?健太の思考にもついていけない、めんどくさい甘ったれ。「父とは何か」追求もいいけど、育ての親に感謝。は親に苦労してないから?

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2025年11月19日

Posted by ブクログ

育ての親か生みの親、精子提供した人を父親と呼べるのか、非の打ち所がない精子提供者が亡くなり親友である男から会社の信用問題に関わるので父親として認めて欲しいとの願いに家族について考えるのだが自分はどう感じるのだろうと考えながら読んでいたらその提供した理由が明らかになった時奈落の底に突き落とされた感覚を体験。
唐突の、でもよく考えると子どもを亡くした事やさまざまなところでヒントはあったのだが血縁の問題が頭から離れなかったので一気に突き落とされた感覚を味わった。
尊敬する父親を持つ健太目線で話は進むが健太の最終的な答えに賛同できなかった。

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

AID。父。本当の父。血のつながり。森栄莞爾。息子。二人。105人。精子提供。腎臓。ドナー。
父は幻想?血はそんなに濃い?
三ツ橋健太。父の健一郎。父?個人的には健太の思考は好きになれない。

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2025年10月14日

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ビジネスホテルチェーン〈ラ・フォレ〉の創業者である森栄莞爾が死去して4年後、彼が生前行っていたある行為の記録が流出した。彼はAID(非配偶者間人工授精)のドナーで、彼が提供した精子によって105人もの子供が生まれていたのだ。流出したのは彼らの個人データだった。森栄の右腕だった支倉により連絡のついた12人が呼び出され奇妙な依頼を受けるが……。
男はいかにして父親になるかという命題の変形か。ミステリー仕立てではあるものの、いささか苦しい。最後に明らかになる真相も突飛すぎてついていけなかった。
テーマは重いのに文体は軽く、キャラクターの厚みも全然物足りない。逸木さんの本領が発揮されていない印象だった。

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

12人が1人ずつ殺されていくのかと思ったが誰も死なないし、ひたすら森栄氏の謎を探るだけなのでこの話がどこに向かっているのか前半はわからなかった。

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2025年10月08日

Posted by ブクログ

最初はきわもの小説だと思っていたが、さにあらず。
「父親とは何か」を考えさせるどっしりした小説だった。血のつながりのある親と育ての親。どちらも子供を第一に考える「子どもファースト」の考えが根底にある。初めての作家だが、このままフォローしていこうと思う。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて購入。
物語のなかで主人公は、父親とは?という問いに動かされているように見えるが、結局のところ私は彼のアイデンティティ探しに付き合っている感覚でした。
まぁ自分のルーツたる親について考えることは、自分のアイデンティティの一部にもなるわけで当然ですが。

で、こちらの作品は本当に色々と考えさせられます。良い意味で突っ込みどころが多々ある感じ。
正直、誰の気持ちも理解できませんでした。
12人と、彼らに関わる人物たちについて、私なりの解釈がほぼ出来なかった。私の読みが浅いだけなのかもですが。終始、12人が座る円卓を上から俯瞰して見ている感じでした。
ただ、ある人物が「出産がすごく暴力」と語る場面があり、その際はガツンと上から岩が落ちてきた感覚を覚えました。そういう解釈をするのか…と。

12人のやり取りを見ているなかで、遺伝子レベルでの結び付きに起因させようとする思い込みと都合の良さには、恐怖を感じてしまいました。
人間はこの「思い込み」を無意識に行なっていて、ただそれは決して悪いことではなく、そうすることで心身の安定を維持できているわけで。改めて人間って面白いなと思った作品でした。

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2025年09月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大手ビジネスホテルチェーン<ラ・フォレ>の創業者である森栄莞爾は生前、精子提供によって105人もの子供を作っていた。そのリストが漏洩したことで、そのうちの12人が<自助活動>と称して集まることに。「森栄莞爾を父として認める」ことへの賛否をめぐり、12人の心理戦が始まる。
『六人の嘘つきな大学生』を彷彿とさせるようなミステリで、テンポのよい会話劇に引き込まれるようにして一気に読めた。
森栄莞爾の真の目的は、腎臓を患う<本当の子ども>に臓器提供をさせることであった、というラストは既視感のあるものという気がし、大きな驚きはなかった。
ほとんどがすでに大人になっている12人が、数週間のうちにこんなに何度も集まり、「血が繋がっている」ことでなんとなく親密になっていくものかというのも疑問。非配偶者間人工授精(AID)によって産まれた子どもたちは、どうしようもない苦しみを一生抱えて生きていくのだ、ということが根拠になっているようだが、12人それぞれの「苦しみ」についてそれほど具体的に言及があるわけでもないので、やや漠然とした印象に終わってしまった。
日本ではかつて複数の施設でAIDが行われ、それによって産まれた人は2,000人以上にも及ぶと考えられていること、その多くはきちんとした統計なども取られず、当事者たちは「出自を知る権利」を行使することもできないということ、は初めて知った事実だった。

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2025年10月04日

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