あらすじ
日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え、恋人の奈美までが彼のもとを去った。省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードするしかなかった。しかし、月からの放出物が地球に双極ジェットを形成することが判明、ピアピア技術部による“宇宙男プロジェクト”が開始される……。ネットと宇宙開発の未来を描く4篇収録の連作集
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Posted by ブクログ
ボーカロイドという非現実的ながら実在するガジェットにより「初音ミク的存在が現実にいる」という空想の世界観が、現実に近いように錯覚してしまう。ある意味、現実に絶望してしまう作品。
高次知性体との邂逅の周辺にちりばめられた恋愛エピソードは、有川浩「空の中」と似た感覚を味わった。自動化され増殖する工場、宇宙への風に乗る恋人達、特殊な環境下でのクモが生み出す予想外の構造物、潜水艦を使った鯨との追跡コミュニケーション研究、一つ一つにボーカロイド「小隅レイ」のイメージが生かされ、「あーやきゅあ」に行き着く世界は、出来すぎなくらいのユートピアである。
~再読~
「外見の同一性保持」は疑心暗鬼を生まないための機能と思ってたが、可塑性があると絶対悪用されますね。あっさり自壊する性質のおかげで「肉の壁」にも「デコイ兵士」にも出来ない。もし他の有名キャラだったらと考えても『宗教・政治的バックボーンを持たず、知性を感じさせ、暴力性が低く、基本能力が歌唱のみ』って辺りが絶妙。(仮にドラえもんが選択された場合、四次元ポケットが機能しないので少なからず偽物感が生まれる) そういう意味でもやはりマジ天使だった。
●「ハジメテノオト」の所にetmlタグが入ってる……。
Posted by ブクログ
SFの一つの到達点。「今の日本」でSFが書かれなければならなかった理由は、この作品が生み出されなければならなかったからなんじゃないかなとか言いたくなるレベル。まあ、アキバ的思考が全宇宙標準というのはある種の人々にとってはデストピア作品にしか捉えられない可能性はあるかw潜水艦まででおわっても、普通にSFなのだが、その先の展開は予想外だったw
Posted by ブクログ
地球文明史におけるVOCALOIDの意味を俯瞰してとらえ、その愛すべき存在価値を究極まで歌い上げた良作と申せましょう。
後世の方々には、初音ミクさんの誕生期にはこの小説みたいなトキメキが疾風怒濤していたから読んでみ?と伝えたい。
月にさ、彗星が墜落しちゃうアクシデントがあったわけ。そんで、大学院生である彼が係わってた月探査計画が頓挫しちゃってぐちゃぐちゃ愚痴ってたら彼女がいなくなっちゃって…というのがこの本の一番目のお話。
でもその悪い運命かと思われたアクシデントは新たなるチャンスを彼に与えてて、ボーカロイド小隅レイを好む人々がそれを後押しする状況は出来ていた!ってゆう。美しいね。
そのあとこのお話は、更なる、わたしたちの愛についての考察を促すことになるのだ。
あーホント、「好き」って大事。
好きこそ人類の上手なり。
Posted by ブクログ
読みだしはSFを絡ませたライトな恋愛モノか~と思いながら読んでたけど、徐々にSF臭くなっていき、「歌う潜水艦と~」で突如未知との遭遇!そこから1話2話を巻き込んで一気にSFな感じに!!
巻末の解説にもありましたが、とっても楽天的なSF(でもあ~やの設定がなかったらこうはならないだろうな…)。実際、初音ミクやらニコニコ動画やらは全然知らないんですが、ほんとにこんなことができれば夢があるな~と楽しく読めました。冷静に考えると「オタクの妄執ってエネルギーありすぎて怖ぇ~」と思わなくもないですが(笑)。
でも現実世界の上記ユーザーに理系バリバリの人達ってどれぐらいいるんだろうな~??あと、ネットユーザさん達ってこんなに仲良くできるのかしらとか。…AKBのファンたちが結託を組むようなものか??
追)作中曲を聞いてみた。…わ~なんかすごい世界が広がってるぅ~(笑)。初音ミク、テレビでちょっと流れてるやつは聞いたことあったけどちゃんと聞くの初めてだったわ…。テレビで聞いたのはもっと激しかったり早口だったりしたけど。ほんとに初音ミク出始めのヒット曲なんですねぇ。この曲ぐらいならまだ初心者に優しい(笑)
Posted by ブクログ
ボーカロイドを使って歌わせるだけでなく、弾道飛行にも連れて行く。
コンビニの入店音がボカロ曲のプロモに。
鯨とのコミュニケーション試験にボカロ音声が使われ、それは未知との遭遇へと繋がる。
ボカロや動画サイト、それを取り巻く人々を書いた連作短編。
面白かった。うちにもあーやが来たらいいのに。
Posted by ブクログ
ニコニコを観ている手前、あるいみ日常的なSFだった
前半のちょっとありそうな話と後半の王道なSF展開が、無理なく繋がっていて面白い
面白さのために知識や工数を使うということの先に、星間文明への仲間入りが待っているかは実感できないが、オープンハードウェアはありそうである
Posted by ブクログ
誰にでも進められる、というわけではないので☆4。
でも面白かったし、旬といえるうちに読むのが良さそう。
「どこかで聞いたことがある名前や出来事」は名前が変わっているけれど、JAMSTECや金髪のジャーナリストの人が実名なのに吹いてしまった。
ファミマ入店音シリーズとか聞いたこと無い人だとこの本を読んでからニコニコでチェックしてみたりするのかな。