あらすじ
夫にも誰にも内緒でひとりスリランカへ向かった私が、善き願いも悪しき願いも叶えてくれる神さまに祈るのは、ぜったい誰にも言えないあのこと――。神楽坂、ミャンマー、雑司ヶ谷、レパルスベイ、ガンジス川。どこへ行けば、願いは叶うのだろう。誰もが何かにすがりたい今の時代に、私のための神さまを求める8人を描く短篇集。
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Posted by ブクログ
それぞれの悩みや迷いを抱えて神さまに会いにいく、女性たちの八つの巡礼。
ミャンマー、香港、レパルスベイ、ガンジス川、モンゴル、パリ、京都——神様はありとあらゆる場所で私たちを待っている。
どの話も土地や神社仏閣まわりのディティールが細かくて、小説というよりは旅行記を読んでいるような気がしていた。
「にせ巡礼」「神さまショッピング」「絶望退治」が面白かった。
初詣に行っても長らく家内安全ぐらいしか願うことがなかったけれど、人の願いとはかくもさまざまで切実なんだと実感した。
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果てしない山々の光景がくっきりと見えすぎるくらい見えて、人間の手によって管理されているわけでもないのに、こんなにも完璧に調和していて、そのことに物理的に満たされたとき、なぜか、千津留もまた神さまのことを思った。神という存在が確実にあって、この広大な世界を作り管理し、私たち人間に、うつくしいという言葉と、それを受け取る知覚と感性を与え、それらが合致したときに、ネガティブなものではけっしてなく、幸福により近い何かがあふれ出るような設定をあらかじめ行った。そうでなくてはおかしいとすら、千津留は今思うのだ。こんな完璧が、自然にできあがるはずがない、と。
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どうか神様を信じたい、もう神様にしか縋れない、というときは、たしかにある。
ちなみに最近の私はもっぱらチケット当選祈願です。