あらすじ
サチは美しく利発な少女だった。だが彼女は誘拐され、何年も男に監禁された。教育を、青春を奪われ、子を産まされ……けれどようやく事件は発覚し、生還を果たす。しかしそれは新たな苦痛の始まりだった。旧弊な価値観のまま変化のない住人による嫌がらせや無理解に疲弊する彼女の元へこの骨が本物のサチだと白骨死体が送りつけられる――。重なる悪意の根幹に何があるのか。衝撃のミステリ。(解説・大矢博子)
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Posted by ブクログ
ひたすら辛く悲しい物語だった。犯罪そのものより、犯罪を生み出していることに気づかない社会に私達は生きていること。小さく狭いコミュニティで暮らしている私にとって、深く考えさせられる作品だった。
色々な方が書かれているように、最後のシーンだけが唯一の救いでした。
1つ分からない事は加代ママの心理です。自殺を図ったのは保身や息子を守りたいが故の行動だったのか、それともサチを解放させたかったのか。
他の意図があったのか。どうだったのかなぁ。。
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古い価値観が色濃く残る田舎の村を舞台にした社会派ミステリ。
11年間監禁され、子どもまで産まされた「美しいと評判だったサチ」。救出された彼女のもとに、「本物のサチの白骨」とされるものが届く。真相解明の物語かと思いきや、この作品の核心はそこではない。
ひたすら酷く、そして悲しい。
声にならない悲鳴、心の奥に押し込められた悲鳴が、読み進めるほどに伝わってくる。因習に縛られた閉鎖的な村、男尊女卑、長男至上主義。描かれる価値観には強い嫌悪と恐怖を覚えるが、「あり得ない話」と切り捨ててはいけないのだと思わされる。かつて、そしてもしかすると今も、似た構造はどこかに存在しているのかもしれない。
解説にもある通り、現代に生きる私たちもまた、何らかのコミュニティに属し、その中の価値観に知らず知らず影響されて生きている。その事実を突きつけられる一冊でもある。
信じがたい風習に胸が塞がるが、最後にわずかな光が差し込む終わり方だったことが、せめてもの救いだった。
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物語の設定から、実在の長期監禁事件を思い起こさせる部分があり、読み始めた時点で気分が重くなりました。
犯行の異常性は言うまでもありませんが、それと同じくらい印象に残ったのは舞台となる田舎町の空気。古い価値観に囚われを踏みにじっていく様子に強い嫌悪感を覚えました。不遇だからといって、他人の幸せを奪ってよいはずがない。その身勝手な様が、より心の“苦み”を強くさせられます。
一方で、エピローグで描かれる現在のサチの姿にわずかながら救いを感じました。少なくとも不幸ではない場所にたどり着けたことに安堵しつつ、現実には同じ結末を迎えられない被害者も多いのだろうと思うと、心の中に棘が引っかかったような痛みが残りました。
Posted by ブクログ
馬伏町を通して昭和の田舎の慣習の気持ち悪さで一杯になった。
読む前はあらすじの少女誘拐のそれ以降がテーマかなと思っていたけど、彼女が住んでいた町の男尊女卑というか、女は男の3歩下がってみたいな文化がテーマだとわかった。現代ではここまではそうそうないと思うけど、外の情報が全く入ってこず、変わらないことを望み続ける閉鎖的な地域だとどんなに理不尽な慣習でも残ることの絶望感を感じた。
外の情報は全く入っこないのに、中の情報は筒抜けで誰にも苦しさをわかってもらえない、理解してくれないことの心の悲鳴は誰にも聞こえない。
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あーー気持ち悪い。嫌な気持ち。嫌悪感。
もう読むのをやめたいぐらい、馬伏の空気と慣習と常識が嫌い。
閉塞感がずっと続く中で、それぞれの人間性もとてもキャラが立っていて面白い。
サチが幸せになってくれますように。。
Posted by ブクログ
物語は1983年から始まる。
平成へは近いものの、旧弊な家族観・地域観が色濃く残る閉鎖的な村が舞台となる。
まず、“昭和的家庭内飲み会”の描写に息苦しくなった。親族や父親の友人が集まり、女子は何歳でも給仕に回る。
子供ならお触りが愛情として許されると勘違いしている集団。それが当然とされた社会。
今なお、地方によってはこの空気が残っているかもしれません。
本作では、こうした価値観の延長線上に二つの事件が描かれる。
一つは、少女が誘拐され十一年にわたり監禁されてしまう事件。
そしてもう一つは、不可解な嫁の失踪。
一見まったく別の出来事のようでいて、その根底には共通して“昭和的男尊女卑”と“共同体を優先する意識”が横たわっている。
恐ろしいのは、事件そのものより、むしろそれを黙認する空気。被害者をも追い詰める言動。
加害者がどれほどのことをしても、
「そんな悪い人じゃない」
「事情があったのだ」と擁護まで現れる。
被害者よりも加害者に近いところで、村全体が彼らを包み込む。
これはまさに、当時の日本で全国的に共有されていた価値観の暗部であり、閉鎖的な地域社会が持つ恐怖そのもの。
世界に目を向ければ、いまだに同じ構造を引きずる社会は存在する。
本作は、特殊な村の異常性を描いているようでいて、完全に〈どこにでもあった社会〉の残滓でもある。そう思うと、読後しばらくは胸がざわつく。
Posted by ブクログ
依存症シリーズが面白すぎて、こちらも読んでみた。社会問題にフォーカスを置きつつ、結構スラスラと読めた、、!でも依存症シリーズに比べるとグロさ、胸糞さが足りないなあと感じてしまった、、、
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小学生の時に誘拐されたサチが11年ぶりに発見され監禁生活から解放された後からこの物語は始まる。ほの悲惨な状況も十分問題作だが、その後の世間から取り残されたような馬伏町でのあり方を描いて人々に問いかけているようだ。のさばる長男と媚びる女たち、家父長制度の醜さ歪みをこれでもかと描いている。
Posted by ブクログ
犯人が悪いのは当たり前に犯人が生まれる土壌がある、文化がある。
そんな中で誰も犯人に気づかない、被害者の悲鳴に気づかない…そう言う歪さを描いた物語でした。
暗いし重たいけれど、展開も早く想像していたよりも綺麗に終わったので読みやすいかな、と思います。
私はやはり昭和以前の価値観は受け入れられない点が多いなぁ、と改めて思っちゃいましたね…
Posted by ブクログ
面白かった。だけどもう一回読みたいとは思わない。ただただ主人公が可哀想であった。女性という性別で生まれただけなのにこんな目に遭うのは本当に可哀想。私の祖母の地域でも女は台所、男は飲み食いするだけという場面が多々あった。田舎であればあるほど、閉鎖的であればあるほど、人に執着し注目し噂をする。最悪である。
Posted by ブクログ
小学5年のサチは美しく利発な少女で、みんなの憧れの存在だった。
だが彼女は誘拐され、11年間も見知らぬ中年男に監禁された。
土蔵に閉じ込められ教育も青春も奪われ、挙げ句の果てに子どもを産まされた。
だが出産する頃になり男の母に気づかれ…数年後、事件は発覚し、生還を果たすのだが。
古い価値観のまま動いている住人の嫌がらせなのか、白骨死体が送りつけられて、これが本物のサチだと…。
昭和の時代の名残りなのか、この町が昭和以前のようで怖気すら感じる。
長男だけが優遇される考え方、風習や因習もまだ残っていることにも令和の現代では考えられない。
女は男より先に風呂に入らない、必ず残り湯であることや、集まりでは男たちが座敷で飲み食いし、女たちは台所で酒肴を用意する。
女は勉強より手伝いをして早いうちに嫁にいく。
いろんなことに苛立ちを感じながら、仕方ないと諦めているのにも腹が立つ話である。
それが普通で当たり前のような町で起きた犯罪も無知無学な男のせいなのが余計に許せなく思った。
サチの仲の良い友人が動きだすのが唯一の救いだったし、スナックのママも何気に観察眼があると感じた。
タイトルの悲鳴は、サチだけの声じゃなく犯罪を生み出した町に暮らす人々の声でもあるのではと思った。
同じ考えの者だけで集い、意に合わない者を排斥しているままでは何も変わらない。
それはとても怖いことだ。
Posted by ブクログ
この物語の何が嫌かって、まるっきりの創作じゃないところよね。
そういう時代や社会は確かにあったし当時はそれが普通だった。
それでも頁を引きちぎりたい衝動に駆られてしまう。
閉鎖空間では外界の常識は通用しない。
理屈として分かっていても、やっぱり「おかしい、ふざけんな、許せん」って思う。
でもまあ、こんなに不愉快なのに読まずにはいられない時点で作品としては高評価ですわ。
犯罪を犯すのは人間なのに、その人の性質だけが原因じゃないから本当に厄介だ。
Posted by ブクログ
古い風習である馬伏町。
その町で小学生の少女が行方不明にかなり、結果十一年もの間監禁された。
古い考えや習わしに抗えずそれぞれが悩みを持ちながらも町を出ることができない。
そんな町で発生した事件。
読み進めるのが辛かった。
唯一救わられたと思ったのは、いつも一緒だった友人がいたことだったかもしれません。
Posted by ブクログ
さまざま作品は知っていたけど、初読み作家さんでした。解説を読む限り、閉鎖社会の作品を多く書いているらしい。
今回も馬伏町という昭和の価値観で止まっている男尊女卑社会で起きた誘拐監禁事件。11才から22才まで監禁され最悪な人生を過ごすサチ。
やっとの思いで帰宅できた生家には自分の居場所などなく、母親にも腫れ物扱いされる。
みんな、うらやましがられる自分でいたい。
"かわいそう"になんか落ちとうない。
狭いコミュニティの世界で除け者にならないよう、正しいことを考えるのをやめた人たち。
無知無学、共感能力の低さ、想像力の乏しさ…
↓
昭和の昔話や田舎町の話ではなく、身近な現代社会の話でないだろうか?
自分も視野が狭くならないようにしたい。
Posted by ブクログ
小学生で誘拐・監禁されたサチの話。
かと思って読んでいると、後半は、ひどく時代錯誤な男尊女卑の習慣と、ひどすぎる長男教が引き継がれた集落の話で、二つの事件の2つの話になってしまって、感想もぼんやりした感じに。
自分の子ども時代と同じような時代のはずなのだけれど、
この集落、昭和の初期のような雰囲気なのよね。ここまで露骨に時代遅れな集落あるのかなぁ。なかなか現実味がなくて話に入りこめなかったかも。
Posted by ブクログ
11歳で誘拐・監禁されたサチ。
22歳でようやく生還したサチのもとに、本物のサチだという白骨が送られてくる。
生還したサチは本物なのか?白骨を送ったのは誰なのか、なぜなのか?をめぐるミステリー。
11歳から11年も外界と遮断されて自由も教育も尊厳も奪われ、やっと戻れても家族は世間体を気にし、地域の住人から傷物として扱われる。
何年たっても変わらず古い価値観が残り続ける馬伏に傷つけられ、言葉として発せられることのないサチの悲鳴が痛い。
「こちらが本物のサチ」と書かれた白骨死体に添えられた手紙に、「まだ私から奪うものがあるのか」と絶望する心理描写は秀逸。
価値観が変わっていることにも気付かない人たち。
尊厳を奪う環境に不満を抱いている自分も、誰かの尊厳を奪っている。
作品が「馬伏」というわかりやすい舞台なだけで、現実にどこでも起こっていることだと思った。
Posted by ブクログ
諦められないけれど、順応していくしかない田舎町、根強く残る男が上、長男が敬われ、女は男のために動く。長男以外は何も与えられない。腐っていく感情。
サチが救い出されても、周りの反応は冷たい。
言いたいことがあっても飲み込んでいる。
とうに、限界はきているのに。
全身で叫んでいるというのに、誰も気がつかない。わかろうとしない、寄り添わない。
無知無学、大人たちの対応、感情をぶつける場所、社会、閉鎖的コミュニティ、無関心…。
狭い世界で生きていくしかなかった人々。
届かない悲鳴。
ラスト、誰も知らない東京に行けたのは救い。
Posted by ブクログ
※
痛ましい事件と悍ましい因習。
身勝手な大人や他人に尊厳を踏み躙られた
無力な子どもの物語。
櫛木理宇さんの話は色んな意味で残酷な
部分が多いので、目を覆いたくなる事が
多々あるけれど、絶望だけで終わらなかった
点がせめてもの救いだった。
Posted by ブクログ
誰もおかしいと思わない慣習が今も根強く残っている。
そこに住んでいる者は当たり前だから。
その街を出たいと思うのがおかしいことではない。
時が流れ彼女が新しい世界に出れたのは良かった。
Posted by ブクログ
もう40年以上前、当時小学5年生の女の子が
目撃情報からわずか3分の間に消息が
わからなくなり未だに解決していない事件が
広島にはある。
方言やら閉鎖的な民度やらがなんだか身近に
感じられて胸糞悪さが飛び抜けていました。
ただ、
櫛木作品ならもっとえげつなく描けたのでは?
もっと!もっと!!!もっと来い!って
なりました。
サチに興味をなくしたアイツが、エリカをも
毒牙にかけ、悲劇が繰り返されるとか
加代ママのような救いの手はサチには
届かないとか。容赦ない胸糞悪さを求めていたので
コッコの存在に救われる思いはあったけど
結果ハッピーエンドなのは少しがっかり
(と言っていいのか分からないけど)
Posted by ブクログ
11歳の時に拉致され何年も監禁された少女。理不尽過ぎるおぞましい犯罪に辟易しながらも少女同様、光が見える事を願う気持ちになる。他、様々な背景のある深いストーリー。この地方での変わらぬ因習や同調圧力、男尊女卑、無知無学、差別。一気読みしました。
Posted by ブクログ
1995年。東京で働く男のもとに、一時期住んでいた田舎の友人から電話が入る。サチが、自殺未遂をした。サチの家の前に「この骨が本物のサチだ」というメモ入りの段ボール箱が置かれたことが引き金になったのか? サチは小学五年生、11歳の時に誘拐され12年間監禁されていた同級生。時は1983年に戻り、小学五年生、男三人、女二人の仲良しグループ、各視点で、サチが誘拐されるまで、誘拐後の変質者による監禁生活、23歳になって家に戻ってきてから、の話がそれぞれ語られる。もう一つ、サチより年長で、美人で、高校卒業後すぐに結婚した女が、離婚するために夜の仕事を始めるという話も。サチの家の前に置かれた骨は、その女のものだった。
小学生で誘拐監禁、男の子供を産まされるのも、かなりエグかったが、この小説で書かれている最大の悪は、その田舎の村の古い因習。祭りなどの集まりで、男が座敷で飲み食いし、女は台所でおさんどんというのは、よく描かれる田舎の姿で、いまだにそれが当たり前とされているところがあり、それに対する愚痴、相談はネットなどでも見られるが、この小説の村は、もう少しおかしい。男の宴会の場も、長男、次男という、家を引っ張っていく家長グループと、三男以下の、役に立たない男グループ、二つに区切られているのだ。この長男グループの、村の女は男の所有するもの的ふるまいが、胸糞悪く、また、役に立たないグループの酒浸り感、ヤカラ感も疎ましい。が、誰も声を上げない。「そういうもの」だと思っている。タイトルの「悲鳴」とは、虐げられることが当然とされてきたものたちの、心の叫びだった。
Posted by ブクログ
古い田舎の慣習や雰囲気、そこに暮らす人々の陰湿な負の面を丁寧に描写している。誘拐され搾取された女性の心理状況も幾分かソフトではあるができるだけ忠実に書こうとしている努力が見られる。気分が悪くなるのを通り越してむしろ過去の記録を読んでいるような客観的な気持ちで読める。田舎のしきたりや市井の声に抑圧・蹂躙・搾取されてきた人々の心情が説明されている。この時代の人間じゃなくてよかったと思うと同時に、恵まれた今という環境に感謝しつつも今もある理不尽に抗って前に進んでいけば、いつか真っ暗な闇から抜け出せるんだ、という未来への希望を乗せた物語。