あらすじ
紆余曲折の末にエリザベスとダーシーが結婚してから六年。二人が住むペンバリー館では平和な日々が続いていた。だが嵐の夜、一台の馬車が森から屋敷へ向けて暴走してきた。馬車に乗っていたエリザベスの妹リディアは、半狂乱で助けを求める。家人が森へ駆けつけるとそこには無惨な死体と、そのかたわらで放心状態のリディアの夫ウィッカムが……殺人容疑で逮捕されるウィッカム。そして、事件は一族の人々を巻き込んで法廷へ! ミステリの巨匠がジェーン・オースティンの古典に挑む話題作!
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
P・D・ジェイムズって勿論名前は知っているけど、読んだことあったっけな。
ないような気がする。。
『高慢と偏見』の舞台、登場人物をそのままに、あれから6年後に起きた殺人事件を描くパスティーシュ。
直近で原典を読んでいて良かった。
最初にちゃんと原典の振り返りをしてくれてはいるけど、読んでいるのといないのとで感じ方がだいぶ変わるのではと思った。
振り返りでは、あー、確かに筋だけ言うとそんな感じだけど、この文字面だけではない夢中にさせるドラマがあったんだよなーと、逆に原典の凄さを思い起こさせられた。
6年後の本作では、ペンバリー(主役カップルのエリザベスとダーシーの住む館)での恒例の舞踏会前日にダニー大尉が殺される事件が発生。
現場には酔い潰れ、「ぼくは彼を殺してしまった!ぼくが殺したんだ!」と泣き叫ぶ血にまみれたウィッカム。
ウィッカムが容疑者として拘留されてしまうのは当然の成り行き。。。
そう、『高慢と偏見』を読んでいる方ならお馴染みあのウィッカムに焦点が当たる物語。
全体を通して考えると著者はここに決着を着けたかったのかなと思える。
舞台こそ同じだけれど、「殺人」という味付けを施すことによってキャッチーさを上げることを狙っているのかなと思いきや、いやいやむしろ時代背景の堅苦しさばかりが強調されて、「真犯人は誰?」とか「捜査陣の苦悩」といったエンターテイメント性は薄い。
ベネットもベネット夫人もコリンズさんも殆ど出てこず、ユーモア性不足は否めないし、エリザベスがその地位を得てしまったことにより、以前の大きなものにもたじろがない清々しさの輝きが鈍くなっている点も、これは別物感を感じざるを得ない。
が、終盤いろいろ回収してくるところのミステリ作家らしさとか、身内に対するひいきとそれはそれこれはこれの拒絶感のないまぜたるもの、見えていなかった想像以上のスキャンダラスな事情など、最終的には与えられた舞台を巧みに使ったえぐいドラマがあったと感じた。
とはいえ、やっぱりこれは原典読んでいないとキツい気がする。。。
せっかくなので『『高慢と偏見』殺人事件』も読んでおくか。こちらは22年後設定。