あらすじ
結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
こういう作品に出会うために読書をしてるのかもしれないと思わされた。
信仰と共に主人公の葛藤が丁寧に描かれていている。悲しすぎるが、光が見えるようなラストは涙が止まらない。
主人公永野と吉川の友情、ふじ子への愛情、母への愛情と葛藤、キリスト信仰...全ての描写に胸を打たれる。
Posted by ブクログ
なんとなく結末は知っていたものの、主人公にモデルがいて、実際の事故を元にしたお話だとは知りませんでした。
『氷点』シリーズを読んだ後だったので、信夫と、海難事故の際の牧師さんの姿が重なりました。
他者のために自己犠牲が出来るかと自分に問うと、無理だと即答してしまいます。
また、宗教心も全く持ち合わせていません。
だからこそ、自分とは異なる信夫を通して、「生き方」「信仰」について考えさせられました。
幸せの絶頂手前で、婚約者を失ったふじ子さんの、ラストの慟哭が涙を誘いました。
が、あのふじ子さんなら、ひとしきり泣いた後は、信夫を誇りに思い、変わらず清廉に生きていくのではないだろうかとも思います。
Posted by ブクログ
道徳的な、読むと自分も立派な人間になれる気がするようなお話。また読みたい!
信夫という1人の人間の幼少期から、大人になっていく中で色々な価値観が変わっていくのを一緒に感じることができた。その中で出る悩みに共感したり、不思議に思ったりと楽しかった。
祖母と父の最期を見てあんなに急死を恐れていた信夫が、一瞬で自分が犠牲になってでも周りを助ける道を選んだんだなあと思うと…
あんなに想っていたふじ子とせっかく一緒になれるところだったのに。幸せになってほしかったけど、信夫に迷いはなかったんだと思った。
聖書を読みたくなりました。
Posted by ブクログ
人間には邪な気持ちや、邪悪な心が潜んでいると思っている私にとって、伸夫の清廉潔白さは受け入れがたい。
でも、物語としては読んでよかった。ふじ子が事故現場に向かうところはウルッときた。
Posted by ブクログ
自分の命を隣人のために犠牲にすることは常に善と言えるだろうか。と思いつつ、このラストの善悪を議論するのはナンセンスだろうな。信夫にとって善であれば、世がなんと言おうと善。多分、信仰や神に仕えることって他人の評価に左右されるものではないから。
吉川とか中村春雨とか、否定もせず肯定もせず自分の芯を保てる人ってカッコいい。そんな人たちに信夫は憧れたんだろうね。キリスト教徒ではないけれど私も素敵だなって思う。人は1人で生きているわけではないから、いろんな人の考えに触れて思考が深まって芯が固まっていくんだと思う。
それにしても深く考えたいことが山ほどある本だなぁ。消化するまでに時間がかかりそうだ。
Posted by ブクログ
私はキリスト教、いや、宗教には全く興味はないのだけど、この一冊を読み切った。
最初は時代設定や宗教がテーマということもあり、なかなかついていくのが大変だったが、信夫の真面目すぎる人間性や吉川との友情など、世界観に引き込まれていった。
生い立ちからあれだけ毛嫌いしていたキリスト教が、大人になったあとは自分の支えとなり、さらにはその教えの影響もあり死んでしまうとは。
ふじ子に対する愛の深さ、また、ふじ子から信夫への愛の深さにも感動を覚える。
泣いたりはしなかったが、とても悲しい素晴らしい話だった。