あらすじ
結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
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Posted by ブクログ
素直に人の言葉に耳を傾けて、ものごとの表面だけではなく内面を理解しようとする信夫
とことん真面目で、人の弱い部分に寄り添う深い愛情を持つ吉川
豪快かつ自由、それでいて柔軟で優しい隆士
彼らに気付かされることがたくさんあった
信夫はやっぱり貞行と菊の子だな、と思った
素敵な夫婦だった
幼少の待子、可愛い
信夫が最期に頷きかけた三堀はこの先どう生きていくのだろう
結末が切なくて涙が出た
▪️印象に残った言葉
「『おかあさま』
信夫は、その喜びをいいたいような気がして母を呼んだ。だが、ひとことおかあさまと呼んだだけで、何もいわなくてもいいような、そのままそっくり自分の気持ちが母に流れていっているような、そんな気持ちがした。」
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「いいえね、たった一年二ヶ月でも、何だかわたしの過ごしてきた十何年の楽しかったことを全部集めても、この楽しさにはくらべられないと思ったの」
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「とうの昔に、こんな死を、吉川は知っていたような気がした。激しい衝撃と共に、心のどこかに、揺らがないひとところがあった。全身をゆさぶられるような衝撃のはずなのに、心のひとところだけは、きわめて静かだった。それは、信夫を知っている吉川の友情であったかもしれない。」
Posted by ブクログ
裏表紙に「自らの命を犠牲に」という言葉があったので結末の想像は出来ましたが、それでも泣いてしまいました。信夫の幼少期からの心の動き、悩み、成長や信夫の家族・友人達との交流が丁寧に描かれています。温かなその描写を読んだ後、残りの50ページほどで予想している結末が来るのだと思うと辛くて一旦読むのを止めてしまいました。心を打たれる作品です。
Posted by ブクログ
あらすじからするに、暴走列車と格闘するようなパニック小説の類かと思っていましたが、タイトルにも出ている塩狩峠での列車のシーンは物語の最終盤にサッと出てくるだけで、基本的には信夫の生涯について、誠の愛と信心の話でした。
その犠牲の死という最終的な結末に至るまで、この永野信夫という大人物がどのように生きてきたのか、胸に深く沁みる物語でした。
Posted by ブクログ
(傑作)50年以上前の発行。以前から読みたかったが、新しい本を追うのに夢中で後回しになっていた。ご縁があって出先の図書室で発見。集中して一気に読んだ。言葉の力を信じる。良い言葉は人を強く支え、幸せにすると思う。自分もそういう言葉を見つけようと思う。ふじ子さんが不憫でならないが、信夫はこれ以上ない尊い死であった。
Posted by ブクログ
最後の最後で、ふじ子は果たして救われたのだろうか。生まれつき足が悪く、肺を患い、回復してからいよいよ恋人と結納だというタイミングでその相手を失い。この後、ふじ子はどうなったのだろう。時代背景とかを考えるとこれ以降の結婚は難しいのかな。今の時代だったら、結婚だけが幸せじゃないって考えもあるけど、当時はそうもいかないだろうし。キリストへの信仰が心の支えにはなるだろうけど、それがどこまで大きな力となってくれるのかな。不憫でならない。吉川と信夫は良い関係性の友達になれて良かった。小学校時代の、唯一、夜間に学校に集まろうという約束を守ったもの同士。それがきっかけで仲良くなって、あろうことか義理の兄弟にもなって。信夫は父親に促されたから学校に行ったとあるが、『僧侶になろう』という小学生の頃に交わした約束を10年程引きずった信夫も義理堅い人であって、この2人はなるべくしてなった友人なのだろう。
和倉は、イメージはとても豪快で義理堅い感じの人。信夫の嫁にと、娘を提案したが、信夫に想い人がいる事を知ると心から応援してくれて、後腐れないとても素敵な人だった。
Posted by ブクログ
主人公である信夫の生涯を追いながら、この作品は描かれている。幼い頃から信夫やその周りで起こった出来事、信夫が経験した事が全てあのラストに帰結しているように感じられ、読後の胸を打つような感覚はなかなか消えなかった。それほどの結末だったと思う。結末の部分は本編中では僅かなページ数である。しかし、その僅かなページ数に自分が読みながら追ってきた信夫の人生の積み重ねが果たされたということに圧倒されてしまったのだ。
私自身はこの小説を読んで、これほどまでに人を変える信仰とは何なのかという疑問が生まれ、信仰そのものの意味やあり方が問われていたのかと感じたが、あとがきや解説にあるように、著者自身は「犠牲」をテーマとしてこの作品を描かれたそうである。まさしく信夫のラストは自身の命すらも顧みない「犠牲」そのものである。ここに至るまで、そして覚悟ある行動に身を移した信夫の心の純粋さの美しさが私には印象深かった。
ただ私には、信夫をしてそこまでさせた「信仰」というものは一体何なのか、ということが引っかかっている。
Posted by ブクログ
読んでよかったとけど難しかった!キリスト教の教えの文章がちょくちょく入ってくるけど、よく分かんなくてスルーした
私がキリスト教を信仰していたとしても、自分の目前の幸せよりも、多くの人を救うことを優先できるとは思わない!
前半 信夫を置いていくくらい信仰の深い母親理解できなくて苦しかった
やっぱりまだ宗教よくわかんない
Posted by ブクログ
明治時代、東京本郷生まれ、士族の家系に生まれた永野信夫の一生。おばあさんに厳格に育てられた信夫の友情や恋愛の話から、最後の事故まで。実際に起きた事故、実在した人物をもとに創作された小説。
(ここからはネタバレになります。)ネタバレというか、何がネタバレなのかすらよく分からないけど、本の後ろに「結納のために札幌に向かった鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を通して、人間という不確かな存在の真の意味を問うた不朽の名作」。と書いてあるから、要するに信夫が事故で死ぬ、というのはもう分かっている前提で読むことになる。「高校生に読んでほしい50冊」という、新潮社がたぶん毎年出しているリストの中にこの本があって、この説明を読んで、読んでみたいと思ってついに読んだ。
まず「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし」という、ヨハネによる福音書のとても有名な一節が出てきて驚く。キリスト教の関係する小説だとは全く思っていなかったが、結局は、本当に敬虔なキリスト教徒の信仰に生きる物語、ということだった。宗教とか倫理の勉強には興味があるし、遠藤周作とか読むのが好きだったので、なんかキリスト教の小説と縁があるなあと思った。
で、おれはその「塩狩峠」の事故の話がいつ出てくるのかと思って、それをモチベーションにしてずっと読んでいったが、440ページくらいある小説の中で、その事故の場面に差し掛かるのが410ページ。つまりそこまでの400ページ近くは、全部最後の30ページのハイライトをよりハイライトにするための壮大な助走だった、ということを読んでて思った。ただその助走の分、「それはやめて!」と本当に思いながら事故の部分に差し掛かり、そしてものすごい悲しい感じになって終わった。全然違うけど、同じ悲劇という意味で、ロミオとジュリエットとかは、なんか展開が早すぎて最後もなんかそんなに感情も動かせないまま終わってしまう感じだが、これはその逆。途中はずーっと一青年の思春期的なうじうじした悩み、恋愛もそうだし、性欲もそうだし、死への恐怖とか興味、という青臭い部分が多い。でもそれをひたすら読んだ分、登場人物たちへの感情移入もしやすくなったところで、最後の最後での事故の悲惨さが大きくなった。
「あとがき」で全てを知ったけど、これは1909年の2月28日に実際に塩狩峠で起こった鉄道事故で殉職した長野政雄という人がモデルになっているということで、実際に北海道の鉄道界にキリスト教を広めた人らしい。塩狩峠には「塩狩峠記念館」もあるらしいから行ってみたい。ちなみに1973年にはこの小説は映画化もされたということなので、観たいような観てみたくないような…。
この小説の中で、唯一なんか心に響いた言葉は、「お先祖様を大事にするということは、お仏壇の前で手を合わせることだけではないと思うの。お先祖様がみて喜んでくださるような毎日を送ることができたら、それがほんとうのお先祖様への供養だと思うの」(p.322)っていう部分かな。「善く生きる」というのはお先祖様のためにも大事。あとは、あとがきの部分で、どれだけ実在の長野氏が立派だったのかという証言が出てくるが、「自己に対しては非常に厳格でしたが、他に対しては寛大でした。長野氏がかつて人を非難し批評したことを私は知りません」(p.451)という部分で、立派な人は人を評価しない、ということなのか。ある意味憧れる。
少なくともそこまでの強い信仰をなんで持てるのだろう、信仰に生きるとはどういうことなのか、ということを考えると、実は最初の祖母の教育のせいがあるのではないかとか、あるいは立派な父親の性格を引き継いでいるのかとか、色々考えながら味わった悲劇だった。(26/06)