【感想・ネタバレ】三浦綾子 電子全集 天北原野(下)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

粗野で下品、道徳観念なし、アクの強い登場人物が多い中で、主人公貴乃の真面目さ、純粋さ、やさしさがひときわ目立ちます。その貴乃とお似合いの孝介、結ばれるはずの2人は完治の悪巧みによって引き裂かれ、それぞれの運命が激変していきます。

泣く泣く完治の家に嫁入りした貴乃ですが、主婦として立派に勤め上げることが驚きでした。運命に翻弄されて終わらず、「置かれた場所で咲く」ことのできる女性です。内心では恨み、つらみ、未練も多々あるのですが、それを押し隠して生きていく。誰にでもできることではありません。

一方、孝介も樺太で実業家として成功。完治の妹あき子を嫁にもらうのですが、もしかして復讐のため?と思ってしまいました。お嫁にしていじめたりするのかなと。実際は何不自由のない暮らしをさせてあげるけれど、ある一点においては復讐ともいえるような気がしました。

貴乃・孝介ともにそれぞれ配偶者の浮気があり、あき子は不倫の子を産むし、貴乃の息子に至っては完治の愛人と関係を持ったりと乱れた展開に。肝心の貴乃・孝介はお互いを思いながらもずっと清い関係のまま。2人は掃き溜めに鶴のような存在です。

その後、第2次世界大戦へ。終戦間近にソ連が参戦、樺太は大きな被害を受けることに。終戦後のソ連の攻撃には本当に腹が立ちました。

混乱期に貴乃・孝介それぞれが家族を失い、悲しみ・後悔に暮れるものの、最後になってやっとひとすじの希望が見えてきました。ようやく!と思った矢先に、また不幸が。

貴乃のことだから、きっと毅然とした最期を迎えるのでしょう。でも、数々の艱難辛苦を耐え忍んできたのだから、戦後のこれからという時代を孝介と穏やかに笑顔で暮らしてほしかったと切実に思いました。

上下巻で読みごたえある大作です。三浦作品の中ではキリスト教色がなく、読みやすかったです。

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2017年10月14日

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