【感想・ネタバレ】三浦綾子 電子全集 細川ガラシャ夫人(上)のレビュー

あらすじ

女性が人間らしく生きるとは?ガラシャ夫人を通して語りかける著者初の歴史小説。

明智光秀の娘・玉子は、織田信長の命により、16歳で細川忠興に嫁いだ。戦乱の世の常の政略結婚で、多くの女性がそれを運命として疑うことをしなかった中、玉子は、女たちが道具のように扱われることに、耐えられぬ思いを抱いていた。人間としての自我にめざめていた玉子(後のガラシャ夫人)を通して、女性が人間らしく生きることの意味を問う著者初の歴史小説。

「三浦綾子電子全集」付録として、『信徒の友』に掲載された著者談話「細川ガラシャ夫人を書き終えて」、西教寺住職の説明を受ける著者写真を収録!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

初読は高校一年の時。細川ガラシャに関心があって読み始めました。
遺されているエピソードも丁寧に書かれていておもしろい。

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2014年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今まさに、NHK大河「麒麟がくる」(明智光秀)OA中。 戦国の世は刺激が多くて、歴史フリークの心をつかんでやまない。一国の主とはいえ、少しも安らぐことのない国盗り合戦。下剋上、猜疑心、裏切り、寝返り、人質…混乱の真っただ中に生きた明智光秀の娘、細川忠興の妻細川玉子の物語だ。
 「麒麟…」の中でも明智光秀はまっすぐで心温かい人として描かれているが、実際にそうだったんでしょうね。庶民からの信頼も厚い。土地を愛し、家族を愛し、それだけに自分が大切に築き上げた近江と丹波の土地を信長から召し上げられた悔しさは如何ばかりか。
 天下人になるような人物は、信長にしろ秀吉にしろ家康にしろ、役に立つ者は利用し、かわいがるが、いざその者が才知にたけていたりすると反逆を怖れて謂れもなく討伐する。そのやり方は情け容赦がない。気に入らないことがあるとすぐ殺す。それぐらい激しい性分でないと天下は取れないのかも。明智には無理。優しすぎて。だから細川にさえも味方についてもらえず、三日天下で終わってしまったのよね。
 明智光秀の反逆により、味土野の山奥に身を隠すことになった玉子。誰も訪ねてこない隠遁生活の中で、武家に生まれた女たちの不条理な生き様を憂い、そこで知った天主(イエスキリスト)へ自然と惹かれていくこといなる。やがて大坂に戻り、夫を通じてキリシタン大名高山右近の話などを聞くうちに意志が固まり、秀吉による弾圧化の中、ひっそりと洗礼を受ける。
 秀吉に可愛がられた細川忠興だったが、秀吉死後、天下分け目のうねりに巻き込まれ、妻である玉子は夫への貞節を守り、自害を自ら受け入れる。信仰は命より尊しと、玉子は最期までかっこよかった。辞世の句、

 散りぬべき時知りてこそ花も花なれ人も人なれ

は、家や名誉にしがみついて醜く争う男たちとは対照的な潔さを表している。
 長崎で大規模なキリシタン弾圧が行われ、多くの信者が過酷な拷問の末、非業の死を遂げたのはそれから何年も後の話だ。



コロナ禍、微熱で東京に戻れず、ぶらぶら過ごした実家の本棚から。


再読 2024.11.1

新たに知ったこと
・信長の重臣であった荒木村重がなぜ毛利家に寝返ったか。
村重の従弟 中川清秀が一儲けしようと劣勢で兵糧不足の敵方の陣に入り米を売りつけた、との噂が信長の耳に入り、それを案じた家臣たちが、毛利に逃げた方が賢明だと進言する。謀反の意思はなかったのに、信長方に戻るのは危険と判断し毛利に逃げた。最終的に中川清秀は信長に降り、村重だけが取り残された。毛利からの助けもなく、覚悟を決めた村重は妻で玉子の姉である倫を明智家に戻したが、他の一族家臣たちは残虐的に殺された。気の毒だけど‥黒田官兵衛を長期に渡り土牢に閉じ込めたやつ、と思えば同情心は起きない。
NHK「軍師官兵衛」で荒木村重役は村上哲司。

・明智光秀はなぜ謀反を起こしたか。
丹波八上城(兵庫県)の波多野秀治を光秀が包囲したとき、投降する秀治の身の安全を保証するため実母を人質として預けたところ、信長が秀治の助命を認めなかったために義母が処刑されてしまった。
武田勝頼を滅ぼした功績を褒めるどころか「おのれ一人が苦労してこの戦勝を導いたというのか」と罵り、なんの故もなく公の席で打擲した。また、これ見よがしに森兄弟に褒美を与え、坂本城まで取られてしまいそうな勢いに危機感を感じた。
織田配下において自分は秀吉より上だという自負があった。それなのに命じられたのは秀吉の助っ人としての毛利討伐。自分が先頭に立つべき長宗我部の四国征討へは織田の三男信孝が大将として出陣した。その上、平定後の出雲、石見をくれる代わりに大事な領地近江(坂本城)と丹波を召し上げられた。

・なぜキリシタンに好意的だった秀吉が、急に追放令を出したか。
九州討伐にキリシタン大名が活躍し、力を持ち始めたかのように見えた。高山右近はじめキリシタンの信仰心の前には自分の権力も全く意味を為さないことを知った。

いずれも諸説あり。

玉子の辞世の句
「散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ」

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2020年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

再読。ガラシャの波乱に満ちた生涯を通して、信仰に纏わる含蓄ある言葉が散りばめられた力作。とはいえ、上巻ではまだまだ人生は波立つ前。
この本で彼女の父である明智光秀の印象が一番変わった。敵側の意のままにはならないと死を選んだガラシャと主君の意のままにはさせないと反旗を翻した光秀、二人の生き方の根底に流れているものが本当によく似ている。決して浅はかな人物ではなかったように思う。その光秀が、母の痘痕を笑った娘を厳しくも温かく諭す親心が印象的。
夫の忠興が妻に贈った手づくりの百人一首にもホロリとさせられた。

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2018年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間は完全に正しくあることは不可能なのか。事にもよるが、正しく生きたくても、人の世は正しくは生きさせてはくれない。私たち人間は、毎日毎時、右を選ぶか、左を選ぶか選択を迫られて生きている。簡単に選べるならば良いが、必ずしもそうではないから苦しくて、辛いのだ。
全二巻

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2020年05月05日

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