あらすじ
新緑の山あいの温泉で、島村は駒子という美しい娘に出会う。駒子の肌は陶器のように白く、唇はなめらかで、三味線が上手だった。その年の暮れ、彼女に再び会うために、島村は汽車へと乗り込む。すると同じ車両にいた葉子という娘が気になり……。葉子と駒子の間には、あるつながりが隠されていたのだ。徹底した情景描写で日本的な「美」を結晶化させた世界的名作。ノーベル文学賞対象作品。(解説・竹西寛子、伊藤整、堀江敏幸)
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Posted by ブクログ
あまりにも純粋で美しく流麗な文章
衝撃的なあのラストシーンによって、今まで読んでいた物語のジャンルが大きく変化するわけだが、そもそも最初からこのラストシーンに向けて走っていたということを読者が思い知らされるというわけで、あまりにも巧みな造りに呆然とさせられる
Posted by ブクログ
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
という冒頭はあまりにも有名である。
導入の初めこそ、この指だけは女の触感で今も濡れていてなどと現代的には気持ち悪いことを言うものだと感じたが、
つまり娘の眼と火とが重なった瞬間、彼女の眼は夕闇の波間に浮ぶ、妖しく美しい夜光虫であった。p11
などなど、近くの座席で葉子を観察していただけの描写なのだが、とても魅力的な女性に思えてきた。
読んでいるうちに、気づけば世界に入っていた。
終わり方は知らなかったので意外だった。
女がふっと顔を上げると、島村の掌に押しあてていた瞼から鼻の両側へかけて赤らんでいるのが、濃い白粉を透して見えた。それはこの雪国の夜の冷たさを思わせながら、髪の色の黒が強いために、温かいものに感じられた。p37
駒子は待合室の窓のなかに立っていた。窓のガラス戸はしまっていた。それは汽車のなかから眺めると、うらぶれた寒村の果物屋の煤けたガラス箱に、不思議な果物がただ一つ置き忘れられたようであった。p83
雪のなかで糸をつくり、雪のなかで織り、雪の水に洗い、雪の上に晒す。績(う)み始めてから降り終るまで、すべては雪のなかであった。p149
島村はどきっとしたけども、とっさに危険も恐怖も感じなかった。非現実的な世界の幻影のようだった。硬直していた体が空中に放り落とされて柔軟になり、しかし、人形じみた無抵抗さ、命の通っていない自由さで、生も死も休止したような姿だった。p171