【感想・ネタバレ】会話の0.2秒を言語学するのレビュー

あらすじ

会話で相手と交替するまで平均0.2秒。この一瞬にどんな高度な駆け引きや奇跡が起きているのか――言語学の歴史を大づかみに振り返りつつ、「食べログ」レビューからお笑いに日銀総裁の会見、人気漫画まで俎上に載せ、日常の言語学をわかりやすく伝える、待望の書き下ろし。なぜうまく話せないのか。悩んでしまうあなたの必読書!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

非常に興味深い内容でしたが、1番心に残ったのは著者の終章の結びの言葉でした。
ヒトを中心的な対象とする人文学を学ぶことは、自分とはかなり違った他者を知ることで、自分が全く意識していなかった常識に気づけるということ。
ASDの人のコミュニケーションを取り上げて、定型発達の会話が普遍的で優れているわけではなく、多数派だから採用されているだけかもしれないと思い至る著者の感性。
新たな知識を得ることは必ずしも望ましい事ではないという文化を持つ人がいるということ。
言語について調べていく中で、自分を他者として捉え、改めて自分と出会う事ができるという視点は非常に興味深いものでした。
勿論会話の0.2秒の間に、ヒトは実に様々な処理を行っているという事実も面白かったが、それよりも言語オタクの著者が謙虚に楽しく追求していくなかで自分を見つめ直すという姿勢に非常に好感が持てたし、終章を読んだ事で、この本のタイトル以上に大切な事を教えてもらったような気がして自分にとっては非常に読んでよかったと思える本でした。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゆる言語学ラジオの水野さんの本。
彼自身が書いている通り、問い(テーマ)が大きいので本を読んでいてあっちこっちに行く感はあるが、私のような言語学素人にとっては、ひたすら一つの場所を掘り進めるより読みやすいと思った。
フィラーにターンを保持する機能がある点や、「ね」の「よ」に”the”と”a”に類似する機能がある点は、なるほどと思った。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何故会話するのに人は200ミリ秒しかかからないのかという問いから始まる本書。
読み始めてすぐに思った違和感、それは自分はそんなに早く会話できないんだよな…
そのまま読み進めて語用論、フィラー、ジェスチャー、文構造、意味理解…いろんな切り口から会話について解き明かしていく。その一つ一つがどれも魅力的な内容で楽しめた。しかし、最後の後書きで自分の違和感と水野氏の考察が重なる。
そもそも200ミリ秒というのは世界的な平均みたいなもので日本人はもっと早いということ。そして自分はかなり遅いということ。遅すぎて、3人以上の会話にはほぼ入ることができない。4.5人の飲み会など、2時間くらいで数回しか喋らないのが常。
流暢性バイアス、能力主義、吃音。カタカナ語の乱用。小池百合子…ジョーバイデン。
言語学を学ぶことは、自分と出会い直すということ。そこで初めてあることに気づいた。むしろ今まで何故気づかなかったのか…自分は吃音だということ。吃音については大学でも学んでいるし、けっこう知っているつもりだったが、自分がそうだと全く思っていなかった。
それが、本書を読んではじめて意識した。青天の霹靂…そして、普段いろんな人と接するがやはり話し始めるのに時間がかかる人ってけっこういる。特に子どもは多い。だからこそ、自分は待とうと思った。自分も実はけっこう苦労して、工夫して、いま吃音を克服したような状態にある。(ある面では全く克服してないが…)それと同時に、自分と同じような人の支えになれればなと思った。
言語の話から、自分の生き方を振り返り、今後の生き方の指標も示された。まさに自分と出会い直すということ。
こんな本に出会えてよかった。こんな本を世に出してくれてありがとうございます。

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2025年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私がときどき聞いている言語学を紹介しているYouTuberの本。
自分が当たり前に使っている言葉な中にある規則性があったり、使い分けていたり、そういうのがとにかく面白くて好き。
今回は特に「あのー」「えっと」の違いが面白かった。
ASD児や吃音児の言葉の使い方にも興味を持ったので、次はその本を読んでみたい。

・関連性理論では、ヒトの認知は関連性を最大化するようになっているという前提に立つ。そして発話もその一環として、少ない労力で、コストに見合う解釈を求めて推論し、割に合う結論が出た段階で解釈をストップする。裏を返せば、あり得るすべての解釈を列挙して、妥当なものをじっくり検討したりはしないのだ。それから、処理労力が大きすぎて、割に合わない解釈にはアクセスしないという帰結も導き出される。
・ヒトがコミュニケーションするうえで、相手にうまく意図が伝わらないのはしょうがない。考えていることを言語化し、相手に伝える中で、ノイズが思いのほか多く入るからだ。
・人間の思考過程の大部分がメタファーによって成り立っている。
・「ね」「よ」を使いこなすには、相手の立場に立って、その人がどういう情報を持っているのか推測する必要がある。そしてこの作業には、ASDの人にとっては不得手なものだ。実際、ASD児の発話には共感を示す終助詞「ね」が少ないというデータがある。
・極端な言い方をすれば、共感を通じたコミュニケーション自体が、多数派による暴力なのかもしれないのだ。

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 会話の0.2秒ってなんぞや?!
 嫁さんが面白そうと、紹介してくれた本。

 要は、
「会話で相手と交替するまで平均0.2秒。この一瞬にどんな高度な駆け引きや奇跡が起きているのか」
 ということを、数多の実例を引き、言語学やさまざまな研究を繙き解説してくれる。

 学術書じゃなく、著者も冒頭から、言語学の専門家じゃない、と言い放っていることもあり、話もあちらに飛びこちらに飛びと、なかなか結論にいたらないモドカシサはある。
 待てない人は、本書P205にある図15 「200ミリ秒のターンテイキング図式化修正版」を先に見て、このことを解説している本なのだな、と理解して読み始めてもよい。

 曰く、話手のQに対して、聞き手は以下の作業を瞬時に行う;
  1.文構造の解析
  2.意味の理解
  3.語用論的な推論
  ① ターンテイキングの準備
  ② 応答内容の整理
  ③ 応答内容を文にする
 そして、応答するわけだが、1~3が相手の発話の理解、それに対する①~③が応答の準備作業で、この1~3,①~③を200ミリ秒、つまり本書タイトルにある、0.2秒で人は行っているということを解説したのが本書。

 文法的な理解のみならず、2.でいう意味の理解は、ここでの例文「昨日、あのテレビ、見た?」と訊かれている「テレビ」は、テレビジョンという家電のことではなく、テレビ番組のことだ、という理解を行っているという話だ。
 そして、3.では見たか否かの「Yes/No」を求められているのか、そうではなく、見た上での感想まで求めているのかどうかを推論していると。それがスムーズな会話、ストレスない人間関係を生み出し、維持継続していく肝だとも説く。なるほど。

 ①~③の説明も面白く、①で、インタビューの回答の途中でやたら質問をかぶせられる英国のサッチャー首相のエピソードは実に面白い。インタビュワーとの間に、問う側、答える側、質疑応答のタイミングを図る作業が無意識のうちに発生しており、インタビュワーは、間髪入れず質問をしたいが故に、サッチャー首相が語尾を下げる喋り方をするものだから、そこで話が終わったと思って次の質問を被せてくるという研究結果は、なんとも面白い。
 ②で、どのようなフィラー(えーと、うーん、と言った間投詞)をいかに使いこなすかにも、ルールが存在するというのはメカラウロコだった。
 これ、英語の「well」にもあるのだろうか。英会話で話に詰まったら、「we…ll」か、「Let me see・・・・」で場繋ぎすればよいなんて教わったが、その両者にも、ネイティブには理解できる明確な差異が存在しているのかもしれない。

 そんな他言語における対話のルール、あるいは近畿、東北地方の話法の差にも言及する欲張りな内容になっている。
 ……が、ゆえに、とっちらかっているのがタマニキズではあった。が、面白い一冊だった。

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2025年09月25日

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