【感想・ネタバレ】老年についてのレビュー

あらすじ

古代ローマ第一の学者にして政治家・弁論家キケロー(前106―前43)が人としての生き方を語り、老年を謳い上げた対話篇。84歳になる古代ローマの政治家・文人大カトーが文武に秀でた二人の若者を屋敷に迎えて、自らの到達した境地から老いと死と生について語る、という構想のもとに進められる。悲観的に、ではなく積極的に老いを語った永遠の古典の新訳。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「人生の折り返し地点」という言葉も在るが、キケローはカトーにこう語らせる。「自然の道は一本で、しかも折り返しがない。そして人生の各部分にはそれぞれその時にふさわしい性質が与えられている」、と。
この作品では「老い」は十分に耐えうる価値あるものとして扱われる。私はカトーの語る考え方を気に入った。古代ローマには在ったかどうか知らないが、老いを退化に見立てる考え方を耳にしたことがある。人は、赤ん坊で生まれ、成長し、二十年ほどで人に成り、人生を全うするにせよしないにせよ、末期には心身共に衰えて目も耳も感じる力を失い、最低の状態に戻ってゆき死ぬ、その様が赤子に戻ってゆくようである、と言うのだ。寂しい発想ではあるが、これには言い当てているところが在るように感じる。人生の最高のときと聞いて、私には幼年も老年も早一番即座には想起されない。キケローの生きた当時も、老年を扱った作品にはその発想同様、老年を暗く捉えたものが多かったそうだ。人間の最大の関心ごとのひとつは死であり、老いには常に死の影が付きまとうのだから、老いを人が気がかりにするのは当然だ。青年の死と老年の死の対比でカトーは老年の死をある種の善いものと捉えた。その〈71〉の下りも大変気に入った。

論理展開も整っていて、読みやすかった。

訳者による解説も読み応え在った。アッティクスの死に様をおもう。

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2015年02月18日

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