【感想・ネタバレ】三四郎のレビュー

あらすじ

大学入学のために九州から上京した三四郎は東京の新しい空気のなかで世界と人生について一つ一つ経験を重ねながら成長してゆく。筋書だけをとり出せば『三四郎』は一見何の変哲もない教養小説と見えるが、卓越した小説の戦略家漱石は一筋縄では行かぬ小説的企みを実はたっぷりと仕掛けているのだ。(解説 菅野昭正・注 大野淳一)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

物語としては「三四郎のキャンパスライフ」というなんでもない話だけど、人物描写が今でも通用するのでおもしろい。今もこんな人いるよね!みたいな。冒頭、名古屋が出てくるのもちょっとうれしかったり。
漱石先生はときどき文明開化の総括的なことを作品の中で登場人物に語らせるのだけど、文明開化によってまるっと西洋の文明を受け容れてしまうことでがらっと風土が変わってしまった日本に、戸惑っている感じが伝わってくる。きっと漱石先生自身がそうだったのかなと思うのだけど、西洋文化を喜んで受け入れられる人がいる一方で、新しい動きに馴染めなずもやもやしている私みたいな人が、明治時代にもいたのだなぁ。
いま與那覇潤さんの「日本の起源」を少し読み始めてすごく感じたのは、日本は古代から、制度にしろ経済の仕組みにしろなんでも、すでに出来上がったものをポンともってきた借り物で作り上がった国なんだなーということ。民主主義しかり原発しかり。日本の中でこつこつと育てられてきた文化や技術ではなく、外からそのまま持ってきて取り入れちゃった感じ。漱石先生が作品の中で語るとまどいや警告は、こういう事に対する危機感にもつながる気がする。
それから、周りの人間を振り回す與次郎という友人が出てきてイラッとさせられるんだけど、三四郎も廣田先生もそんな彼をどこか面白がっているところがある。この時代は西洋の文化をまるっと受け容れたように、他人のこともまるっと受け容れる鷹揚な雰囲気があったのかな、とハッとさせられました。自分の個性ばかりを強調しいろんなものを受け容れるのを拒否してギスギスしている現代とは、ずいぶん違う感じがした。

(春陽堂大正4年(1915)発行の縮刷版(大正9年九版)で読んだので、引用のページもそのページになっています)

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2014年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上京したての三四郎は、
まだ自分のことばを持っていない。
気持ちをうまくことばにできない。
まわりの与次郎や広田先生みたいに、
気のきいたことひとついえない。
その、ことばにできない部分が新鮮で、
上京したての気持ちがフラッシュバック。
ヘタなことをいうより、
黙っている三四郎がよかった。
ことばはほとんどなくても、
美弥子と通じ合う瞬間があって、
その瞬間が、肖像画みたいに、
三四郎の中に残っている。

○ヘリオトロープの瓶。四丁目の夕暮。ストレイシープ。ストレイシープ。空には高い日が明かに懸る。

ことばにも、かたちにもならない、
淡い恋の気持ちに浸される、いい本だ。
与次郎くんの胡散臭さや、
広田先生の厚い人物像、
そんなに出てこないのに存在感のある美弥子。
三四郎のほかの登場人物も味わい深い。

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2018年11月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ。」という名文はこの本に出てくると知って嬉しかった。迷える子羊という言葉にとても考えさせるものがあった。次は「それから」を読みたい。

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2015年01月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

熊本から東京の大学へ来た三四郎の成長を描く。

自分が大学生だからか内容にすごく親しみを持てました。
文体も読みやすいです。

三四郎の田舎もんさはよくわからんが、根性無しなのはわかります。
でも名古屋の女に対しての対応は……まぁ普通じゃないかな。

美禰子への思いを最後につげたのは良いことだと思います。でも、すごいタイミング。告白(みたいなの)をした後に相手の婚約者が現れるんだもんなぁ~
あれはなかなか立ち直れないでしょう。

与次郎の軽いカンジも広田先生の飄々としたところも好きです。
里見さんは……よくわからない……

時代に差があるのに、物語がすんなり入ってきて、さすが夏目漱石だなぁと思いました。

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2013年10月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

三四郎の学生生活部分が面白い。教授、与次郎など人物描写にもユーモアがあり笑える。三四郎講義サボってるし。あと与次郎の「生きている頭を死んだ講義で封じ込めちゃ、助からない」は迷言。
後半、美禰子がメインになってくるところから重くなってきて切ない。で、美禰子のキャラがうまく掴めなかった。前半部分のノリで最後までいってほしかった。

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2013年03月08日

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